アウディA4アバントはミドルクラスワゴンを凌駕する 【試乗by西川淳】
カテゴリー: アウディの試乗レポート
タグ: ステーションワゴン
2008/09/16
新しいドライブトレインがもたらしたプロポーションの良さ
今年初めにデビューしたアウディ久しぶりの本格フル4シーター2ドアクーペであるA5が、FFベースでありながらあれほど美しいプロポーションを手に入れることができたのは、ひとえに新しいドライブトレインのおかげだった。フロントアクスル位置を前方に移動することで、“アゴ出っ張り過ぎ”なFFフォルムから逃れたのみならず、良好な重量バランスと足元空間の自由度も得たから運動性能と快適性の両方をレベルアップすることもできた。
結果、クーペのA5は言うに及ばず、そのあと登場したアウディビジネスの屋台骨、サルーンのA4もDセグメントで最良の選択肢の一つとなったのだ。そして、待望のA4アバント(ステーションワゴン)の登場である。やはり、プロポーションに注目しておきたい。ワゴンと呼ばれることを嫌うアウディらしい、ダイナミックでスポーティなルックスだ。特に真横からの眺めがいいのは、くだんのフロントアクスル位置、つまりは前輪の位置が前進したからである。前後オーバーハング、タイヤ、ホイールベース、ピラーの出発点、収束点、それぞれのバランスがいい。
サルーン同様にサイズアップを果たし、その存在の強さはA6が不要かと思うほど(実際、日本は世界でも数少ない、A6受難の国だ)。全長で+120mm、幅で+55mm、ホイールベースで+165mmとなり、気になるラゲージスペースも標準時+48Lの490L、後席収納時+76Lの1430Lとなるなど、ミッドサイズの本格ステーションワゴンと比較してもそれほど遜色のないスペックだ。えらいのは大型化したものの、重量増が抑えられた点。厳密な比較はできないけれども、同等グレード比では軽くなるというから驚く。現代の自動車において軽量化は最大の課題である。
まずは1.8L直4直噴ターボ+CVTのFFモデル「1.8TFSI」と、3.2LのV6直噴+6ATの4WDモデル「3.2FSIクワトロ」の2グレードが導入された。サルーンと同じラインナップ。FFの1.8TFSIで十分、というのが大筋の見解だが、個人的にはクワトロモデルを推す。
確かに1.8TFSIであっても走りの質感、パフォーマンスは十分だと思うし、何よりあの見栄えの立派さが437万円で手に入るということのお買い得感はライバルを蹴散らすに十分な動機づけになるだろう。それを認めつつもなお、クワトロの走り味の良さをアピールしたい。サルーンの同グレードで気になった街中の突き上げもややマイルドになり、全般的な乗り心地はシリーズ中最良だと思われた。それでいて、高速全域での安定感は保たれたままだから、少なくとも空荷の状態ではよくできたGTカーであると言っていい。想像するに、荷物をテキトーに積めば、さらにしっとりとした走りになるのではないか。そこまで考えると、パフォーマンスに余裕のあるV6で、しかも味つけのいいクワトロが欲しくなるのだった。
長距離ドライブが多い方には絶対にV6クワトロをオススメする。下手をすると、もはやEセグメントワゴンは不要かもしれない。それほどよくできたDセグワゴンである。