BMW635CSi|伊達セレクション
写真上は当時「世界一美しいクーペ」と称された初代BMW 6シリーズのM635CSi。M1から移植された最高出力286psのDOHCエンジンを積む高出力バージョンで、80年代の欧州ツーリングカー選手権でも活躍したモデルだ。写真下はR107というコードネームをもつ2世代前のM・ベンツ SLクラス。比較的オラオラ風味となった現代のSLとは趣が異なる、非常に上品なスタイリングが魅力の1台。
M・ベンツSL(R107)|伊達セレクション
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何かとスカだった80年代だが、車だけは豊穣だった

世の中たいていの物事は「循環」しており、例えばの話、最近の若いコが「新しい!」と感じているファッションも、おっさんである自分からしたら60年代や70年代のリバイバルにしか見えない。しかし60年代や70年代のファッションというのは確かに、今見てもなかなか普遍的な美というか趣があり、昨今の若衆らに受け入れられるのも必然である。また50年代の北米を中心とした文化からも、いまだにロケンロールな魅力を感じられるだろう。

だが、どうにも「80年代」だけはリバイバルする気がしない。

カーセンサーEDGE.netを見ている貴殿らの多くは、おそらくわたしと同じく80年代に青春時代を過ごしたと思われる。それゆえご記憶かと思うが、アレはいったい何だったのだろう? カリアゲ頭で黒づくめな痩せぎすハウスマヌカン。前髪の一部だけがなぜか長いチェッカーズの髪型。大仰なシンセサイザーがうるさいポップミュージック。……天変地異が起ころうとも、アレのリバイバルは絶対にないだろう。本当に、80年代が終わって良かった。

しかし車だけは、「80年代」がリバイバルする可能性は大いにある。例えばそれは下記物件リンクにあるようなBMWの初代M6やメルセデスのR107型SL、930型のポルシェ911ターボ、あるいは癒し系のルノー4などなどだ。

いろいろな意味で今だからこそ、80'sが光ります

ていうか、これらはすでに一部でリバイバル人気を博しているとも言えるわけだが、わたしが考える「80’s車」が再び人気を得るだろう理由は、以下の3点に集約される。

1. 青春の記念碑、というかリベンジとして
貴殿らが仮にわたしとほぼ同世代であるならば、一部の御曹司を除き、当時はこれら輸入車を決して手が届かぬ高嶺の花として、地底より眺めていたはずだ。しかしそれらは今、ポケットマネーで買えるぐらいの相場となり、また貴殿もそれぐらいのポケットマネーを持つに至った。今こそリベンジのときである。

2. 自動車趣味の絶頂期を今に伝えるものとして
これらモデルが開発された頃、経済は世界的にイケイケで、排ガス規制やエコへの関心も今ほどではなかった。その結果、良し悪しは別として「古典的自動車成分」が大変過剰なモデルが多数登場した。前述のM6しかり、初代M3しかり。そういった車は、妙にお利口さんな車だらけで、「自動車趣味」という言葉自体がビミョーになってしまった2010年代だからこそ、異彩を放つのだ。

3. 整備技術というかノウハウの蓄積
しかしこういった時代の輸入車は、最近のそれと違い「ブチ壊れまくる」という伝説も同時に残した。それは伝説というより真実に近いのかもしれないが、しかし時代は変わった。リバイバル云々にかかわらず80年代の輸入車を愛し続けた先達により、弱点部分には「対策部品」が生まれ、財布にやさしい「安価なOEM部品」あるいは「国産部品の流用テク」なども静かに磨かれていった。その結果、今や、専門店でツボを押さえた納車整備をしておけば、80年代の輸入車でもブチ壊れまくって困るというケースはレアなはずだ。

ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
若き日の憧れや悔しさを今、アレしてみませんか?


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE