ポルシェ 911▲2019年に発売された8代目となるポルシェ 911。今回は最新911のカレラ4Sに試乗する機会を得た。自動車テクノロジーライター・松本英雄がその様子をレポートする

ポルシェ 911における4WDの歴史

ポルシェ 911は3代目(964型)となった1989年に大幅な改良を行った。そしてこの年に、特別なモデルを除いて、911としては初めてのフルタイム4WDの市販車を提供したのである。

驚くことに、なんと2WDよりも1年早く4WDを発売したのだ。それほど4WDはすでにポルシェ的には完成していたとも思える。

それから8代目(992型)の911である現在まで、964型のカレラ4を含めると6度のアップデートを図っている。
 

ポルシェ 911

そして今回、最新モデルである8代目の「911カレラ4S PDK」に試乗した。

「4S」とは、フルタイム4WD を示す“4”に、ワイドボディとエンジンのパワーアップを図った証しである“S”を組み合わせたものだ。

運が良いことに、私はこれまで歴代のポルシェ 911に試乗する機会を得てきた。その経験から感じることは、この車が年々、成功者の証しのようなステイタス性とラグジュアリーなグランツーリスモを漂わせつつあるということである。

特に7代目(991型)から、ロングツーリングも苦にならないほど快適性が一気に向上した。その中でも「4S」は、十分すぎるパワーをしっかりと路面に伝えて、あらゆる天候でのスタビリティ性を確保していた。
 

ノスタルジーと高性能の両立

ポルシェ 911
ポルシェ 911

今、目の前に用意された8代目のポルシェ 911 カレラ4S。

エクステリアは7代目と比べると少々デコラティブな雰囲気がある。しかし、内装はクリーンかつインフォメーションの計器類の視認性がすこぶる高い。なによりも上品なマテリアル感が、スポーツカーでありながらラグジュアリーなGTを醸し出す。外観は4Sというマッシブなボディであるが、乗り込むととてもエレガントだ。
 

ポルシェ 911

シートを合わせる。911はシートポジションを絶えず低く設定しており、トータルの運動性能をいかに考えているかが理解できる。バックレストとヘッドレストが一体化したスポーツシートは、1974年に登場した2代目(930型)から現在まで変わらない形状だ。一貫したフィロソフィーがすべてに統一されているのだ。
 

ポルシェ 911

エンジンの始動もボタン式ではない。昔ながらのスイッチを時計回りに回してエンジンに火を入れる。位置だってナロー時代から変わっちゃない。エンジン内のピストンは最良の位置で停止しているので、クランキングは極めて短く「キュルッ……ボーン!」というレーシングカーのようだ。

PDKは、ポルシェが耐久レース時に負担を少なくするために開発した、伝達効率の高い2ペダルのトランスミッションだ。走り出しはとてもスムーズ。
 

ポルシェ 911

高出力かつラグジュアリー化する911にふさわしい安定感

元来RRである911は、リアに大きな荷重がかかる。それは加速時にフロントのコンタクトが希薄目になることを意味しているが、ポルシェは長年のノウハウで克服してきた。

しかし、付加価値とともに高まる出力とラグジュアリーな乗り心地も求めると、やはり難しくなる部分もあるようだ。
 

ポルシェ 911

その点、この4Sには長距離も安定したパフォーマンスで走りぬける快適性が備わっている。加速時の直線はもちろん、コーナリングも終始スタビリティは高い。静粛性も向上した。

そして、ダイレクトなハンドリングと安心できるブレーキについては、ポルシェが世界一優れたGTである。細かくコントロールできるブレーキストロークは久しぶりにドライブしても感動する。

8速のPDKも無意味にシフトアップばかり考えずに、効率の良いエンジン回転でのシフトアップ・ダウンを繰り返す。だからこそ、いつでもどこから踏み込んでもスタンバイOKなのである。
 

ポルシェ 911

ゆったりとした大人のドライビングが可能になった911 カレラ4Sであるが、やはり911は助手席に乗せる車ではない。1人で運転を楽しむ、そんな昔から変わらぬエッセンスが宿っている。

成功者の誇張しないスポーツカーが8代目のポルシェ 911であり、その中でも安定感あるドライビングとパフォーマンスを演じるモデルこそ、カレラ4Sなのである。
 

文/松本英雄、写真/篠原晃一

【試乗車 諸元・スペック表】
●カレラ4S PDK

型式 3BA-992L30 最小回転半径 -m
駆動方式 4WD 全長×全幅×全高 4.52m×1.85m×1.3m
ドア数 2 ホイールベース 2.45m
ミッション 8AT 前トレッド/後トレッド 1.59m/1.56m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS 車両重量 1590kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 4名 車両総重量 -kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 -m
マニュアルモード    
標準色

ブラック、ホワイト、レーシングイエロー、ガーズレッド

オプション色

キャララホワイトメタリック、ジェットブラックメタリック、ドロマイトシルバーメタリック、ゲンチアンブルーメタリック、ナイトブルーメタリック、アゲートグレーメタリック、GTシルバーメタリック、アベンチュリングリーンメタリック、カーマインレッド、クレヨン、マイアミブルー、リザードグリーンメタリック、ラバオレンジ

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※諸元・装備情報は一部本国仕様の情報を掲載しております

エンジン型式 DKK 環境対策エンジン -
種類 水平方向6気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 ターボ 燃料タンク容量 64リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 2981cc 燃費(WLTCモード) 9km/L
└市街地:5.7km/L
└郊外:9.6km/L
└高速:11.2km/L
燃費基準達成 -
最高出力 450ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
530(54)/5000
型式 3BA-992L30
駆動方式 4WD
ドア数 2
ミッション 8AT
AI-SHIFT -
4WS
標準色 ブラック、ホワイト、レーシングイエロー、ガーズレッド
オプション色 キャララホワイトメタリック、ジェットブラックメタリック、ドロマイトシルバーメタリック、ゲンチアンブルーメタリック、ナイトブルーメタリック、アゲートグレーメタリック、GTシルバーメタリック、アベンチュリングリーンメタリック、カーマインレッド、クレヨン、マイアミブルー、リザードグリーンメタリック、ラバオレンジ
シート列数 2
乗車定員 4名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
最小回転半径 -m
全長×全幅×
全高
4.52m×1.85m×1.3m
ホイール
ベース
2.45m
前トレッド/
後トレッド
1.59m/1.56m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 1590kg
最大積載量 -kg
車両総重量 -kg
最低地上高 -m
掲載用コメント ※諸元・装備情報は一部本国仕様の情報を掲載しております
エンジン型式 DKK
種類 水平方向6気筒DOHC
過給器 ターボ
可変気筒装置 -
総排気量 2981cc
最高出力 450ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
530(54)/5000
環境対策エンジン -
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 64リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) 9km/L
└市街地:5.7km/L
└郊外: 9.6km/L
└高速: 11.2km/L
燃費基準達成 -
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。