▲トラックの派生モデルで助手席側がスライドドアとなった1964年登場のキャブライト ライトバン。この後、1BOXタイプではスライドドアが主流になった。なお、写真は1150コーチ ▲トラックの派生モデルで助手席側がスライドドアとなった1964年登場のキャブライト ライトバン。この後、1BOXタイプではスライドドアが主流になった。なお、写真は1150コーチ

セレナ&MPVがスライドドア人気の火付け役に!

今やミニバンでは当たり前の装備となっているスライドドア。一般的なヒンジ式ドアに比べて振り出し幅が少ないため狭い駐車場でも隣の車を気にしなくていい、子供も乗り込みやすいなどのメリットがあります。便利なスライドドアはいったいいつから採用されるようになったかご存知ですか?

国産車で初めてスライドドアが採用されたのは1964年に登場したダットサン キャブライト ライトバンでした。片側(助手席側)をスライドドアにした利便性が評判になり、その後登場した初代マツダ ボンゴ(1966年)や初代トヨタ ハイエース(1967年)など、1BOXカー(キャブオーバー)を中心に採用されていきます。

両側スライドドアを初採用した乗用車は1982年に登場した初代日産 プレーリー。なんとプレーリーは両側ともセンターピラーをなくし、大開放ドアを売りにしたのです。ただし当時の技術ではまだ剛性面で課題があったのでしょう。2代目からはセンターピラーを備えた構造になりました。

ミニバンに両側スライドドアを普及させるキッカケとなったのは1999年デビューの日産 セレナ(2代目)とマツダ MPV(2代目)の登場でしょう。室内が広く使えるハイト系ミニバンに両側スライドドアを採用したことで、「利便性が高まった」と大歓迎されます。

当時はヒンジ式ドアを採用するミニバンも多かったのですが、流れは一気にスライドドアへと傾きます。スライドドアじゃないミニバンは販売面で苦戦を強いられ、後に日産は「ミニバン全車種をスライドドアにする」と宣言したほどです。現在、国産ミニバンでヒンジ式ドアを採用している国産ミニバンはトヨタ ウィッシュ、ホンダ ジェイド、スバル エクシーガなど、ごくわずかとなりました。

爆発的なスライドドア人気はミニバン以外にも波及します。トヨタは1997年にラウムで両側スライドドアを採用していましたが、2004年には運転席側をヒンジ式ドア、助手席側を大開口のスライドドアにしたポルテを発売。2006年には三菱がeKワゴン(2代目)にスライドドア搭載グレードを設定しました。翌2007年にはダイハツから助手席側のスライドドアにピラーを内蔵したタント(2代目)が登場します。

現在、スライドドアは電動開閉式が当たり前。グリップについたボタンを押すだけで解錠―開扉できるタイプも登場しています。また登場時は機構上難しかったスライドドアの窓開閉も今では当たり前になっています。今後どんな進化をしてゆくのか、楽しみですね。

▲まだ日本でミニバンという言葉が使われていなかった1982年に3列シート、両側ピラーレススライドドアで登場した日産 プレーリー(初代)。両側スライドドアは2代目、そして後継モデルのリバティへと受け継がれた ▲まだ日本でミニバンという言葉が使われていなかった1982年に3列シート、両側ピラーレススライドドアで登場した日産 プレーリー(初代)。両側スライドドアは2代目、そして後継モデルのリバティへと受け継がれた
▲ヒンジ式ドアだった初代から一転、両側スライドドアとなったマツダ MPV(2代目)。スタイリッシュなデザインがウケ、ロングセラーモデルになった ▲ヒンジ式ドアだった初代から一転、両側スライドドアとなったマツダ MPV(2代目)。スタイリッシュなデザインがウケ、ロングセラーモデルになった
▲スライドドアの軽自動車といえば1BOXタイプだったがダイハツ タント(2代目)はピラーレス構造のスライドドアを採用し大ヒット。なお、写真はタントカスタム ▲スライドドアの軽自動車といえば1BOXタイプだったがダイハツ タント(2代目)はピラーレス構造のスライドドアを採用し大ヒット。なお、写真はタントカスタム
text/高橋 満(BRIDGE MAN) photo/日産、マツダ、ダイハツ