▲多くの人が「中古でもかなり高いんじゃないか?」と思っているポルシェ 911という車。でも、実際は意外とそうでもないのです……! ▲多くの人が「中古でもかなり高いんじゃないか?」と思っているポルシェ 911という車。でも、実際は意外とそうでもないのです……!

「意外と安い」と言っても信じてもらえない輸入車No.1?

筆者の場合は中古輸入車の専門記者をかれこれ20年以上もやっているため、そういったことはほとんどないが、世の多くの人はしばしば輸入車の価格を見誤る。

それも「高い方向」へと見誤る場合が多い。

例えばポルシェ 911だ。

知人が、道行くポルシェ 911を見てわたしに言う。

「ポルシェってやっぱり1000万円ぐらいはするんでしょ?」と。

確かに、新車のポルシェ 911は1000万円ぐらいだ。

や、正確に言うならいちばん安いやつでも1244万円である。それも車両本体だけで。

だが貴殿が今指さした911は最新世代のそれではなく、2世代ほど前のモデルだ。

もしもそれを今中古車として買うのであれば、もちろん一部のグレードは別だが、基本的には1000万円など絶対にしない。

「なら、いくらぐらいなの?」と知人は聞く。

で、わたしは答える。

「支払総額で考えておおむね280万円からである。意外と安いのである」

知人は呆れ顔でわたしに言う。

「……どうせそんな値段のやつって走行10万km以上のオンボロ事故車とか、そんな感じなんでしょ?」

そうではないのだ。

本当に、「まあまあいい感じのポルシェ 911」は総額280万円ぐらいから、つまり国産コンパクトSUVを新車で買うのと似たような予算から十分イケるのだ。

だが知人はまだ怪訝な顔というか、ぶっちゃけ不審げな顔で、わたしを見ている。
仕方ない。

嘘ではないことを、順を追って詳しくご説明しよう。

▲新車で買うとなるともちろんかなり高額となるポルシェ 911だが、ユーズドカーであれば実はかなり現実的なプライスだったりもする▲新車で買うとなるともちろんかなり高額となるポルシェ 911だが、ユーズドカーであれば実はかなり現実的なプライスだったりもする

狙い目は01年途中からの「後期型」

ここで言っているポルシェ 911とは、車好きからは「タイプ996」とか「キューキューロク」などと呼ばれている先々代の911だ。

1998年にデビューし、2004年途中まで製造販売されていた。

「GT2」などの特殊グレードではなく、グレード名に「カレラ」という3文字が付く一般的なグレードの新車時価格は、おおむね1000万円から1300万円。

「一般的なグレード」といっても、まごうことなき高級スポーツカーであったことは間違いない。

▲こちらが「キューキューロク」こと先々代ポルシェ 911(タイプ996)。写真は01年途中からの後期型カレラ4▲こちらが「キューキューロク」こと先々代ポルシェ 911(タイプ996)。写真は01年途中からの後期型カレラ4

そして今、そのカレラ系の相場がいくらぐらいなのかといえば、ざっくり言って「底値が総額180万円ぐらいで、最高値が総額500万円ぐらい」だ。

だがこの数字は、すべてのカレラ系をひっくるめた乱暴なものである。

より詳細に、つまり「筆者が考えるオススメ条件に合致する中古車」だけで相場を算出するなら、それは以下のとおりとなる。

●条件1:01年途中からの「後期型」である
●条件2:走行距離7万km未満である
●条件3:修復歴のない個体である

【上記3条件に合致する個体の相場】
総額約280万~約500万円


これが、前章にてわたしが知人に言った「支払総額で考えておおむね280万円からである。ポルシェ 911は意外と安いのである」という話の明細だ。

ではなぜ上記3つの条件が必要となるなのか、つまり「後期型」「走行7万km未満」「修復歴なし」がオススメとなるのか?

