ザガート製ボディをまとった特別なフラミニア ランチア フラミニア スポルト ザガート
カテゴリー: クルマ
タグ: EDGEが効いている / VINTAGE EDGE
2015/05/11
※徳大寺有恒氏は2014年11月7日に他界されました。日本の自動車業界へ多大な貢献をされた氏の功績を記録し、その知見を後世に伝えるべく、この記事は、約5年にわたり氏に監修いただいた連載「VINTAGE EDGE」をWEB用に再構成し掲載したものです。
いまだに上品さを忘れないランチアの姿勢がいい
松本 巨匠は確かランチアという自動車メーカーはお好きでしたよね。
徳大寺 うん、とても好きな自動車会社のひとつだな。ランチアというメーカーはいまだに上品さを忘れていない。自動車には大切なことだからね。
松本 今日はそのランチアが元気だったころの車ですから、楽しみですね。
徳大寺 ランチアの黄金期は本来ならば20~30年代なのだろうが、僕の年代では、やはり50年代に登場したアウレリアGTだな。最高のロードホールディングと、あのピニンファリーナの美しいスタイルは、もっとも好きな1台だ。ランチアのアウレリアは初めて“GT”という名を世に出したモデルだからね。
松本 巨匠はアウレリアお好きですよね。今日はそのアウレリアの後継車として作られたフラミニアをベースに、さらにスポーティに仕上げたフラミニア ザガートGT スーパースポルトです。フラミニアは基本的にはアウレリアのメカニズムを踏襲していますが、エンジンは同じV型6気筒でも別物で、OHVのアルミヘッドも変更箇所があるらしいです。
徳大寺 それはそうだろう。出力も違うし、確かアウレリアのV6は2.5Lぐらいが限界だったはずだ。しかも初めは1.8Lぐらいからだから無理もない
松本 そのようですね。フラミニアは2.8Lで、しかも今見ているモデルは“ザガート”ボディですから軽量で低重心、空力も抜群です。
徳大寺 ザガートはもともと飛行機屋さんだから空力と軽量にはノウハウがあったからね。このモデルはアウレリアの後継モデルなんだろう?だったらトランスアクスルだ。
松本 そうなんです。前後の重量バランスを見込んでの設計はスポーツカーのお手本のようなモデルです。
徳大寺 しかもリアはインボードタイプのブレーキだ。このタイプは調整やメンテナンスが大変そうだな。
松本 トランスアクスルでインボード式のディスクブレーキですから最新のメカニズムと言えるでしょうね。以前、ミラノにあるカロッツェリア・ザガートに行ったときキレイなフラミニア・ザガートがあって、今回のようなコンペティティブなモデルではないのですが、ノーマルも美しいと思いました。
徳大寺 ランチアという車は本当にエレガントなんだ。そのフラミニアはひょっとしてマルチェロ・マストロヤンニ(20世紀のイタリアを代表する映画俳優)の所有していたモデルではなかったか? 彼はとても趣味がいい。
松本 そうなんですよ。もっともオリジナルの茄子紺ではなくブルーにグリーンを混ぜたような色でした。ちょうどミニカーを作るとかいって寸法を測っていましたね。
徳大寺 そりゃ相当程度がいいんだろうな。
松本 フラミニアはあまりコンペティティブな印象がありませんが、実際見るとオーラはありますね。
徳大寺 いま見ているコンペティティブなフラミニア・ザガートも迫力があっていい。しかもレーシングヒストリーがしっかりとついているらしいじゃないか。古い車はヒストリーが大切なんだ。日本のエンスージャストもその辺りも考えて車選びをするといいと思うよ。
松本 そうですね。たどった歴史も車の歴史ですからね。
徳大寺 ランチアはバンパーを取り外してロールケージを取り付けても上品だと思わないか。
松本 ええ。大人の乗り物ですね。
徳大寺 しかしフラミニア・ザガートをここまでするには一日じゃできないぞ。何年もかかって車を作ってきたんだ。このキャレロのフォグランプもなんともいいじゃないか。赤いボディに黄色いランプはよく似合う。
松本 パーツは良いものを使っていますね。ボンネットを留めるピンはフェラーリGTOなどの名だたるコンペティションモデルに使われたモノが付いています。
徳大寺 本気な感じがする。インテリアも雰囲気がいいし。スイッチ類のダイモのインデックスも、ハルダ製のツイントリップもカッコイイ。
松本 レトロフィットで取り付けられたメーター類もなかなか趣味がいいですね。こういうのはお金をかけただけじゃ作れませんね。センスが必要です。
徳大寺 全くその通り。でもこういうのを作っていくというのもヴィンテージカーの楽しみのひとつと思うな。
【SPECIFICATIONS】
■全長×全幅×全高:4160×1630×1300(mm)
■車両重量:1190kg
■ホイールベース:2520mm
■エンジン:V型6気筒SOHC
■総排気量:2458cc
車両協力
※カーセンサーEDGE 2009年9月号(2009年9月10日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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