▲9月某日に取材の機会を得た自動車イベント「ゆーるピアンミーティング」。レポート記事第2弾では、参加していた若者たちとその愛車について紹介する▲9月某日に取材の機会を得た自動車イベント「ゆーるピアンミーティング」。レポート記事第2弾では、参加していた若者たちとその愛車について紹介する

初代パンダを選んだのは「ただただ好きだから」という3人

20代前半の若者たちが中心となって開催されている、参加者の年齢も車種も車の年代もいっさい不問の自動車イベント「ゆーるピアンミーティング」。

それが今、若き車好きたちの間でけっこうな人気を集めているということ。そして主催者たちはどんな人で、何を考えているのか? ということは、前回の記事でお伝えした。


今回は「じゃあ実際、どんな若衆がどんな車でもってゆーるピアンミーティングに参加しているのか?」という点に絞ってお伝えしよう。

まずはこちら、イタリアの初代フィアット パンダが大好きな19歳から28歳までの青年たち。

Photo:早川佳郎

ボンネットの塗装に年季が入ってしまっている95年式CLXにお乗りの佐藤裕大さん(写真中央)こそ28歳の大学院生(博士課程)だが、黒の95年式CLXに乗る高橋明寛さん(写真左)は21歳で、青い95年式CLXに乗る石原岳波さん(写真右)に至ってはまだ19歳の大学生だ。

そんなお若い人々がなぜ、言わば「古くさいイタリア車」をわざわざ選んだのか?

▲こちらは、佐藤さんのCLX ▲こちらは、佐藤さんのCLX
▲左が石原さん、右が高橋さんのCLX ▲左が石原さん、右が高橋さんのCLX

「まぁカッコいいと感じた……ということに尽きますよね。ちなみにこのパンダ、25万円です(笑)」(高橋さん)

「母がこれのセレクタ(CVT仕様)に乗っていたからでしょうか、気づいたら僕もパンダが好きになっていました。購入価格は98万円で、いわゆる親ローンです」(石原さん)

「20歳ぐらいの時に買いましたので、もう7~8年は乗ってますね。シンプルかつ実用的でありながら洒落てもいる内外装デザインに引き込まれて、以来ずっと大好きです」(佐藤さん)


お三方とも、もちろんいろいろ細かいことも考えてらっしゃるのだろうが、基本的には「なぜこれを選んだかと言われましても、『好きだから』『イイと思ったから』以外にはお答えしようが……」的なニュアンスだった。

うん、確かにそのとおりだ。考えてみれば、車を選ぶのにそれ以外の理由なんて特には必要ない。

「愛車はカニ目、足グルマがムルティプラ」な24歳

お次は、前回の「そもそも編」で車両の写真のみ登場した、59年式オースチン ヒーレー スプライトにお乗りの松本健吾さん。御尊父が営む会計事務所で働いているという24歳だ。

とはいえ「350万円でした」というカニ目(ヒーレースプライト)を24歳の若衆がポロッと買えるものなのか? やっぱり会計士であるお父さんに買ってもらったのだろうか?

「いえいえ、自分のお金で買いましたよ。子供の頃から本当に車が大好きで、いつかステキなやつを買おうと思っていましたので、地道に貯金を続けてたんです」

なんとまぁしっかりとした……。筆者が24歳だった頃のボンクラぶりとは天と地ほどに違う。世代の差か「個体差」かはわからないが。

購入後しばらくは「コンビニにもカニ目で行く」という状態だった松本さんだが、最近はさすがに週末などのみの稼働にとどめ、普段は今年2月に買った中古の足グルマに乗っているとのこと。

で、聞けばその足グルマは前期型のフィアット ムルティプラ(超個性的なデザインと、見た目からはイメージできないほどの走りの良さが魅力のイタリア製MPV)だという。

……松本くん、いや松本さん、あなた本当にシブい24歳ですね! ぜんぜんお世辞ではなく!

Photo:早川佳郎

高額塗装に見えるマットブラックも実は「缶スプレー」!

しかしここまでにご紹介した「初代フィアット パンダ」と「オースチン ヒーレー スプライト」には、「古くてシブくてカワイイ」という意味での共通点があるため、同じミーティング会場に並んでいるのも理解できる。

しかしこの場合はどうなんだろうか?

Photo:早川佳郎

海外セレブご用達の「マットブラック」に塗装された08年式アウディ A4 1.8TFSIに乗る、大変失礼ながらちょっとコワモテな感じの青年。

取材を申し込んで「……あ?」とか凄まれたらどうしようとの不安も抱えつつ、声をかけた。あの~、このマットブラックはいわゆるラッピングですか?

「や、塗装です。しかも僕が缶スプレーで塗ったんですよ(笑)」

思いがけず……と言っては度々失礼だが、そう爽やかに答えてくれたのがA4のオーナー、通称「John」さんだ。こちらも24歳だという。

「板金塗装関係の仕事をしているわけではないのですが、120番から600番の耐水ペーパーで足付け(元の塗装を剥いで、塗料が乗りやすくする作業)をして、ホームセンターで買った激安缶スプレーでマットブラックにしたんです。丸3日かかりましたが(笑)」

同じくマットブラックに塗装されたOZレーシングのホイール(かなり高級なイタリア物です)も、実はネットオークションを通じて格安購入したもの。ガリガリに傷が入っていたリム部分を修復したうえで足付けし、前述の缶スプレーで塗ったのだという。

「そういう作業をするのは楽しいですし、僕、ヒマにしてるのが嫌なんですよね。だから本業(会社員)の他にも3つ仕事を持っていて、1日16時間ぐらいは働いてるんです」

見た目はちょっとコワモテ(三度目失礼)なJohnさんだが、その中身はイマドキの若者におおむね共通する「礼儀正しく快活で、今のおじさん世代が若者だった頃よりよっぽど優秀でマジメ」というニュアンスを絵に描いたような、そして車が大好きな青年であった。

Photo:早川佳郎

……ということで個性派ぞろいのゆーるピアンミーティング参加者レポート、次回に続きます!

text/伊達軍曹
photo/早川佳郎