(特にMTモデルに)乗れば5秒でわかる、ルノー車の滋味

自動車変態向けに特化する(?)という大英断

「水を得た魚のよう」という言葉がある。辞書によれば「その人に合った場で生き生きと活躍する様子のたとえ」との意味だが、近年のルノー・ジャポンはまさにそれである。一般的にはウケなさそうな個性派モデルをあえて正規輸入するだけでなく、日本では好まれないMT仕様も積極的に導入。結果、一部自動車マニアの心をがっちりつかみ、ニッポンの趣味的自動車界のなかで確固たる地位を築くに至った。

約20年前のルノーは決してこうではなかった。筆者の独自情報網を駆使した取材によれば、当時のルノー・ジャポンは当時のメガーヌ(初代)により本気で “打倒VWゴルフ”を目論んだようだ。で、打倒ゴルフあるいは「ゴルフに比肩」ぐらいになったあかつきには、日本におけるフォルクスワーゲン的な存在、すなわち売れ筋モデルをガンガン出し、それをガンガン売るという、そんな存在を目指すつもりだったのだ。

……完全に寝言である。いや、初代メガーヌの品質ウンヌンの話ではない(実際、初代メガーヌはいい車だった)。そうではなく、日本の市場性というか日本人の趣味嗜好というか、そういった観点から、フランス車は日本ではメインストリームにはなりづらいのである。なのに、勘違いしてメインストリームを目指した当時のルノーの販売台数がウルトラ低迷したのは、必然だった。

しかしここ数年、ルノー・ジャポンは冒頭のとおりの個性派MTモデルを開き直ったかのように続々と正規輸入。それらは当然、販売台数的に“打倒ゴルフ”などできるわけもない。しかし、いつの時代も確実にいる“フランス車を好みそうな人”の心をバッチリつかむことで、スモールビジネスを立派に成り立たせている。

最近のルノーに興味を持った人よ、ぜひ一度試乗を!(MT車に!)

ルノーはフランス本国では押しも押されぬ巨大自動車メーカーなわけだが(何せ、もともとは“ルノー公団”であり、現在はご承知のとおり日産自動車の親会社だ)、日本では「ヘンな車を少量売るメーカー」として認知されることに、ルノーの中の人としては忸怩たる思いもあるかもしれない。が、筆者は現在のやり方こそ正解であると思うし、日本でルノーが生きるすべはそれしかないと、個人的には確信している。

思えばルノーは、いつの時代もいい車を輸入していた。が、売れなかった。「わかりやすいおしゃれ感があるプジョー」と「変わり者として有名なシトロエン」の間で、「なんだかよくわからないブランド」としてしか、一般的には扱われなかった。デザインも、日本人からすると難解だった。「……乗れば、その良さがわかるのに!」と常々思っていた筆者だが、乗る人はあまりいなかった。

が、ここへきての小規模な大躍進により、「ルノーかぁ……実際どうなんだろうな?」と興味を持ち始めた人も多いはずだ。そんな人に今、あらためて申し上げたい。「乗れば、その良さがわかりますよ!」と。

まぁ正直AT仕様だとビミョーにわかりにくい可能性もあるので、オススメは絶対に本国同様のMT仕様である。それに乗ってみれば「あ、なるほど」と、筆者が言っていることが5秒でわかっていただけるはずだ。

ということで、今回の伊達セレクションはずばり「最近のルノーのMTモデル」だ!

11年に登場した現行メガーヌのスポーツグレード「ルノースポール」。世界最速のFF車かどうかはさておき、世界最速級FF車であることは間違いない!

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こちらは旧型ルーテシアのルノースポール。昨年9月に登場した現行型はこれよりさらに超絶だが、旧型ルノースポールも十分以上に超絶。不満はないはず!

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可愛らしいフルゴネットとしておなじみの旧型カングーは、実は並々ならぬハンドリングマシンでもある。現行カングーにも先ごろMT仕様が登場しました

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1.6Lエンジンを搭載するコンパクトなクーペ・カブリオレ、ウインド。正規輸入は左ハンドル+5MTのみという漢の決断。偉いぞルノー・ジャポン!

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【伊達軍曹 Sergeant DATE】東京都杉並区出身の輸入中古車研究家。外資系消費財メーカー本社勤務の後、出版業界に。現在は「輸入中古車は、その価格にかかわらず素晴しい!」との見方を核とする輸入中古車研究家として各誌で活躍。雑誌「カーセンサーEDGE」では「中古車相場 威力偵察隊」を連載中

【伊達軍曹 Sergeant DATE】東京都杉並区出身の輸入中古車研究家。外資系消費財メーカー本社勤務の後、出版業界に。現在は「輸入中古車は、その価格にかかわらず素晴しい!」との見方を核とする輸入中古車研究家として各誌で活躍。雑誌「カーセンサーEDGE」では「中古車相場 威力偵察隊」を連載中

文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE