【伊達セレクション】異端の中古車評論家・伊達軍曹、絶滅危惧種について考える
カテゴリー: クルマ
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2014/06/10
「佳作以上・名作未満」な車は絶滅するしかないのか?
いわゆる名車以外は順調に絶滅するという現実
例えば1960年代に活躍したジャガー Eタイプはもはや50年落ちクラスの大中古車なわけだが、「古いからもういらないよね」ということには決してならず、世界的な名車として永遠の価値と市場を持ち続ける。
しかし微妙なのは「いい車なのは間違いないけど、“世界的な名車”ってほどではないよね」という車たちだ。そういったモデルは時の流れとともにどんどん流通量を減らし、あるとき絶滅してしまう。
例えばプジョー205だ。1980年代前半から90年代初頭にかけて活躍した205は、ナイスなデザインとクイックなハンドリングを誇るステキなコンパクトカーであることは間違いない。しかし「じゃあ博物館で永久保存したり、常に高値で売買したいほどの世界的名車か?」と言われれば微妙なため、その中古車流通量は年々減り続けている。本稿執筆時点でのカーセンサーnet掲載数は、ハッチバックとカブリオレを合わせてわずか3台。あと数年で絶滅しそうな勢いだ。
同様にローバーのMGFなども小気味良くステキなミッドシップロードスターだが、「しょせんはFFコンポーネントの流用」「エンジン縦置きじゃないし」という部分があるため名車的付加価値は生まれず、最近では一部のショップが細々と扱っているのみである。その掲載数は現時点で11台のみと寂しいものだ。
このような「佳作以上・名車未満」な車は多数あると思われるが、筆者が考えるそれは前述のプジョー205とローバーMGFに加えて「プジョー406スポーツ」「プジョー306カブリオレ」「スマートロードスター」である。どれもワン・アンド・オンリーな乗り味を誇るナイスな車だが、博物館級の価値は持たないため日々流通量を減らし続け、そのうち絶滅してしまうのだろう。まぁスマートロードスターは珍車として一部で長~く愛される可能性もあるが。
低評価なことを逆手にとって格安購入したい
こういったモデル群を、世の中の自然な流れに任せて絶滅させてしまうのもひとつの考え方ではある。しかし個人的に思うのは「やはり惜しい」ということだ。
例えばプジョー306カブリオレなどは、近年のクーペ・カブリオレでは絶対に味わうことのできない「ある程度切り立った(=開放感の強い)Aピラー」「往年のフランス車の味わいを今に残すソフトなシート」などの強烈な魅力がたくさんあり、このまま現役引退~鉄クズというありがちなコースを歩ませるのはあまりに惜しい逸材である。
とはいえ世の中のモメンタム(勢い)というのはなかなか強力で不可逆的であるため、306カブリオレも、今すぐにではないが、結局は絶滅の道を歩むのだろう。残念だが致し方のない話である。諸行無常である。
われわれ中古車愛好家にできることといえば、せめて絶滅する前にそれを購入し、数ヵ月から数年間、「最後の時」を共に過ごすことだけだ。幸いにしてというか何というか、世界的な名車扱いではないため、その中古車プライスはあくまで庶民的。その気になれば明日にでも買える。
ということで今回の伊達セレクションはずばり「今すぐ買いたい、佳作以上・名作未満な絶滅危惧種」だ!
記事執筆時点でカブリオレを入れても3台しか掲載がないプジョー205。一部好事家は半永久的に維持するのだろうが、市場からは今後数年間で絶滅しそう
プラス200ccのエンジンと左ハンドル+5MTというパッケージでマニアには人気のプジョー406スポーツだが、こちらも執筆時の掲載台数は3台のみ
ステキなロードスターではあるのだが、「名車」とされるほどの資質ではないため絶滅傾向にあるMGF。現在の中古車相場は20万~50万円ほどだ
【伊達軍曹 Sergeant DATE】東京都杉並区出身の輸入中古車研究家。外資系消費財メーカー本社勤務の後、出版業界に。現在は「輸入中古車は、その価格にかかわらず素晴しい!」との見方を核とする輸入中古車研究家として各誌で活躍。雑誌「カーセンサーEDGE」では「中古車相場 威力偵察隊」を連載中