ホンダ  Honda e ▲本来は大都市内で比較的近場までしか走らないことを想定しているEV「Honda e」で、東京から仙台まで向かってみたわけだが、仙台市内に到着するまでに何回急速充電を行う必要があったのか? ちなみに写真は、仙台からさらに足を延ばした宮城県石巻市でのひとコマ

急速充電中の「ヒマ問題」は食べて解決?

あまりにも走りが気持ちいい車であるため、メーカーが「これは都市型のコミューター。ご近所を気持ちよく走っていただくための車ですよ」と言っているにもかかわらず、東京から約400km離れた宮城県仙台市まで「Honda e アドバンス」で自走していくことになった。

が、一充電走行可能距離はWLTCモードで259kmのはずだが、ほぼ満充電のそれに乗り込んでみると、航続可能距離は「181km」と表示されている。そして都内から100km弱走った時点において、バッテリー残量は約50%という表示だったものの、EVに不慣れなゆえ心理的な不安がつのり、ついつい東北道佐野SAでさっそく1回目の急速充電をしてしまった――というのが前回のおおまかな内容。


で、急速充電をしている間の約30分間がヒマでヒマで仕方がない……ということにも気づいてしまった次第である。

▲い、いきなり佐野ラーメン?▲い、いきなり佐野ラーメン?

ということで東北道佐野SAにて途方に暮れている筆者だが、突っ立っていても仕方ないので、とりあえずはSA内にて名物の「佐野ラーメン」を食すことにする。朝食をとってからまだあまり時間は経過していないが、仕方ない。ヒマつぶしである。というかEVで長距離ドライブをしようとすると、充電のたびに食ってばかりで太りそうな予感もある。

それはさておき本来のHonda eは充電中、自慢の「ワイドビジョンインストルメントパネル」にて様々なコンテンツを楽しみ、時間を有効に使ってください――ということらしいのだが、個人的には、

・せっかくの充電中に電力を使うのがなんとなく嫌。
・車内でじっとしてるのは苦手。


ということで、筆者の場合は「食」に走ったのだ。とはいえ佐野ラーメンを食べ終わっても、急速充電完了まではまだ15分以上待たねばならない。うぐぐ、ヒマである。

で、うぐぐと唸りながらも急速充電は完了。残量54%の状態から約30分充電しての表示は「残量95%/航続可能距離191km」。うむ。これで後顧の憂いなく先を目指すことができる。さっそく出発することにしよう。

ワイドビジョンインストルメントパネル▲1回目の充電はビビって残量54%の段階で行ったため、約30分間の急速充電でも「95%」まで持っていくことができた

結局、約100km走るごとに1回の急速充電が必要

音もなく快調に高速道路を滑るHonda e……というのはウソで、実際は、エンジン音は当然聴こえないものの、ロードノイズと風切り音はそこそこのボリュームで耳に届く。

ただ、昔の車はさておき最近のガソリン車はエンジン音が非常に静かであるため、高速道路をほぼ定速で巡航する限りにおいては「えっと、今オレが運転してるのってEVだっけ? それとも今どきのガソリン車だっけ?」と一瞬わからなくなるぐらいだ。

だが、パーシャル状態だったアクセルペダルをグイと踏み込めば、ドライブモードが「ノーマル」であっても、Honda eの電気モーターはほどよく強力なパワーとトルクを即座に発生させる。

そしてモードを「SPORT」にしたうえでアクセルペダルを踏み込めば、その加速はほとんど宇宙空間を行くロケットだ。いや宇宙ロケットに乗ったことはないので実はよく知らないのだが、おそらくはこんな感じなのではないか。「音もなく速い」という点で。

ホンダ Honda e▲Honda eのドライブモードを「SPORT」にしたときの速さというかロケット感は強烈。ただしその分、バッテリーが減る早さも強烈だが

なんてことを試していたら、やっぱりバッテリー残量はスピーディに減少し、佐野SAから95kmほど走った那須IC通過時点で残量は約40%に。まだイケそうではあるが、念のための安全策として、そこから8km先の那須高原SAに入った。メモし忘れたのだが(すみません)、SA到着時のバッテリー残量は30数%だったはず。

