アウディ A4アバント ▲「比較的最近」と言える2016年3月まで販売された旧型アウディ A4アバントの後期型。写真はアウディ東名川崎が販売する2013年式2.0 TFSIで、車両価格は173.9万円

旧型だが「ブランド物としての破壊力」はいまだ十分

こちらは、雑誌「カーセンサーEDGE」で8年以上続いている自動車評論家MJブロンディさんの長寿連載「EDGEセカンドライン」のB面である。すなわち、なぜかその取材現場に同席している自動車ライター伊達から見た「同じ車の別側面」だ。

第6回目となる今回は、2019年10月26日発売のカーセンサーEDGE 12月号で取材した2013年式アウディ A4アバント 2.0TFSI SEパッケージ(車両本体価格173.9万円/走行2.0万km)のB面をお届けする。

結論から申し上げると「あるひとつの重大な欠点を除けば大変素晴らしく、かなりお買い得な中古車である」というのが、この173.9万円也のアウディ A4アバントであった。

まずは数々の美点から申し上げよう。最初に「ブランド力」のようなものについて。このあたりの要素(ブランドうんぬん)にはこだわらない人もいることは承知しているが、輸入車の場合はなんだかんだ言ってけっこう重要な部分である。

で、この個体は比較的新しい世代のアウディだけあって、ブランド物としての破壊力は「まずまず十分」だ。もちろん2013年式のA4アバントというのは先代、簡単に言えば「1コ前のやつ」なので、破壊力は現行型A4(2016年4月登場)と比べれば少々劣る。

だがそのモデルチェンジは、ことデザインに関しては「キープコンセプト」だったため素人目には先代も現行型もほとんど見分けがつかず、いちおう玄人である筆者も遠目にはたまに見分けがつかなかったりもする。なおかつ取材車両は2012年に行われたマイナーチェンジ以降の「後期型」であるゆえ、全体としてのデザインにはまだまだ十分以上の現役感がある。

口うるさいカーマニアから陰でどう言われるかは知らないが、少なくともご近所さんからは「よくわからないけど高そうで素敵なガイシャ(どうやらアウディとかいうやつらしい)」と見られることは間違いない。また、ご近所さんうんぬんは別として自分自身のメンタルも、そのブランド力には十分満足できるだろう。
 

アウディ A4アバント▲写真ではストロボの関係で少々わかりくいかもしれないが、運転席まわりのコンディションは上々。取材車両は「SEパッケージ」ゆえ手触りもビジュアルも良好なウッドパネルが張られている

走行距離はわずか2.0万km。それゆえ各部のヤレは最小限

この物件の第2の美点は、身も蓋もない言い方だが「売ってるお店の質と、中古車としてのコンディションがよろしい」ということだ。

当個体の販売店はアウディの正規ディーラー。中古車の世界は「正規ディーラー=良、一般販売店=不可」という単純な図式で語ることはできないが、「メーカーの看板を背負ってビジネスをしている正規ディーラーで買う中古車は、なんだかんだ言って安心できる」ということはほぼ間違いない。

そして、当物件は2013年式ということで初度登録から約6年が経過しているわけだが、走行距離はわずか2.0万km。中古車というのはこれまた「低走行=良、多走行=不可」という簡単な線引きができるものでもない。しかし、走行距離1万km台や2万km台までの中古車というのは(特に正規ディーラーが認定中古車として販売しているそれは)、内外装のコンディションがすこぶる良好であるケースがきわめて多い。

そして、この個体もご多分に漏れず内外装の状態はすこぶる良好で、レザーシートなどにほんの少々の使用感(ごくわずかなシワ)が認められる以外は「ほとんど新車みたいなモノ」であると筆者には感じられた。

また、当物件はアウディのいわゆる認定中古車であるため、内外装が美しいだけでなく機関部分や足回りなどについても厳しいチェックを経たうえで店頭に並んでいる。もちろん中古車に「絶対」はないわけだが、「きわめて安心して乗れる可能性が高い1台」と断言することはできるだろう。

