お天道様の下で干す布団とメルセデス・ベンツ Eクラス(W124型)がもたらす人間のまっとうな暮らし
カテゴリー: クルマ
タグ: EDGEが効いている / EDGE SELECTION
2015/08/20
カタチだけ優先してると人生ロクなことになりません
東京近辺で単身者または2人暮らし向けの賃貸マンションを探したことがある人なら、「あのマンションシリーズ」のことをご存じかもしれない。コンクリート打ちっぱなしが基調で、透明のガラス製洗面台などが特徴となる、やたらとデザイナーズ感全開な(というかバブル期のトレンディドラマっぽい)賃貸マンションシリーズである。
まぁ端的に言っておしゃれなので、お若い人があのシリーズに引かれる気持ちはよくわかる。しかし個人的にはあまりオススメしたくない。なぜならば、件のマンションシリーズにはおおむね以下のような特徴があるからだ。
●ベランダやバルコニーが一切ないため、洗濯物や布団を太陽の下で干すことができない
●全部が全部そうなわけではないが、日当たりが悪い場所に建てられていることが多い
●デザインに凝っている分、同価格の賃貸マンションと比べると1戸あたりの平米数が少ない場合が多い
要するに狭めで日照時間も少なめな土地に「一見おしゃれな建物」を作り、そういうのが好きなお若い人を大量に、それなりに高めの家賃で住まわせる……というビジネスである。
他人さまの商売に口出しするつもりはないし、そこに住みたいならばそれもご勝手だ。しかし、もしも親しい若者から相談されたなら、筆者はこう答えるだろう。
「やめときなさいよ。もっとこうね、ちょっとぐらいダサくてもいいからそこそこ広々してる日当たりのいい部屋を週に2回ぐらいは掃除して、そんでもって週末にはお日様の下でしっかり干した布団をパンパンッって叩くような、そんな生活がね、人間のまっとうな暮らしってもんですよ」
要はカタチだけにこだわってると人生ロクなことにならないよ、もっと「中身」を見て行こうよ……ということだ。で、そんなこんなのマンション談義をしていると職業柄どうしても頭に浮かぶのが、昔のドイツ製セダン、とりわけW124こと3世代前のメルセデス・ベンツ Eクラスだ。
「ザ・セダン!」といった感じの四角四面なボディは、新車当時はさておき、今の視点で見ると失礼ながらおしゃれのおの字もない(と個人的には思う)。しかし実際に乗ってみると、まるで「さすがにちょっと古いけど、昔の技術と思想ですんごいしっかり作られた何らかの家屋」のような、人間の生理というか暮らしのリズムというか、そういったものに完璧に根ざした世界がそこにあることに気づくのだ。
乗り込む際も運転する際にも「やたらと適切!」と感じる天井高。狭い道でも何の不安もなく運転できるボディ四隅の見切りの良さ。ビジュアル的にはどうというアレもないが、長時間座っていても苦にならないやや硬めのシート。高回転域まで回しても特にドラマはないが、低~中回転域では人並み以上にしっかりとした仕事をするエンジン。カーブではけっこうなロールを許すのだが、しかしなぜか下手なスポーツカー並みのペースで走ってもまったく不安を感じない足回り。……特に華もないし「デザイナーズなんちゃら」という感じでも全然ない。しかし「生活をともにするなら結局はコイツでしょ!」と人に痛感させる実質が、そこにはあるのだ。
まぁ燃費の面では現代の同セグメントに敵わないし、最終型でも販売終了から20年がたっているため、メンテナンスフリーというわけにもいかない。ハーネス(電気ケーブル)やサスペンションのブッシュ、エンジンを支えているゴムマウント等々、乗っているうちにいくつかのメンテナンスは必ず必要になるはずだ。
しかしそこを押してでもある種の人には絶対に推奨したい、やたらと作りの良いビンテージマンションのような、そんなステキなセダンなのだ。W124はきっと、あなたが「ステキな毎日(生活)」を作り上げるうえでの良きパートナーになる。
ということで今回のわたくしからのオススメはずばり「V8モデルを除くW124型メルセデス・ベンツのEクラス」だ。
- Search the selection!
- Car:メルセデス・ベンツ Eクラス(W124)
- Conditions:総額表示あり&修復歴なし
この記事で紹介している物件
日刊カーセンサーの厳選情報をSNSで受け取る
あわせて読みたい
- 西川淳の「SUV嫌いに効くクスリをください」 ランボルギーニ ウルスの巻
- EVハイパーカーメーカー「リマック」が今熱い!従来のスーパーカーを猛追するクロアチアの新星【INDUSTRY EDGE】
- 【功労車のボヤき】「オペルとは思えないほどイカしてる!」というトホホな褒め言葉に涙した日もあったけど……。オペル一族の逆襲!?
- 【試乗】メルセデス・ベンツ 新型Sクラス│”新時代の車”を堪能できるラグジュアリーセダンの最高峰!
- ドア開閉音からも分かる卓越したビルドクオリティ、空冷時代だからこそ生きたポルシェの技術力
- 【試乗】新型 フォルクスワーゲン T-Cross│「TさいSUV」はハッチバックよりもどこが欲張りか? 実際に乗って考えた
- 今はもう中古車でしか味わえない高純度FR、国産を代表するミドルセダンのレクサス GS【Back to Sedan】
- 世界で3社しか市販していないレアなFCVの1台、トヨタ MIRAIのドライブフィールに注目! 【EDGE’S Attention】
- 【試乗】新型 アウディ A4 アバント│実用性の高いアバントボディがクアトロらしい俊敏な走りとマッチし、絶妙にバランスがとれた逸品
- アルピナ B8 4.6リムジン。それはある意味「永遠の命」をもつ希少名車だった。【NEXT EDGE CAR】