▲新型ボルボ V60クロスカントリーを本場スウェーデンで試乗したのでその模様をお届けする ▲新型ボルボ V60クロスカントリーを本場スウェーデンで試乗したのでその模様をお届けする

本場スウェーデンだからこそ実感した、ボルボの実力

『ルーレオ(Lulea)』、ボルボのお膝元であるスウェーデン、首都ストックホルムから飛行機で1時間程北上したボスニア湾沿いの場所に、その街はあった。フィンランド国境にも近く、運が良ければオーロラを見られるくらい北極圏に程近い場所なのである。

沖合の大小800個程の島を含み、中世の時代から重要な港町であったらしいが、現在でも鉄鉱石を輸送する重要な港があり、主要産業である鉄鋼業が8万人程の人口を支えている。

冬季は海が凍るため、沖合の島との行き来は氷上を自動車で移動することができる。氷が厚く、砕氷船が待機している程だ。

人気の観光スポットである『ガンメルスタードの教会街』はユネスコ世界遺産にもなっている。

成田からデンマークのコペンハーゲン、スウェーデンのストックホルムと、二度の乗り継ぎを経なければたどり着けない。今回、5日間の行程でもさほど余裕はなかった。

日本との時差は8時間、この季節は15時あたりから朝8時までは薄暗いままだ。海上が凍るほどだから、最低気温もマイナス20~30度あたりと、寒いというより痛いという感覚に近い。

ほぼアイスバーンの道での実力はいかに?

▲ルーレオで、ボルボの新型V60 Cross Country(T5モデル)、V60(T8モデル)の2台を初めて試す機会に恵まれた ▲ルーレオで、ボルボの新型V60 Cross Country(T5モデル)、V60(T8モデル)の2台を初めて試す機会に恵まれた
新型ボルボ V60クロスカントリー
▲中心部から郊外までの往復一般公道を約100kmと、海上を覆う氷上ドライビング ▲中心部から郊外までの往復一般公道を約100kmと、海上を覆う氷上ドライビング

世界各国から自動車関連メディアが集結し、我々日本勢はイタリアチームらと行動をともにした。

現地に到着し試乗プログラムが始まる頃には辺りはすでに暗く、よくわらないまま新型V60クロスカントリーに乗り込み、ナビに従って一般公道に出た。

ほとんどの路面はアイスバーン化しているが、現地の方は慣れているのか結構飛ばしている。

北海道育ちの私は、雪道での運転には慣れていたはず。だが、初めての国で初めての車、辺りは完全に暗く激しい雪。

そのせいで視界は数メートル先がやっと見えるという、極めて悪い状況であることも重なって、出だしは相当に慎重にならざるを得なかった。

▲試乗車のタイヤにはミシュランのスパイク仕様が装着されているが、それでもなかなか止まらない ▲試乗車のタイヤにはミシュランのスパイク仕様が装着されているが、それでもなかなか止まらない

ところがしばらく運転しているうちに、こんな過酷な環境でも安心してコントロールできていることに気づく。

極めて自然に応答する操縦性が、初めての場所での運転の不安を払拭してくれたからだ。ストロークの長さが功を奏しているのか、何より乗り心地の良さにも大変驚かされたのである。

そして一般公道から一転、海の上であるはずの場所は厚い氷に覆われているわけだが、かなり広範囲に整地された特設コースが用意されており、思いっきりアクセルオンしながらコーナーを抜けていくことができた。

▲本来船がくぐる橋の下。ここが川の上だということがわかるだろう ▲本来船がくぐる橋の下。ここが川の上だということがわかるだろう

カウンターを当てながらの限界走行でも、ESC(電子制御の横滑り防止装置)の恩恵でスピンすることはなく、極めて安定していたのには意外だった。

そして仮にESCをオフにしたとしても、それなりにリニアに自然な応答をしてくれる。アクセル、ブレーキ、ハンドルのバランスさえ保っていれば、むしろ限界点がわかりやすくスピンを回避しやすい。(イタリア勢は調子に乗った挙句、スピンアウトして雪に突っ込んでいたけれど……笑)

新型の『V60 Cross Country』は、2LのT5ガソリンエンジンを搭載したクロスオーバーAWDだ。

ちょうど良いサイズのステーションワゴンで、車高がちょっと高め、という絶妙な位置付けは、実用性がかなり高い。

正直、欲しいと思った。今回試乗できなかったディーゼルモデルにも大いに期待したい。

ここ数年ほどで、世界中の数々の賞を総ナメにしてきたボルボ。日本カー・オブ・ザ・イヤーのイヤーカーに2年連続で輝いたのは記憶に新しいと思うが、何より車自体に相当なポテンシャルがある証しだと思う。

SUVのXCシリーズもステーションワゴンのVシリーズも、基本的な走行性能はもちろん、スカンジナビアンデザインの秀逸さがさらに洗練されており、落ち着いたオトナが男女問わずに好みそう。一切の無駄がないのが好感がもてる。

そしてボルボといえば圧倒的な安全性能。決して過剰なスペックではなく、必要性から生まれた性能なのだとわかる。

世界中の自動車メーカーがお手本にするだけのことはあるなと、この国、この街に来て痛感した。さすが、ボルボである。

新型ボルボ V60クロスカントリー
新型ボルボ V60クロスカントリー
新型ボルボ V60クロスカントリー
新型ボルボ V60クロスカントリー
新型ボルボ V60クロスカントリー
text&photo/中兼雅之(EDGE編集長)

※カーセンサーEDGE誌 2/27発売号にも掲載されています