Part1：走行性能対決 【BMW5シリーズ vs 世界のミドルセダン4番勝負】

貫き続ける信念と磨き抜かれたスポーティな走り

BMW5シリーズもシトロエンC6も、ともに“走り”へのこだわりようは相当なものだ。ただしその方向性は、ローリングストーンズとサラ・ブライトマンほどに違う。

もちろん、自動車としてダイナミック性能に命をかけるがごとく、ひたすらスポーティネスを追求しているのはBMW5シリーズのほう。納車の際、必ずリアウインドウに「駆けぬける歓び」と書かれたステッカーが貼られる・・・のはもはや些細なこと。

FR（後輪駆動）、50対50の理想的な前後重量配分、そして世の中の精緻な工業製品を代表するかのようなエンジン・・・など、BMWをBMWたらしめているファクターを、5シリーズに限らず、あまねくどのBMW車にも貫く姿勢は、もはや信念に等しい。

現にBMWを走らせてみると、クルマが動き出した瞬間から「ああBMWだなあ」と実感させられる。ドライバーに作法をやや強要するようなところがあるにはあるが、スッと切れ込むステアリングの反応、走行中のボディの無駄な挙動を限りなく排除した安定性などは、BMWらしい走りの事象の一端。それにどこまでもなめらかなエンジンフィールが加わり、BMWならではのクールな走りが完成する。

大海を行く船、空に浮かぶ雲のような感覚が味わえる

片やシトロエンC6の走りは、コチラもまた乗ると「懐かしいシトロエンの味がする」と実感できる。

低い姿勢でノメッと平たいボディを潜めて駐車している姿は、親愛の情を込めて言えば、まるで眠っているウナギイヌのよう。誰がどう見ても独創的としか言いようがない。そしてそのユニークさは、走り出しても依然として変わらないままなのが、またいい。

C6に採用される新しいハイドロニューマチックアクティブサスペンション「ハイドラクティブIIIプラス」は、一連の同システムのなかでもっとも洗練されていると評してよく、一時期のコツコツ！といった不快なショックの伝達が気にならなくなった。流したければ雲に乗ったような極上の乗り味を提供してくれるし、山道を少し急げば、大柄のボディでも難なく走り抜けられる安定性をもたらしてくれる。

BMWのような、ある種、刹那的なスポーティさではないけれど、ステアリングを握っても、後ろの極上のスーパーシートに座っていても、いかなる場面でもコンフォートな走りを乗員に愉しませてくれるのが、シトロエンC6ならではの持ち味だ。