「世界的工芸品」といえるアルピナも中古なら国産ミニバンとほぼ同価格ですが、どうしますか?
カテゴリー: クルマ
タグ: EDGEが効いている / EDGE SELECTION
2014/12/16
ぶっちゃけ高いモノはいい。でも「1067万円」はさすがにちょっと無理……
過日、縁あってアルピナ D4ビターボという最新鋭のディーゼルターボ車をお借りして首都圏を放浪した。素晴らしい車だった。
詳しいスペックはカーセンサーnetのカタログをご覧いただきたいが、ツインターボを装着した3Lの直列6気筒ディーゼルエンジンは、最高出力350psという、BMWの3Lガソリンターボをも上回る出力をマークし、最大トルクに至っては71.4kg-mという、ほとんど「……バスか?」と言いたくなる数値。それをアルピナならではの強固かつしなやかなボディ&足回りと、最上のインテリアでもって堪能できるのだから、もう素晴らしくないわけがない。「いつまでも乗っていたい、いっそかっぱらって家に持って帰りたい」と本気で思った数少ない車であった。
とはいえ、かっぱらうのは論外として、正当に代金を支払って買うのもなかなか難しい車ではある。なぜならばアルピナD4ビターボ正規輸入新車の車両本体価格はズバリ1067万円。モロモロの諸費用とオプション代を合わせれば支払総額は1200万円ほどになるだろうか。とてもじゃないが筆者のようなド庶民が払える額ではない。業務上の必要によりたまに広報車をお借りし、感嘆のため息をつくぐらいが関の山である。
そして、その同日にたまたま食した高額洋菓子(兵庫県のツマガリというお菓子屋さんの品。筆者は存じ上げなかったがかなり有名なお店らしい)が死ぬほど美味だったこともあり、「やっぱいいモノは高いし、高いモノってのは素晴らしいんだなぁ……」とつくづく身にしみたのであった。
この経験を機に筆者は「高級品志向」に目覚め、食後の菓子は前出のツマガリで洋服はヒューゴ ボス、そして車は断然アルピナ……というような生活を開始しようかと思ったが、よく考えればそれは実行不可能だった。なぜならば、前述のとおり自分はド庶民だからである。ツマガリさんのお菓子を通販で買う程度のお金はあり、ヒューゴ ボスもアウトレット品であればなんとかなるだろう。しかしアルピナだけはどう考えても無理だ。1067万円(諸費用とか抜きで)……、家中の貯金箱を破壊しつくしても無理である。
しかし、よく考えてみれば世の中には「中古車」というものがある。それであれば、わたしのようなド庶民であってもD4ビターボに乗ることは可能かも……ということで調べてみると、D4ビターボはまだ発売されたばかりということでカーセンサーnet掲載台数は0台。ではガソリンエンジンで……と探してみてもB4クーペはまだ0台で、セダンの現行B3がかろうじて1台という状況であった(※12月9日現在)。アルピナはそもそもの流通台数が激少なので、まぁそんなものだろう。
だが一つ前の世代、すなわちE90/E92型BMW 3シリーズをベースとした旧型アルピナ B3またはD3であれば、少なめながらもそれなりの数は流通している。程度や装備などによって価格にバラつきはあるが、おおむね「08年式か09年式で450万円前後」というのが一つの相場だ。無論それでも筆者にとってはかなり高額なわけだが、「トヨタ ヴェルファイアの3.5Z G EDITIONを買うのと似たようなもの」と考えれば何とかなるような気もしてくるのが不思議なところである。
問題は「旧型ゆえの現行型との性能差」と、「中古車ゆえの劣化っぷり」だろう。性能がプアで、言ってはなんだがボロい中古車であるならば、車両本体に約450万円も出して買う価値はないのは明らかである。
実際のところどうなのだろうか。
まず「旧型ゆえの現行型との性能差」については「あんまりない」と断言したい。これは何もテキトーに言ってるわけではなく、06年頃に走行1万km台の04年式アルピナ B3S(E46型BMW 3シリーズ後期型をベースとしたアルピナモデル)に乗っていた人間として断言する話だ。今回試乗した最新のアルピナモデルは、極端なことを言えばわたしが乗っていた2世代前のアルピナと、そう大きな違いはなかったのだ。
いやもちろん、最新のディーゼルである現行D4と2世代前のガソリンエンジンであるB3Sではトルクがまったく違うし、わたしではなくレーサーがサーキットで乗れば「何もかもがまったく違う!」みたいなことにもなるのかもしれない。しかし筆者のようなアマチュアが公道を走る限りにおいては「どっちも素晴らしい!(まぁD4の方がさすがにいろいろ上ですが)」という評価にしかならないのだ。どちらもおそろしいほどに甘美で、そして端的に言ってメチャメチャ速い。ましてやB3Sよりも1世代新しい旧型B3であれば、現行モデルと比べて(我々アマチュアが公道で運転する分には)ほとんど遜色ないと言い切っても構わないはずだ。
第二の「中古車ゆえの劣化っぷり」は、ケース・バイ・ケースというか1台ごとに話が違ってくるので一概には言えない問題だ。しかしアルピナという車は基本的にはあまり荒っぽく扱われる車ではないため、ごく標準的な走行距離で、ディーラーまたは専門工場でしっかりと定期点検および必要な部品交換を受けてきた記録がある個体であれば、さほど心配はいらないのではないかと考えている。
「450万円も出すなら中古車じゃなくて新車の何かを買うよ」という人もいるだろう。それはそれで一つの見解であるゆえ、もちろん尊重はしたい。しかし中古車とはいえ、マイスターの手造りで年間1000台から1500台ほどしか生産されない「工芸品」と、年間数万台から数十万台がマス生産される「商品」とを比較すること自体がナンセンスだとは思う筆者である。商品ではなく工芸品と暮らす日々を好ましいと思うのであれば、ぜひ中古のアルピナにもご注目いただきたい。
ということで今回のわたくしからのオススメは旧型アルピナ B3およびD3だ。
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- Car:BMWアルピナ B3(旧型)&D3(旧型)&B3クーペ&B3カブリオ
- Conditions:本体価格600万円以下&2004年式以降
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