多くの設計士に無理と言われながらもビルトインにこだわる

広さや豪華さばかりを求めがちだが、ガレージへの想いは人それぞれあるもの。ソアラに乗り続けるAさんがこだわったのは屋内であることだった。

無理難題をかなえた気鋭の若手建築家

訪れた場所は東京世田谷区。周囲は古くからの高級住宅街で、歴史を感じさせる建物と最新の住宅が混在する街並みが特徴だ。

施主のAさん夫妻は、お二人とも大阪出身ということで明るく気さく。夫妻の掛け合いが面白く、取材終了まで笑いが絶えない楽しい時間となった。そんなAさんが自邸を新築する際の絶対条件は、駐車場が屋内にあること。

「最初は分譲の一戸建てを探しましたが、一般的な金額だと(屋内駐車場は)あまりないんです。じゃ、建てるか…と。でも、結局高くなってしまい、だったら高額な分譲建て売りが買えたじゃん、と(笑)」

そうコミカルに語るAさんだが、じつは時間と労を惜しまずに、希望をかなえてくれる設計士を探した。

「最初はハウスメーカーを訪れましたが、やっぱり我々のニーズにかなう提案はないんです。今の土地ではビルトインガレージはあきらめろ…とすべて断られました」

そんななか、ひとりの建築家だけがAさんの希望を実現する提案をしてくれた。伊藤潤一さんである。伊藤さんは世界的な建築家シーザー・ペリ氏に師事し、マンダリンオリエンタルホテルなどが入る日本橋三井タワーをはじめ、高層建築から住宅まで幅広いカテゴリーで活躍をしている気鋭の若手建築家だ。

世田谷A邸
建築家:伊藤潤一

tel.03-3488-5226
E-mail.info@ito-jun.com
http://ito-jun.com/
所在地:東京都世田谷区 主要用途:専用住宅
家族構成:夫婦 構造:木造 規模:地上3階建
敷地面積:89.99㎡ 延床面積:93.93㎡
設計・監理:伊藤潤一建築都市設計事務所/伊藤潤一

文・菊谷 聡 text / KIKUTANI Satoshi
写真・木村 博道 photos / KIMURA Hiromichi
構成・石井 隆 editorial / ISHII Takashi

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家の前面に焦げ茶の木材を使うことで、和モダンなテイストを漂わせている。和の雰囲気と、ガレージに収められたソアラが見事にマッチする

車から確認しやすい位置にコンクリートの目地を設けて、駐車しやすくしている

車が傷つかないようにウレタン素材を壁に貼り、ギリギリに駐める工夫をしている

一般的には建築に使われない、ソアラの内装パネルと同じ素材を玄関のドアに採用している