日産 グロリア ▲今回紹介するのは旧型7シリーズのトップグレード「760Li」

もはや絶滅寸前の12気筒エンジン

1987年、BMWが4世代前の7シリーズに排気量5Lの12気筒エンジンを搭載したときは、センセーションを巻き起こした。

最高出力300ps、中間加速は同時期のポルシェ 911ターボと互角というパワフルなものだった。

この12気筒エンジンを搭載した、750iならびにロングホイールベース版の750Liは、合わせて4万8000台以上が売れた。

触発されたメルセデス・ベンツも12気筒エンジンの投入を始め、やがてアウディもこの12気筒戦争に加わった。

時代は変わり、エンジンは高効率化、環境性能への要求もあり、どんどん需要は先細りしている。

12気筒モデルは、正真正銘の絶滅危惧車であるのだ。

BMWはいまだに12気筒モデルを現行車種で販売しているが、まだまだ値段は高い。

その点、旧型モデルとなると……新車時価格の15%ほどから狙えてしまう!

まるでスポーツカーのような瞬発力
BMW 7シリーズ 760Li

BMW 7シリーズ ▲新車時価格約2000万円だった760Li。今では200万円台から見つけることができる

排気量を6Lにまで拡大し、ツインターボチャージャーを装着した旧型7シリーズ 760Li。

最高出力は544psで0→100㎞/h加速はわずか4.6秒。全長5mオーバー、車重量2トン強という巨漢で、この速さだった。

高級セダンなのに、スポーツカー並みの瞬発力を有している。

そればかりか、巨漢ぶりをまったく感じさせない軽快な走りを披露する。

BMW 7シリーズ ▲ターボチャージャー搭載の6L V12エンジンは、なんと544psを発揮する!

後輪操舵を連動させた「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」、シャシーやエンジン、DSCなどの制御を複数のモードに切り替えられる「ダイナミック・ドライビング・コントロール」などの進化が目覚ましかった。

はっきり言って、何もかもがTOO MUCH。

760Liを作るにあたっては“必要か否か”ではなく、“できることをすべてつぎ込んでみた”というスタンスだろう。

無駄は悪と捉えられがちだが、無駄こそが贅の極み。

それでいて、あからさまな“ギラツキ”感がないのも面白い。

フロントグリルは若干幅が広くなっている他、「V12」のロゴが各所に控えめに配され、左右2本出しマフラーエンドが他の7シリーズとの“違い”を主張。

ドアを開けるとスカッフプレート上のV12ロゴが透過照明で強調されていて、オーナーに密かなよろこびをもたらすことだろう。

インテリアも基本は、他の7シリーズと変わらないといえば変わらない。

しかし、ダッシュ上面までナッパレザーが張られ、ウォールナットウッドのトリムに象嵌細工が施されている。差別化の演出がとにかく上手いのだ。

BMW 7シリーズ ▲さりげなくV12のロゴがあしらわれている

維持費が高いのはわかるが……一度は味わってみたい世界

中古車ユーザーは堅実で、維持費の高いものを嫌う傾向にあることは重々承知している……。

が、スーパーカー並みのパワーだったり、たっぷりの空気を吸い込んでたっぷりの燃料を燃やして走る背徳感だったり、巨漢がスポーツカー並みに加速していく様は、味わったことのある者にしかわからない世界とも言える。

今回紹介した760Li。同世代の7シリーズの中では、新車時価格が1920万円からと圧倒的に高く、富裕層をはじめとしたごく一部のユーザーのみが所有できたモデルと言えよう。

そのため、販売台数も決して多くはないと推測され、今後劇的に中古車台数が増えることも考えにくい。

いや、むしろ限られた物件が少しづつ中古車市場に放出され、絶滅へと歩みを進めているように見えてならない。

かつて大富豪のみが知り得た世界を味わうなら、今こそがチャンスなのだ。

原稿執筆時点(2019年11月6日)でのカーセンサーnet掲載台数はたった6台にすぎない。

まだ旧型モデルとあって、正規ディーラーの認定中古車も狙えるのは、トラブルが不安な読者には嬉しいはず。

ちょっとでも気になった方は、中古車物件をチェックしてみてほしい!

Photo:BMW
文/古賀貴司(自動車王国)、写真/BMW

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BMW 7シリーズ(2009年3月~2015年9月 生産モデル)×760Li×全国
古賀貴司(こがたかし)

自動車ライター

古賀貴司(自動車王国)

自動車ニュースサイト「自動車王国」を主宰するも、ほとんど更新せずツイッターにいそしんでいる。大学卒業後、都銀に就職するが、車好きが講じて編集プロダクションへ転職。カーセンサー編集部員として約10年を過ごし、現在はフリーランスのライター/翻訳家として活動している。