▲7月11~12日に行われた「GAZOOレーシング 86/BRZレース第4戦」に参戦した山崎武司さん。今回はレーサーとして2年目のシーズンを迎えたことを中心にお話しいただきました▲7月11~12日に行われた「GAZOOレーシング 86/BRZレース第4戦」に参戦した山崎武司さん。今回はレーサーとして2年目のシーズンを迎えたことを中心にお話しいただきました

キャリアの浅さをメンタルでカバー。2戦連続で決勝に進出!

ホームラン王に2度輝いた元プロ野球選手の山崎武司さんが、レーサーとして2年目のシーズンを迎えました。今季は「GAZOOレーシング 86/BRZレース」に参戦し、6月6~7日に富士スピードウェイで行われた第3戦、7月11~12日に行われたスポーツランドSUGOで行われた第4戦に出場しています。

今回は山崎さんに1年目と2年目での自身の違いや7月のレース当日の感想などを中心にお話を伺ってきました。

1年目との違いは「余裕ができたこと」

―7月11~12日に行われた「GAZOOレーシング 86/BRZレース」第4戦での結果について、どういった印象ですか?

山崎:正直、あまりいい結果ではなかった(決勝ラウンドで完走28人中27位)ので、一言で言えば「勝負にならなかった」という感想でした。

―言いづらいかもしれませんが、敗因みたいなものというのは?

山崎:僕の弱点でもありますが、やっぱりウェイトのハンディが大きかったかもしれません。スポーツランドSUGOはアップダウンがキツいコースレイアウトだったのですが、上りの勾配になると、そこでウェイト差は出てしまいやすかったです。自分の中で一つ一つドライビングテクニックがわかってきたつもりでしたが、周りと比べるとまだまだでした。

―山崎さんはプロ野球界を引退されて、昨年レーサーとしてデビューしました。今年は2年目のシーズンを迎えたわけですが、自分の中で1年目と違う点はありますか?

山崎:昨年と比べると、「少し慣れたかな」という感じはありますね。例えば「これくらいのスピードでハンドルをここまで切ってしまったら、車はどうなるか?」とか、「これ以上、無理をするとスピンしてしまうから、気を付けよう」とイメージできるようになりました。

―前回、お話を伺ったときは「頭の中が白くなっていく感覚がたまらない」とおっしゃっていましたが、今でもそういうことはありますか?

山崎:確かにありますが、(1年目だった)昨年よりは減りましたね。多分、レースに慣れてきたというところが大きいと思います。もちろん、一生懸命にやってはいますが、今の自分の限界がどこかっていうのもわかってきたし、ヘンに無理をしなくなったと思います。

ただ、いつも10のチカラを出している人よりも、8~9分くらい、少し余裕をもって走れる人の方が好成績を収める傾向はありますね。スポーツをやっている人ならなんとなくわかるかもしれませんが……。

―野球とも通ずるところがありましたか?

山崎:ありました。僕はバッターだったので、相手ピッチャーが投じる球を待つじゃないですか? ピッチャーがキャッチャーのサインを見てボールを投げるモーションからインパクトの瞬間までの数十秒は最大限に集中しますが、それまでは少しリラックスします。そうしないと集中力が保てないんです。

だから、僕なんかはピッチャーがボールを投じるまでの間があまりにも長い時はいったんタイムを取って、集中力をキープするようにしていました。

レーサーとして、最も大切なことは“事故なく帰ってくること”

―第4戦のレース前、ご自身の中で何か意気込みのようなものはありましたか?

山崎:このレースで僕は初めて宮城県で走ったんです。僕が東北楽天ゴールデンイーグルスに在籍していた頃(2005~2011年)に応援してくれたファンの人たちに元気な姿を見せられればいいなと思っていたし、僕自身、レースをする目的のひとつに「レースを通じて、東北の皆さんに何か貢献できないかな」と思っていたところもありました。震災遺児の子供たちに寄付をという思いもあり、特別なものがありました。

―素敵な思いだと思います。では、山崎さんみたいにレースをしてみたいと思われている方に向けてアドバイスなどありますか?

山崎:そうですね……。「好奇心でもいいから、やってみる」という気持ちが大切ですね。正直、レースはそう簡単に始められるものではないと思います。最近はレンタルカートを貸してくれて走ることのできるコースも増えてきているので、まずはそこで走ってみるのもいいかもしれません。何事もやってみないとわからないですから。実際やってみて、自分に向いているか否かを決めればいいと思います。

―山崎さんが思う、「レースで一番大切なもの」って何ですか?

山崎:一番大事なことは、やはり「事故せずに帰ってくること」でしょう。スポーツをしていてケガして死ぬことなんてあまりありませんが、レースの場合は事故で死んでしまうこともあります。だからこそ無事にゴールすることが大切です。

そして、そんなレースの中で自分をいかに律することができるか、先を見据えて走れるかも重要。行き当たりばったりでは絶対にダメですね。そう考えると、肉体的なことよりも精神的なことの方が大事だと思います。

―富士スピードウェイで行われた「GAZOOレーシング 86/BRZレース第7戦」では決勝Bレースに出走し、見事4位入賞となりました。おめでとうございます!

山崎:ありがとうございます(笑)。

―レースはいかがでしたか?

山崎:そうですね……。今回は初めて表彰台を意識してレースに挑んだので、いつもならミスをしないスタートでミスをしました。久しぶりに「打たなきゃいけない大事な時に打てない」という野球選手時代のミスを思い出しましたね。これまでで最も勝負として競ったレースで、冷静さを失ったりもしましたが、結果として息はあがったし大汗もかいて、とても緊張感がありました。

―レース中は、手ごたえを感じましたか?

山崎:手ごたえというのは、そこまでなかったですね(苦笑)。勝負が競ってくればくるほど、メンタルも体もきつくなってくる。初めての上位争い、レベルが高い相手とのやりとりは苦しかったです。

―なるほど。では、最後に11月の最終レースへの意気込みを聞かせてください。

山崎:今回のレースでの反省やミスをふまえて、同じことをしないことがまずは大事かなと思います。そして、今回の結果よりも上に行きたいと思うので、自分ができる最大限の努力をして上位を狙っていきたいですね!

▲集まったファンとの交流を大切にする山崎さん。仙台市内を歩いていると、「お久しぶりです!」とプロ野球選手時代を知るファンから声をかけられることもあるそうです▲集まったファンとの交流を大切にする山崎さん。仙台市内を歩いていると、「お久しぶりです!」とプロ野球選手時代を知るファンから声をかけられることもあるそうです