M・ベンツS123
写真は1980年代半ばまで生産されていたM・ベンツミディアムクラスのステーションワゴン。その大らかでロハスな(?)イメージから、ファッション系のカタカナ職業人やサーファーさんなどにいまだ高い人気を誇るモデルだ。その乗り味もある意味かなりロハス的で、いわゆるオラオラ系な運転をしたくなることは一切ない、ほのぼの系の味わいである。
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昭和のリビルト家電的ワビサビ

ネオクラシックカー。何種類かの明確な定義がある「クラシックカー」と違い、「ネオクラシック」の定義はテキトーだ。基本的には「ちょっと古い車」程度の雑な認識でOKである。

それはさておきネオクラシックを買うこととは、まさに「EDGEな選択」のひとつだ。1988年まで作られていたポルシェ911のタイプ930ですら、都内在住の不肖軍曹でも月に一度見るか見ないか。つまりは「希少性」がいきなり約束されるわけで、それだけでもある種の自動車愛好家にとっては大いに価値がある。

加えて言えば、そのルックスである。ネオクラシックカーに乗るというのは昭和の電気炊飯器や冷蔵庫のリビルト品を平成の世に使うようなもので、かなりの趣とワビサビがある。さらに、電子制御の大量投入が本格化される前の車ゆえ、いわゆるひとつのダイレクト感が各所にいちいちあふれているのも魅力だ。

かように魅力的なネオクラ系輸入車は、その値段も魅力。純粋な「クラシックカー」だとウン千万円級にもなるが、「ネオクラシック」ならポルシェ911ターボなど一部の特殊なモデルを除いてせいぜいウン十万円から200万円程度だ。

問題点というか疑問点は「古いから壊れて大変なんじゃない?」ということと、「壊れないにしても作りが古いから、普段使いは大変なんじゃない?」という2点に集約されるだろう。それについて、不肖わたしの経験に基づきお答えしよう。


半年に一度工場で見てもらえば、おおむね心配不要

まず前者の結論をいきなり申すと、壊れない。いや放っておくとさすがに壊れるが、荒れていない物件を選び、十分な納車前整備をしたうえで、納車後は3ヵ月から半年ごとを目安に専門店ないしは専門工場でオイル交換をしてもらい、そのついでに各部の状態をプロ整備士の目で見てもらうことを心がければ、そうひどいことにはならないはずだ。

後者の疑問「普段使いは難しい?」については、年代と車のキャラを2つのグループに分けて考える必要がある。まず80年代後半ぐらいのポルシェ911やBMWなどの「そこそこフツー系」。これはもう、エアコンやクーラーさえ壊れていなければ現代の車とほとんど同じ感覚で使えると思って良い。

だが、シトロエン2CVなどの「基本設計が極度に古い系」は、若干の覚悟は必要だ。実際、自分はせっかく買った2CVをソッコーで手放した苦い経験をもつ。どんな覚悟が必要だったかと今にして思えば、まず第1に「冷房設備がないため夏場の渋滞では死にたくなる」という問題に対する対策案だ。心頭を滅却し手ぬぐい持参で渋滞に臨むか、あるいは「夏場は別の車に乗る」という現実的な対策をとるか、各自でお考えいただきたい。

第2に、「機械に関するちょっとした知識というか、向き合う姿勢」みたいなものは絶対に必要となる。例えば2CVの場合はバッテリーの放電が激しいため、簡易キルスイッチを増設するなどの手立てをしないとすぐにバッテリーが上がる。その他、故障というほどではない小トラブル(風圧でモールがはがれるとか)は日常茶飯事。それの対策や予防策などができない者、あるいはやりたくない者は、「基本設計が極度に古い系」は避けたほうが良いだろう。

だが逆に言えば、注意点といってもその程度だ。わたしの場合は機械に関してからきし根性なしのためソッコーで手放してしまったが、ごく一般的なレベルの車好き男性であれば、おそらくは楽勝でクリアできる。大切なことなのでもう一度言うが、2CVに関してはわたしが根性なしだっただけだ。あの車に何年も、何十年も、フツーな顔して乗ってる人は世の中にゴマンといるのだから。

ということで、今回の伊達セレクションはずばり・・・
「いわゆるひとつのネオクラシック、そろそろどうだろう?」


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE