▲筆者のお気に入りである関越道上り三芳PAの「濃厚チーズソフト」だが、その上に新たなプレミアムソフトが… ▲筆者のお気に入りである関越道上り三芳PAの「濃厚チーズソフト」だが、その上に新たなメニューが…

わたくし的お買い物術の極意

過日、関越自動車道上りの三芳PAにて「濃厚チーズソフト」を食すべく、わたくしは2011年式ルノーメガーヌRSモナコGPを同PAに颯爽と乗り入れた。三芳PA限定商品となる濃厚チーズソフトは、ここを通るたびに毎回食べたくなってしまう至高の名品である。それでいて360円(税込)というお求めやすい価格であるのも大きなポイントだ。

いつものように「お姉さん、濃厚チーズを1つ……ヨロシク」と渋く注文しようと思ったのだが、メニュー写真の見慣れぬ品が気になった。プレミアム生クリームソフト「CREMIA(クレミア)」という、ちょっとスペシャルなソフトクリームらしい。「生クリームとラングドシャの絶妙なシンフォニー」という説明文に食欲が亢進された筆者は、そちらを注文してみることにした。520円(税込)と濃厚チーズソフトに比べて160円もお高いわけだが、たまたまその日はフトコロに若干の余裕があった。

……ダメだった。いやもちろん味覚というのは個人差がデカいわけで、コク深く、すべてにおいて濃厚で女性ウケはとても良さそうなのだが、筆者にとってはちょっとクドかった。

個人的には失敗チョイスとなったそれを食しながら、「……何をやってるんだオレは、普段の“中古車選び哲学”がまったく生かされてないじゃないか!」と自分を罵った。

中古車選びの指針として筆者が常々言っているのは、「中古車を買うなら新しくて高いやつか、もしくはグッと古めで安いやつがいい」ということだ。

「新しくて高いやつ」の美点は説明するまでもないだろう。値は張るがその分コンディションが良く、昨今の日進月歩な自動車テクノロジーの恩恵も十分受けることができる。逆に「グッと古めで安いやつ」は、コンディションやテクノロジーに関しては正直ビミョーかもしれないが、現在の車では絶対に味わえない手動感やコンパクトさといった、独自の魅力があるものだ。

それゆえ、そのときどきの気分やフトコロ具合に応じて「新しくて高いやつ(例えば今乗っている11年式メガーヌRS)」か「グッと古めで安いやつ(以前乗っていたシトロエン2CVなど)」のどちらか、つまりは「両極端」な中古車を選んでいる筆者である。またこの両極端志向は中古車だけでなく、その他の買い物においても有効であると確信している。「ビール飲むなら瓶のハートランド! そうでなきゃ缶の激安発泡酒でヨシ!」といった具合だ。

そういったお買い物術の極意をつかんで久しいはずだった筆者なのだが、今回は久しぶりにやってしまった。考えてみれば、濃厚チーズソフトより高いとはいえ、せいぜい520円なのだ。それなら割安で美味しい360円の濃厚チーズソフトを頼んだ方が全体としての満足度は絶対に高い……ということが今はわかるが、その時点ではどこか舞い上がっていたのか、完全に自分を見失っていた。

まぁ、自分を見失ったとしてもソフトクリームなら大きな問題はない。数時間もすれば消化してしまうのだから。しかし中古車となるとそうもいかない。ソフトクリームと違って中古車は、短い人でも半年ほど、長い人では数年間か、下手すりゃ10年レベルの付き合いとなる品物だからだ。それゆえ、失敗はしたくない。

で、失敗を避ける方法は様々あるが、本質的には前述のとおり「新しくて高いやつか、もしくはグッと古めで安いやつ」という考え方に尽きると筆者は考えている。もちろん、通勤や通学などの手段としての車選びである場合は別だが、趣味として考えるなら、選ぶは「両極端」のどちらかに限る。中途半端なモノを買っても、車好きというのは結局すぐに「隣の芝は青く見える」的状態に陥るのだ。ならば最初からエッジの立ったどちらかに絞った方が良いではないか。

「新しくて高いやつ」についてはここカーセンサーEDGE.netで他の方がさんざん紹介しているのであろうゆえ、わたくしからは「グッと古めで安いやつ」のご紹介というか提案をさせていただきたい。

「古め&安い」というのも漠然とした言葉であり、特に定義があるわけでもないが、まぁなんとなく「10年落ち以上&総額100万円以下」といったところだろうか。その中で考えた場合、「ゲタのように気軽に扱えて、それでいて走りもビジュアルも、そして存在感的にもグッとくるもの」というと、例えばプジョー106だ。

▲95年から03年まで販売されたプジョーのボトムレンジ「プジョー106」。写真は後期のS16 ▲95年から03年まで販売されたプジョーのボトムレンジ「プジョー106」。写真は後期のS16

……今や流通量もそう多くはないが、それでも総額60万~80万円ほどでまずまずの1台が探せるだろう。何の変哲もないメカニズムしか使っていないくせにやたら小気味良く走るその様は、まさにプジョーマジック。現代のメタボなハイテク小型車では決して味わえない魅力にあふれている。

正直故障が心配という側面もあるのだが、そこがさほど気にならないのであれば、106以上にプリミティブなミニも良いだろう。もちろん現代のBMW製ミニではなく、英国製となる元祖の方だ。

▲言わずと知れた元祖ミニ。超初期のモーリスなどは高いが、末期のローバー製であればかなりのお手頃価格▲言わずと知れた元祖ミニ。超初期のモーリスなどは高いが、末期のローバー製であればかなりのお手頃価格

プリミティブという意味ではフィアットの初代パンダも素晴らしい。

▲ジョルジェット・ジウジアーロ先生による傑作デザインの超実用コンパクトカー、初代フィアット パンダ▲ジョルジェット・ジウジアーロ先生による傑作デザインの超実用コンパクトカー、初代フィアット パンダ

筆者としては、セレクタ(AT)は走りがややかったるく、4WDの4×4は故障したときに少々面倒だと思うのだが、5MT/FFのパンダであれば最高だ。現代の車では絶対に得ることのできないまさに「古き良き」感覚を毎日味わうことができる。

また、一時は下品な改造が施された物件が多かった印象もあるBMW Z3だが、ここ最近はなぜか知らねどノーマルもしくはそれに近い中古車が増えてきている。デビュー当時はアグレッシブなイメージが強かったZ3も、今となってはネオクラシックなワビサビが出てきており、なおかつこの小ぶりなサイズ感は今の車にない美点だ。

▲初期型は5ナンバーサイズで、後のワイドボディも全幅1740mmでしかないBMW Z3。とにかく軽快だ ▲初期型は5ナンバーサイズで、後のワイドボディも全幅1740mmでしかないBMW Z3。とにかく軽快だ

以上は筆者の個人的な好みに基づく選択にすぎないわけだが、中古車市場という大海原には必ず、あなたの好みにぴたりと合う「グッと古めで安いやつ」が存在している。ぜひともそんな1台を見つけ出していただけたなら、たとえ他人事ではあっても大変嬉しく思う。

ということで今回の(とりあえずの)オススメは、プジョー106とローバー ミニ、初代フィアットパンダ、BMW Z3……要するに「今の車では味わえない魅力を持つ古めの、そして安めの輸入車」だ。

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  • Car:プジョー 106&ローバー ミニ&フィアット パンダ&BMW Z3
  • Conditions:100万円以下
text/伊達軍曹