ポルシェ911
写真上のタイプ997(旧型ポルシェ911)や初の水冷モデルであるタイプ996、あるいは最新のタイプ991にケチをつもりはもちろんないが、今、時代は「ローファイ志向」。古民家再生とか、画像共有サービスInstagramの古びて見える写真加工とかね。そういった意味で空冷ポルシェ911には今、「安い」とか「ハードウェアが云々」とはまた違う価値が生まれていると思うのだが、どうだろう?
伊達軍曹
伊達軍曹 Sergeant DATE
輸入中古車研究家
東京都杉並区出身。外資系消費財メーカー本社勤務の後、出版業界に。輸入車専門誌編集長を経て2008年から2011年まで『インポートCarSensor』編集デスク。現在は「輸入中古車は、その価格にかかわらず素晴しい!」との見方を核とする輸入中古車研究家として各誌で活躍。雑誌『カーセンサーEDGE』では現在「輸入中古車相場考現学」を連載中。

●伊達軍曹公式サイト「伊達軍曹.com」
http://www.sgt-date.com

凡庸を好まず、差異を求める者のための輸入車とは?

新装開店と相成ったDaily EDGEの月水金を担当する輸入中古車研究家の伊達である。以後、よろしくお見知りおきのほど願う。このDaily EDGEなるコーナーにて今後、いわゆる「EDGEな車」をどんどん紹介していく所存である。

当連載においては「新しい価値軸、もうひとつの検索軸」のようなものを、不肖伊達なりに提案したい。超ざっくり言って「EDGEな車=スーパーカーまたはプレミアムカー」と考えがちなのもわかるが、少なくともここではそうではない。たとえいわゆるスーパーカーの10分の1程度のパワーと値段の車だったとしても、その車に凡庸ならざる価値が大いにあるのなら、それは「EDGEな車」である。

安いというだけじゃない、空冷ポルシェの2012年的価値

さて、相変わらず人気の「ポルシェ 911」だが、最近ではエンジンが水冷化された以降のモデルが需要の中心であるようだ。水冷911。無論、どれもすばらしい。その気になれば鬼のように速く、それでいてジェントルでもあり、かつ故障も少ない。明らかに「高い車オーラ」も発しているゆえ、人々からの羨望の眼差しも獲得できそうだ。

だが、やや「凡庸」なイメージもあるのが、水冷911のちょっとした弱点である。

人気車ゆえ、走ってる数が(高額輸入車としては)やたらと多い…というだけではない。「ちょっと小金持ちになったから高年式911を中古で買う」あるいは「かなりの金持ちになったから、最新のタイプ991を」という行動自体に、若干の“ありがち感”が内在されているのだ。無論、これは言いがかりにも近い物言いゆえ、無視してもらっても構わない。そして私も、水冷ポルシェを憎く思っているわけではない(いやむしろ996カレラ4Sとか欲しいし)。

が、水冷以外のポルシェ 911、早い話が「空冷911」も検討に加えてはどうか? ということだ。その場合ティプトロでもいいが、もしもMTであるならば最高だ。

なぜならば、空冷ポルシェ 911の魅力とは「水冷と比べて安い」ということだけでは決してないからである。様々のモノが安易かつ安楽な方向に流れていく現代社会にあって、あえてそうではない、ちょっと手がかかるローファイな道具とともに生きること。それこそが空冷911の2012年的な面白さであり、今の時代にあってその姿勢は、洗練された水冷と暮らす以上におしゃれでもある。そして空冷911に実際乗っていた者としては、1回ビシッと整備された空冷911は、実はさほどお金も手間もかからない、ということも言っておきたい。

ということで、今回の伊達セレクションはずばり・・・
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文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE
写真・大子香山 photo/DAIGO Kazan