また、先ほど「レザーシートなどにほんの少々の使用感が~」と申し上げたが、そもそもこの個体には「SEパッケージ」という上級のパッケージオプションが装着されているのもポイントだ。

この世代のSEパッケージが含むのは、前述のミラノレザーを用いたフルレザーシートとウッドパネル。こういったラグジュアリー系装備は「アウディのステーションワゴン」というキャラクターにはよくマッチしており、逆に言うと「無いと寂しい装備」であるだろう。
 

アウディ A4アバント▲SEパッケージならではの、ミラノレザーを用いたレザーシート。ほんのわずかな使用感はさすがに散見されるが、基本的には「かなりのグッドコンディション」といえるニュアンスだ
アウディ A4アバント▲後席ももちろんミラノレザー。比較的小ぶりなステーションワゴンではあるが、後席の足元スペースは十分以上
アウディ A4アバント▲フルタイム四駆の「A4アバント 2.0TFSIクワトロ」は7速Sトロニックというツインクラッチ式トランスミッションだが、FFの「A4アバント 2.0TFSI」はCVTを採用している

長距離を走るならもはや必須のACCだが、近場中心なら?

以上のとおり「コンディションがすこぶる良好な認定中古車」であり、なおかつ新車時価格458万円以上だったおしゃれ輸入ステーションワゴンの低走行物件が、車両価格わずか173.9万円で狙えるというのは「かなり素晴らしい選択肢」としか言いようがない。

では、冒頭付近で申し上げた「あるひとつの重大な欠点」とは何なのか?

それは、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が付いていないということだ。

今さら説明の必要はないとも思われるが、ACCとは「前方を走っている車に追従して自動的に速度調整や停止作業などを行ってくれるクルーズコントロール」のこと。

これを使用した経験がことがない人は「そんなモノ必要か? なくてもいいんじゃね?」的なことをしばしば言うが、事実はまったく異なる。優秀なACCを使って何度かロングドライブをしてみれば誰もがわかることだが、ACCがあるとないとでは、ロングツーリング時の疲労度は天と地ほどに異なるものだ。

そして、疲労度が変われば「安全に巡航できるかどうか」というのも大きく変わってくるため、長距離を走る機会が多いドライバーにとってACCはもはや「必需品」と表現しても決して大げさではない。

そんなACCが、この個体には付いていない。

そこが、仕事柄長距離を走る機会も多い筆者にとっては、あるいは様々な理由で長距離を走ることが多い人にとっては「重大な欠点」なのである。

しかしそれは、あくまでも「長距離を走る機会が多い人」にとっての欠点でしかない。

例えばの話、東京~御殿場(約100km)を走るのであればACCはあった方が絶対的にラクだが、第三京浜道路と首都高速で玉川インターから横浜のみなとみらいまで(約23km)行くぐらいの使い方であるならば、ACCなどセットする間もなく目的地に到着してしまうものだ。

ステーションワゴンというと自動的に「ロングドライブ」を連想してしまうが、ワゴンを欲する人のすべてが長距離を日常的に走るわけではない。「ちょっとそこまで」が中心なステーションワゴン好きも、世の中にはきっとたくさんいるだろう。

それゆえ、もしもあなたが「長距離系」であるならばこの個体はオススメとは言い難いが、もしもあなたが「ちょっとそこまで系(でもたまに長距離も)」というドライバーであるならば、この認定中古車は「ほぼ欠点のない、すこぶるお買い得な選択肢」ということになるだろう。
 

アウディ A4アバント▲A4アバントのFF版である2.0 TFSIに搭載されるエンジンは最高出力180psの2L直噴4気筒。鬼のようにパワフルなわけではないが、「必要十分以上」という表現がマッチするナイスなエンジンだ
文/伊達軍曹、写真/大子香山
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。