次章にてご説明しよう。

▲色味などは個体により様々だが(黒系が多い)、先々代ポルシェ 911のインテリアはおおむねこのような感じ▲色味などは個体により様々だが(黒系が多い)、先々代ポルシェ 911のインテリアはおおむねこのような感じ

「サービスキャンペーン」の対象年式を選びたい

タイプ996こと先々代のポルシェ 911は01年途中にマイナーチェンジを受けている。

具体的にはカレラ系のエンジン排気量が3.4Lから3.6Lになり、ヘッドライトの形状も大幅に変更された。

その他にもこまごま変わっているわけだが、メインはこの2点である。

これもあって筆者は「後期型がオススメ」としているわけだが、実はそれだけではない。

とある問題に関する「サービスキャンペーン」から考えても、後期型を選ぶべきなのだ。

長くなるので詳細は省くが、996型ポルシェ 911はエンジン内部の「インターミディエイトシャフト」に設計上の問題を抱えていた。

その問題ゆえにマニアは996という車を敬遠しがちなのだが、実はその問題点に対してポルシェジャパンは「サービスキャンペーン」を行っている。

つまり「該当する個体は全車エンジンの点検を行い、必要に応じてエンジンの修理または交換を行います」ということになっているのだ。

▲ポルシェジャパン公式サイトによれば「エンジンのインターミディエイトシャフトベアリングを保持する部品公差の最大値の組合せが複合的に作用し、インターミディエイトベアリングが破損し、エンジン異音、エンジン不調、警告灯の点灯、オイル漏れ、エンジンストールが発生するおそれがある」と。それに対して「全車、エンジンの点検を行い、必要に応じてエンジンの修理または交換を行う」となっている。対象年式は要確認▲ポルシェジャパン公式サイトによれば「エンジンのインターミディエイトシャフトベアリングを保持する部品公差の最大値の組合せが複合的に作用し、インターミディエイトベアリングが破損し、エンジン異音、エンジン不調、警告灯の点灯、オイル漏れ、エンジンストールが発生するおそれがある」と。それに対して「全車、エンジンの点検を行い、必要に応じてエンジンの修理または交換を行う」となっている。対象年式は要確認

これは正規輸入車でさえあれば、どこで買ったかは不問。

町の中古車屋さんで買った996型911であっても、それが正規輸入車であれば、ポルシェセンター(ポルシェ正規販売店)にてエンジンの修理または交換をしてもらえる。

ただしその対象となっているのが「後期型」なので、「買うなら後期型がいいんじゃないですか?」と言っているのである。

(※その911がサービスキャンペーンの対象個体かどうかについての完璧に正確な情報は、詳細な型式名をお手元に準備したうえで、最寄りのポルシェセンターに確認してください)

「ポルシェ 911に乗る人生」を送ってみないか?

で、お次の「走行7万km未満であること」という条件は、ぶっちゃけ「だいたい」である。

7.2万kmだからダメということでもない。

通常の車の場合、走行7万km前後というのは実はけっこうアレな時期でもある。

様々な消耗部品が一斉に交換タイミングを迎えがちな時期であるからだ。

ポルシェ 911でも基本的にはそうなのだが、なにせポルシェの場合は使われている部品の精度と強度がやたらと高いため、7万km前後であっても「まだまだぜんぜん大丈夫」であることも多い。

それゆえ、「まぁもっと走行少なめの物件を買うに越したことはないですが、7万km未満ぐらいならおおむねノープロブレムな場合が多いと思いますよ」ぐらいの条件であると思ってほしい。

▲ちなみに比較的手頃な総額で狙えるのはこちらのカレラまたはカレラ4というグレード▲ちなみに比較的手頃な総額で狙えるのはこちらのカレラまたはカレラ4というグレード
▲こちらはカレラ4Sというグレードで、ターボとほぼ同じワイドボディの採用により人気が高い。ただし人気ゆえに中古車相場は決して安くはなく、総額350万円~といったイメージ▲こちらはカレラ4Sというグレードで、ターボとほぼ同じワイドボディの採用により人気が高い。ただし人気ゆえに中古車相場は決して安くはなく、総額350万円~といったイメージ

続く「修復歴のない個体であること」というのも同様だ。修復歴車=悪と一概に言うことはできず、筆者も実際、修復歴ありのポルシェ 911をごくフツーに乗り回していた時期がある。

とはいえ、長く愛することが強く予想されるポルシェ 911ゆえ、将来何があるか正確には予想できない修復歴車は「まぁ避けた方が無難ではあるでしょう」とは言えるはずなのだ。

さて、以上の説明を聞いてどうお感じになっただろうか?

「や、自分はいらないな」という人に無理強いするつもりはない。

だが、もしも多少なりともご興味が湧いたのであれば、下記物件リンクをご参照のうえ、気になった1台を店頭で実際に見てみることをオススメしたい。

そこから、あなたの自動車人生が大きく変わってしまう可能性はきわめて高いかもしれないが。

text/伊達軍曹
photo/ポルシェジャパン

▼検索条件

ポルシェ 911(3代目 後期型)×走行距離7万㎞以下×修復歴なし