遅れて来た大本命と来なかったかもしれない頂点

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↑大きなタービンでパワーを稼いでいる印象が少し昔のターボ車っぽく、アクセルワークに気を使うTTS(左)初代のイメージを継承しつつ、一般的なクーペのカタチに近づけたことがヒットの理由か。写真は2.0 TFSI クワトロ(右)
2006年の登場以来、世界的に好調なセールスを記録している2代目アウディ TT。ちなみに日本でも2007年に発売されたアウディのおよそ3台に1台がTTであり、驚くべきことにこの半年だとマツダ ロードスターや日産フェアレディZよりも売れている。

その好調を背景に、新しく2つのモデルが追加された。背景に、と書いたのは理由があって、2つのモデルのうちハイパフォーマンスな(そして値段の高い)トップモデルTTSは当初日本導入を見送られる可能性があったそうだ。しかしTTが予想以上に日本マーケットでも売れたことで、めでたく導入の運びとなった。イマドキの日本マーケットでは珍しくイイ話しである。

ただ、ゆえに2008年度の割り当て台数は少なく、左ハンドルに限られる。そんなTTSは従来モデルと同じ直噴2Lターボながら、あちこち手を加えて72馬力アップの272馬力を叩き出している。アウディご自慢の減衰力可変ダンパー「マグネティックライド」も高出力化に伴い強化された専用チューンのものとなり、内装も野球のグローブのようなステッチをもつシートがオプションで用意され高級感をアピールしている。

そしてもう一つ追加導入されたグレードが2.0 TFSI クワトロだ。従来の売れ線だった200馬力仕様のエンジンに待望のクワトロが組み合わされた、ようやくやって来た大本命グレードである。初代は4気筒ターボにクワトロという組み合わせのグレードが一番売れていたのだから、遅れたのが不思議といえば不思議だ。

日本で乗るには2.0 TFSI クワトロがベストバイだ

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↑TTSには専用のシフトノブやアルミのドアシルプレートなども装備される(左)白いヘッドカバーが特別感をアピールするTTSのエンジン。出力特性はターボらしさを感じさせるがCO2排出量や燃費に配慮した最新ユニットだ(右)
最初に乗ったのは2.0 TFSI クワトロ。先に結論を言おう。日本で乗るにはこれがTTのベストバイである。いや、昨今乗ったクルマの中でもベスト3に入る。ターボとは思えないレスポンスとターボらしい十分なパワー、しなやかさとスタビリティを高次元で両立させた足回り、高級感あるもろもろのフィーリング。とにかくクルマのリズムがいい。

もともとTTはFFの2Lターボも3.2のクワトロも基礎点はめちゃくちゃ高かった。FFの方が軽快で、3.2の方は安定感があり、これは好みの問題だったのだが、2.0 TFSI クワトロは両者のいいとこ取りである。

一方のトップモデルTTSだが、せっかくのイイ話に水を差すようで申し訳ない。日本のスピードレンジは、このクルマのリズムに合っていないかもしれない。大きなタービンでパワーを稼いでいる印象が、少し昔のターボ車っぽい。3500回転から上がドーンとパワフルなので、アクセルワークに気を使う。強化された足回りも少々ドタバタする。これはこれで好きな人もいるとは思うが、アウディらしいのは2.0 TFSI クワトロだ。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード TTS クーペ 2.0 TFSI クワトロ
駆動方式 4WD
トランスミッション 6AT
全長×全幅×全高(mm) 4200×1840×1380 4180×1840×1390
ホイールベース(mm) 2465
車両重量(kg) 1470 1400
乗車定員(人) 4
エンジン種類 直4DOHC+ターボ
総排気量(cc) 1984
最高出力[ps/rpm] 272ps/6000rpm 200ps/5100?6000rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 35.7kg-m/2500?5000rpm 28.5kg-m/1700?5000rpm
10・15モード燃費(km/L) 10.8 12.4
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/60
車両本体価格 675.0万円 499.0万円
(Tester/馬弓 良輔(インポートカーセンサー副編集長) Photo/尾形 和美)