▲1991年から2003年まで製造されたハッチバックモデル。現在では廃止されている、200シリーズよりも小さいラインナップで、小さいエンジンに元気なエンジン、プジョーらしい軽快な足回りを組み合わせた走りで高い人気を誇った。特に1.6Lエンジンを積んだS16や810㎏という軽量ボディで競技用として開発されたラリーなど、走りに振ったモデルは人気が高い。ここ数年で物件数が減った絶滅危惧種である ▲1991年から2003年まで製造されたハッチバックモデル。現在では廃止されている、200シリーズよりも小さいラインナップで、小さいエンジンに元気なエンジン、プジョーらしい軽快な足回りを組み合わせた走りで高い人気を誇った。特に1.6Lエンジンを積んだS16や810㎏という軽量ボディで競技用として開発されたラリーなど、走りに振ったモデルは人気が高い。ここ数年で物件数が減った絶滅危惧種である

気軽に乗れるけど実は奥深い車なんだよ

EDGE:さて今回はずっと狙っていた車が出てきたのでそれにしました。

松本:やりたい車種、結構あるからねぇ。

EDGE:そいつもお世話になっているコレツィオーネさんにあるプジョー 106です。

松本:それはいいね。106には様々なバリエーションがあって、個人的には5ドアが好きだけど、やっぱりホットハッチとしてマニア受けするのは106の1.3ラリー(*1)だろうね。

EDGE:もうほぼオリジナル状態の車は出てこないですよね、ラリーは。

松本:そうだね。この当時のプジョーはモータースポーツの意気込みが凄くってね。勢いがあったなぁ。ル・マンでも1-2-3位でフィニッシュしたりと活気があったね。当時1.6LのSXiというモデルにけっこう乗せてもらっていたんだけど、乗り心地も悪くないし首都高速では安定したコーナリングなんだ。

エンジンも扱いやすくてね。フランスのエントリーモデルでもこんなに大人でスポーティな味付けがあるんだと思ったよ。日本でもそれ以前からカルタスGT-iやシャレードGT-ti(*2)の本物志向のホットハッチがあったんだけど、やはり本場フランスのホットハッチはシートやサスペンション、エンジンに至るまで奥深い味付けなんだよ。

EDGE:小さいけど、すごく元気に走るイメージがありますよね、106って。

松本:106の前のモデルに104っていうのがあってね。これもデザインは名門のピニンファリーナだったんだけど、これにも乗ったことがある。やっぱりまぁ小型なんだけど乗り心地が良かったね。その後継車が106だよね。オフィシャル的には106がコンパクトモデルとして最後のピニンファリーナボディじゃないかな。

EDGE:今回はやはりホットハッチのS16です。2001年式の。あ、こちらですね。

松本:これか。いいじゃない。内装もすごく状態いいし。後期型だね。後期型の方がさらに角が取れたセッティングで落ち着きがあるんだ。彼女や奥さんを乗せてもMTの運転に慣れていれば不愉快な思いをさせないと思うよ。

EDGE:それはうれしい話ですね。

松本:シートが良くてね。フランス車らしくソフトでホールド性が良いんだ。レザーと人工スエードが特徴的で乗り降りする部分にタフなレザーを使っている。これはこの車の価格帯を考えればすごくいい配慮だと思うんだ。中央部は滑りにくい素材でホールド性を重視。そこに機能性を組み合わせたってことだね。

EDGE:みなさん、フランス車ってシートや内装を褒めますよね。

松本:だって見てみなよ。内装も極めてシンプルだけどディンプルとか、スイッチ類が何とも洒落てるでしょ? AピラーもBポストも細身で視認性も抜群。センサーに頼らないで目で見て確認しやすい形状だよ。アナログ的に性能を突き詰めた、最後の時代なんじゃないかな。

EDGE:確かに独特の雰囲気ありますね。

松本:テールランプも初期型よりもボディの造形と一体感がある感じになってるね。並行して生産されていたプジョー 206のエッセンスを加えた感じだよね。

EDGE:S16についてもっと教えてください。

松本:106 S16は4バルブ化した1.6 Lモデルなんだけど118馬力だね。もっと高出力を狙えるポテンシャルだと思うけどドライバビリティを重視したカムのプロフィールなんだ。ヨーロッパではこのモデルを使ったモータースポーツも盛んで、いまだにチューニングをするのに必要なエンジンパーツは事欠かない。

106は本国ではTU 型(*3)の1 Lから1.6 Lまでが搭載されていて、今回のS16は1.6 TU5J4 というユニットで鋳鉄製のシリンダーでね。耐久性も高い。マネージメントはマニエッティ・マレリ社(*4)製。F1の標準ECUとして評価が高くてそれだけでもカッコイイと思っちゃったな。

EDGE:意外とガチなんですね……。

松本:そうそう、当時のプジョーって純正アルミホイールがめちゃくちゃ凝っていてね。簡単にタイヤのバランスが取れなかったんだよ。ほら、ホイールのセンターに穴が空いてないでしょ? だから専用のアタッチメントが必要になるんだ。回転するセンターにこだわりをもっていたんだろうね。

EDGE:仏車って不思議なところありますね。

松本:そうだね。徐々に姿を消して行くモデルだとは思うけど、素晴らしいモデルだったことは間違いないよ。一度は乗っておきたいフランスの大衆車モデル、しかもエンスージャストな人にも理解される。貴重なモデルだね。

■注釈
*1 1.3ラリー
日本には正規輸入されなかった過激なモデル。競技参加用モデルでありデビュー時は1.3L、のちのマイナーチェンジで1.6Lに

*2 カルタスGT-iやシャレードGT-ti
スズキとダイハツの歴史に名を刻んだホットハッチモデル。ともにチューニングした高出力エンジンを搭載し人気を集めた

*3 TU型
本国では1L、1.1L、1.3L、1.4L、1.5Lディーゼル、1.6Lと非常にラインナップが多かったのも106の特徴

*4 マニエッティ・マレリ社
イタリアの自動車部品メーカーで、ECUをはじめとする主要部品の開発をする大手企業。レースとの関連でも広く知られている
 

プジョー 106
プジョー 106
プジョー 106
プジョー 106
プジョー 106
text/松本英雄
photo/岡村昌宏
 

※カーセンサーEDGE 2019年3月号(2019年1月26日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています