インディをはじめ、数々のレースで活躍するプロレーシングドライバー・ロジャー安川氏が、北米でしか販売されていない魅力的な車を日本のみなさんに紹介します。

バンパーが大きくなり、日本モデルよりもスポーティなルックスに

ホンダ フィット フロントスタイル|ロジャー安川の米国自動車浪漫 ホンダ フィット リアスタイル|ロジャー安川の米国自動車浪漫
↑北米モデルは安全基準を満たすために前後バンパーのデザインが日本モデルとは異なっています。全長が若干延びたことで、日本モデルよりもシャープ&スポーティなルックスに
ホンダF1撤退のニュースは、あまりにも急で世界中のモータースポーツ界に衝撃が走りました。しかし日本メーカーとして、ずっとモータースポーツを支えてきたレーシングスピリットは今後も変わらないはずです。この不況でも日本での2008年上半期の新車販売台数でNo.1を誇るフィットは、今後のホンダを担っていく重要なモデルです。
日本デビューは2001年ですが、実は北米で販売が始まったのは一昨年の2006年からです。アメリカでは経済状況の悪化が叫ばれる昨今、比較的低価格帯であるフィットのようなコンパクト/エコノミーカーが注目されています。さらに今では、一時よりもガソリン価格が下落したことで、燃費のいいハイブリッド車を凌ぐほどの人気です。

ホンダ フィット インパネ|ロジャー安川の米国自動車浪漫 ホンダ フィット シフトレバー|ロジャー安川の米国自動車浪漫
↑ハンドルの位置が違うだけでインテリアは日本モデルとほとんど同じ。大きく異なるのは、アメリカでは車好きのステータスとしてMT車を選ぶ人が増えているところです
フルモデルチェンジした2代目は、日本では2007年から販売が開始されていますが、北米モデルは1年遅れて2009年モデルとして2008年8月から販売がスタート。日本モデルと比べて、アメリカの高速道路交通安全局(NHTSA)の安全基準をクリアするために前後のバンパーが大きくなっています。このことから、アメリカではこのセグメントでは珍しく、衝突試験では5つ星の高い評価を受けています。
北米で販売されるグレードはベースモデル、スポーツ、そしてスポーツモデルにナビを搭載したタイプです。今回ご紹介するフィット SPORT with Navigationモデルには、16インチホイール、ルーフラインスポイラー、アンダーボディキットが標準装備され、日本のモデルよりも確実にスポーティに見えます。また、バンパーのデザインが異なるので全長は185mm長く、ガッチリとした印象です。

ホンダ フィット エンジン|ロジャー安川の米国自動車浪漫 ホンダ フィット 走り|ロジャー安川の米国自動車浪漫
↑1.5L i-VTECエンジンがすべてのグレードに標準装備。4000rpmを超えるとVTECサウンドでドライブを楽しませてくれます
実際に車に乗ってみると、足回りはしっかりしていて、前モデルよりもコーナリングでの安定感は高まっています。ブレーキペダルの利きも良くなっていて、全体的にスポーティ感が増しています。
エンジンには日本のRSモデルでも採用されている1.5Lのi-VTECエンジンがすべてのグレードに搭載され、ミッションはオプションで5MTか5ATとあり、スポーツグレードの5ATにはパドルシフトが装備されています。CVTはアメリカで人気が低いので用意されていませんが、また、日本では4WDのモデルもありますが、北米ではFF車のみの販売です。

アメリカでのコンパクトカー需要の開拓は、トヨタが2003年からアメリカで若年層をターゲットとしてスタートしたブランド・サイオンから始まりました。そのため、最初はフィットをもってくるタイミングがちょっと遅かったのでは…と感じました。しかし先ほど述べたように、この不況による需要が、2009年モデルにとっては絶妙のタイミングになるかもしれません。「アメリカが咳をすると、世界が風邪をひく」と言いますが、逆にいうと、このフィットがアメリカで爆発的に売れればホンダはF1に復帰できるのでは、とわずかな期待を抱いてしまいます。

主要諸元のグレード:FIT SPORT with/Navigation 駆動方式:FF トランスミッション:5MT 全長×全幅×全高:4105mmX1695mmX1524mm ホイールベース:2500mm 車両重量:1150kg 乗車定員:5名 エンジン種類:SOHC V型4気筒 i-VTEC 総排気量:1.5L 最高出力:117ps/6600rpm 最大トルク:14.7kg-m/4800rpm 10・15モード燃費(km/L):- ガソリン種類/容量:無鉛レギュラー/40L 車両本体価格:$18,110(約170万円)

(Tester/ロジャー安川 Photo/竹内英士)