で、またもやヒマな30分が始まってしまったため、仕方ないので特に食べたくもないソフトクリームを食べ、

ソフトクリーム

SA内をぶらぶらと散歩し、

散歩風景

ヒマなので、超ローアングルで写真を撮ってみた。が、それでもまだ12分41秒待たねばならない。うぐぐ。

散歩風景

そしてなんとか約30分間をやりすごし、急速充電は完了。この時点でのバッテリー残量表示は「81%」で、航続可能距離は「127km」との表示。……ええと、120kmぐらいフルに走るのは怖いから20kmか30kmぐらいの余裕は残すとして、やっぱり90kmか100kmぐらいに1回は充電しないとならんのですね。なるほど。

ワイドビジョンインストルメントパネル▲残量30数%から急速充電した結果、残量が81%で航続可能距離が127kmという表示に。もう一声欲しいところではあるが、まぁ仕方ない

仙台南ICのちょい手前で最後のチャージ

那須高原SAを出発し、それまでと同様の「おおむね100km/h巡航→たまに減速したり、たまに追い越ししたり」ぐらいの、特にエコランや回生は意識しないペースで仙台を目指す。

すると那須高原SAから60kmほど走った郡山JCT付近で、Honda e アドバンスのバッテリー残量は47%に。「次の次の次の充電ポイント」である福島松川PAぐらいまでは行けると思うのだが、例の「でも何が起きるかわからないし……」というビビリが発動し、安達太良SAにそそくさとピットイン。ピットイン時のバッテリー残量は「42%」で、急速充電完了後の数値は「88%」であった。

ちなみに、このあたりになってくると「充電中のヒマの潰し方」もさすがに堂に入ってきて、超ローアングルの逆光でしゃれた写真を撮ってみたり、

散歩風景

よくある車雑誌風にHonda eのステアリングホイールを撮影したり、

ホンダ Honda e

急速充電設備をなぜか心象風景っぽく撮ってみたりと、

ホンダ Honda e

ヒマ潰しのための作業もお手の物である。さて、充電も完了したので先を急ごうではないか。

いつものペースで順調に走行し、安達太良SAから88kmほど走った村田JCT付近で残量表示は30数%に。とりあえずの目的地である仙台南ICはもはや目と鼻の先(村田ICから15km)であるため、このまま最後まで突っ走ってもいちおう大丈夫かとは思う。

だが高速を降りてすぐに充電するのもかったるく、また「念のため」というのもあるため、菅生PAに入って最後の急速充電を行った。開始時点の残量は30%で、充電完了後の残量は確か81%だったと思う(ここもメモし忘れました。すみません)。

そして仙台南ICで東北自動車道を降り、そこからしばらく走った先にある仙台市内のホテルにチェックインした際のバッテリー残量は70%ほどであった。

秋の夕暮れ▲ちなみに終盤になると充電中のヒマ潰し術もどんどん進化し、宮城県の菅生PAでは「刻々と変わる空を色をただ眺める」という、かなり高尚な領域にまで達していた

結論! Honda eでの遠出も「やってやれないことはない」

結論として今回、東京・青山一丁目から仙台市内までの約400kmを「都市型コミューター」であるHonda eで走ってみての給電回数は、下記のとおりであった。

・第1回|佐野SA(54%→95%)
・第2回|那須高原SA(30数%→81%)
・第3回|安達太良SA(42%→88%)
・第4回|菅生PA(30%→確か81%)


一般的なガソリンエンジン車であれば、もちろん車種にもよるが、東京から仙台までは無給油で行けるか、給油するとしても1回というのが普通だろう。しかし今回のHonda e(の筆者の乗り方)では計4回の充電が必要となり、結果として約30分×4回=約120分、つまり約2時間が「余計にかかってしまった」ということになる。

この約2時間は、ハッキリ言ってかったるかった。もどかしかった。

だがそれは「筆者がせっかちな性格だから」でしかない可能性も高い。

もしも「まぁ急いだところで別にいいことなんかないんだから、のんびり各駅停車っぽく行きましょうや!」的に動くことができる人がHonda eに乗るのであれば、SA・PAへの急速充電器への設置が全国あまねく広がっている今、この素晴らしい都市型コミューターでロングドライブに出てみるのは、決して筋が悪い話ではない。

まぁそれでも、週末や年末年始などには「急速充電器の渋滞」がたぶん起きてしまうため、さらにかったるい――という問題は残るわけだが。

文・写真/伊達軍曹
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。