Part4：ラグジュアリィ対決 【BMW5シリーズ vs 世界のミドルセダン4番勝負】

運転者にはドライビングプレジャーを同乗者には快適性を

BMWであっても5シリーズクラスともなると、ドライバーが自分でステアリングを握り車を走らせること自体に楽しみを見出すだけが価値観のすべてではないはずだ。

家族や友人、知人、あるいは然るべき大切な人を乗せ、安心・安全・快適な移動の手段として使う・・・そんなシーンも想定内において車が選ばれることにもなる。

としたら、走行中、あくまで乗員の神経や気持ちを逆撫でしない、コンフォートライドが実現されていなければならない。黙っていてもコンシェルジュがコチラの求めていることを的確に察し、導いてくれる気の利いた高級ホテルのように。たとえBMW530iのようなハイスペックな車だからといって、隣に座る大切な人に、勢い余って「BMWとはバイエルン・モトーレン・ヴェルケの頭文字でね・・・」などと、開口一番、余計なコトを口走ってはイケナイとも言える。

もちろんBMW530iは、車自身十分にコンフォートに仕上げられている。走りは実にクールだし、パン！とドアを閉め、静謐な室内空間で過ごしてみると、コチラの気持ちまでやがて静かになっていくのがわかる。

シートに身を任せればアメリカの悠久の歴史を感じる

同様に、コンフォートであり、かつラグジュアリィさでさらに上を行くのがキャデラックSTSだ。もともと欧州車志向だったセビルを前身にもつSTSは、今のキャデラックの方向性を象徴するモデルの一つ。キャデラック本来のラグジュアリィさに、欧州車を視野に入れたシュアな走りがプラスされ、ちょうど日本のクラウンのように、今このクラスの車を求めるユーザーのストライクゾーンにジャストミートする車に仕上げられている。

だからキャデラックSTSの実際の走りは、とても心地いい。ただしBMW530iの、計算され尽くした理詰めの走りがもたらす快適性とは少し質が違う。言葉で表わすなら、それは昔ながらのアメリカ車ならではのウォームハートな味わいに包まれるような感じ・・・というところか。

シートクッションの文字どおり身体を包み込むような感じ、あくまで自然で滑らかステアリングや各種スイッチのタッチ、あるいはオーディオの音質まで。最新のキャデラックSTSは当然、最新の技術で作られてはいる。が、ドアを開けてシートに座り、走り出すと、たとえスポーティさを意識した最新のキャデラックでも、まるで自分の家に帰ってきたような温かさ、やわらかさを室内の空気から実感できる。