年々改良が重ねられたシリーズ集大成、ランエボ ファイナルエディション。開発陣が「最新=最良」と語る理由
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2015/07/17
XIに向けて開発された技術を導入
ついに幕が下りた。終わりが近いことは昨年から噂されていたし、“ファイナルエディション”などという意味深な特別仕様車が発表されたのは今年4月のことだ。そのプレスリリースに書かれていた「尚、本モデルをもって『ランサーエボリューションX』は生産終了となります」は、次期XIを否定も肯定もしていなかったが、結果的にXIが発表されることはなかった。
1992年、世界ラリー選手権のホモロゲ−ションモデルとして登場したランエボ。ベース車であるランサーのエボリューション=発展型、進化型として、23年間&10代の発展・進化を続けてきた。
その最終進化形であるファイナルエディションにはナトリウム封入排気バルブが採用されている。これはエンジンバルブの傘部分を冷却することで出力向上を目的としたもの。これにより従来のXと比べて最高出力は9kw(13ps)、最大トルクは7N・m(0.7)kg・mアップしている。
実はこのナトリウム封入排気バルブ、当初は次期ランエボ(つまりXI)に向けて開発された技術のひとつだという。Xを発表したその日から、次の技術開発が始まっていたというわけだ。
Xの場合は、結局次期型がないため「技術の先出し」とは言いがたいが、次期型で使っておかしくない技術を前倒しで前の型に投入する例は、他のランエボでも散見される。
例えば三菱自動車の商品開発プロジェクトに所属する渡邊さんが初めてランエボの開発に関わることになったVIII MRもその一例だ。
「旋回性能を高めるために、量産車としては初めてのアルミルーフにしました。鉄とアルミという異なる素材の接合に特に苦労し、ようやく特殊形状のリベットを開発することで解決できたのです。またビルシュタイン社製ショックアブソーバーをランエボとしては初めて採用するなど、その他にも様々な改良を重ねましたから、個人的にはVIII MRではなくIXと謳ってもよいのでは、と思ったほどです」
最新のランエボが最良のランエボ
実はXも2007年の登場から、公式に発表されてはいないが、地道な改良が毎年のように施されているという。「技術者というのは常に『もっと良く!』を求めますから」とはXの開発に長らく係わった商品開発プロジェクトの上平さんの談だ。
2ペダル・ツインクラッチの6速セミオートマ、つまりTC-SSTは将来のレース参戦を見越してコーナリング中の無用なシフトアップを抑えるように、毎年改良を行った。5速MTは部品精度を高め、地道な作りこみでシフトフィーリングを向上させている。ボディのスポット増し打ちの点数も、年式ごとに増やしたという。
TC-SSTの改良のヒントとなったのは、スーパー耐久レース参戦からのフィードバック。これが後にニュル24時間レースで初参戦でのクラス上位完走につながった。車両は極力市販車に近い仕様で、TC-SSTやS-AWCのセッティングはほぼノーマルのまま、TC-SSTはオートモードで走破したという。
「ですから最新のランエボが最良のランエボ、と言えます」と語る上平さん。最後まで重ね続けられた改良について「乗れば『なるほど!』とわかると思います」という1000台限定のファイナルエディションは、ほぼ完売したそうだ。Xの中古車相場は昨年からほぼ横ばい。正式に生産終了がアナウンスされたからには、さらにこの傾向が続きそうだ。
しかし、一時代を築き上げたランエボという名車だけに、それでも手に入れたくなる。ましてや、同じXでも年式によって乗り味に違いがあるのだとすれば……。現在Xにすでに乗っている人も、下取り条件もいいだろうから、より年式の新しいXを探してみるのも良いかもしれない。