▲写真はジープ グランドチェロキーSRT8に搭載されている6.2LヘミV8エンジン。日本に正規輸入されていないが現代版マッスルカーのダッジ チャージャーSRT8と同じエンジンだ ▲写真はジープ グランドチェロキーSRT8に搭載されている6.2LヘミV8エンジン。日本に正規輸入されていないが現代版マッスルカーのダッジ チャージャーSRT8と同じエンジンだ

「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」をほうふつさせる2台

アメ車といえばV8エンジン。ステレオタイプな発想だけど、多くの人はそう思うわけで。フランスで生まれたV8エンジンは、第一次世界大戦が開戦された1914年にキャデラックに搭載されて以来、アメ車の必須アイテムになった。

しかも、エンジンの吸排気弁機構がSOHC(シングル・オーバーヘッド・カムシャフト)やDOHC(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)へと進化していっても、いまだに古式ゆかしきOHV(オーバー・ヘッド・バルブ)が現役で採用されていたりする。

それがアメ車の哲学だといわれたら致し方ない。

まあ2回の世界大戦を経て経済大国になったアメリカの車は世界中を走り回るようになり、石油の埋蔵量を誰も気にしなかった頃は、ガソリンをガブ飲みするV8の大排気量エンジンはマッスルカーを筆頭に、ある意味「正義」だった。

もうひとつ、アメ車をイメージさせるものにSUVがある。

ピックアップトラックの荷台にシェルを載せた、ジープ ワゴニアやフォード ブロンコなどがアメリカで人気となり、やがて乗用車ベースのレクサス RXやBMW X5がアメリカでバカ売れしたのをきっかけに、世界中にSUVが広まっていった。

大きなボディのSUVは、大排気量のV8エンジンと相性もいい。

こうしたアメ車を象徴するV8エンジンやSUVの繁栄は、トランプ大統領の「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」という魔法の言葉で、アメリカ人の頭の中に蘇る古き良き時代を象徴するいちアイテムなのかもしれない、と思ったりもする。

とはいえ量産ハイブリッドカー生誕の地(トヨタ プリウスが世界初)であり、量産の電気自動車(三菱i-MiEVが世界初)を生んだ日本では、SUVこそ人気だけれど、V8はやはり苦戦する。フォードはいち早く日本を離れた。

V8・OHV、そしてSUV。そんな現行型のアメ車は日本でもう乗れる機会がなくなるかも!?

そうなる前に、アメリカ人が愛するV8・OHVエンジン搭載の現行型SUV2台を紹介したい。

アルファード/ヴェルファイアより迫力がある7・8人乗りSUV
キャデラック エスカレード

▲路面状況を1秒間に最大1000回読み取ってサスペンションを適切に調整。フルサイズの巨艦にも関わらず路面に吸い付くような快適に走りを実現する ▲路面状況を1秒間に最大1000回読み取ってサスペンションを適切に調整。フルサイズの巨艦にも関わらず路面に吸い付くような快適に走りを実現する
▲2列目と3列目シートはボタンを押せば電動で倒れ、最大2666Lという広大なラゲージスペースを生み出すことができる ▲2列目と3列目シートはボタンを押せば電動で倒れ、最大2666Lという広大なラゲージスペースを生み出すことができる

現在大ヒットしているトヨタのラージサイズミニバン、アルファードやヴェルファイアは、その大迫力の顔圧が人気の理由のひとつ。

しかし、今回紹介する現行型キャデラック エスカレードもそれに負けず劣らず。個人的にはバックミラーに映って怖いのはこっちと思うくらいの押し出し感とオーラがある。

全高こそ4cmほど低い1910mmだが、全長5195mm×全幅2065mmはアルヴェルをはるかに凌ぐ。

そこにV8をアメリカに広めたキャデラックの自負からか、6.2LのV8しかもOHVエンジンを搭載。最高出力420ps、最大トルク623N・mを発揮する。

組み合わされるミッションは当初は6速、2017年から8速ATに。4WDシステムを搭載するが、スイッチで2WD/4WDをセレクトできる。

3列シートを備えた7人乗りと8人乗りがあり、ラグジュアリーSUVと自らうたうようにシートを含めインテリアには本革がたっぷり使われている。

また、子供たちがドライブ中に喜びそうな天井に備わる9インチモニターも、BOSEサラウンドシステムも、さらにグレードや年式によってはフロントシートのヘッドレストに埋め込まれた後席用モニターも標準装備。

Apple CarPlayやAndroid Auto機能も追加されるなど、エンタテインメント王国ならではの最新技術もふんだんに奢られている。

中古車を選ぶ際はこのあたりの装備の有無もポイントになりそうだ。

2015年登場時は7人乗りのみで車両本体価格はプレミアムが1149万円、プラチナムが1249万円。2017年にプレミアムが8人乗りとなり、2019年からプラチナムのみとなったが7人乗りと8人乗りが選べるようになった。

原稿執筆時点で見つけた総支払額で最も安いのは、2015年式で約550万円と新車時の半額以下。新車アルヴェルの上位グレードよりも安くなっているのだから、検討の余地は大いにあるのではないだろうか。

▼検索条件

キャデラック エスカレード(3代目)×全国

最高出力468psを発揮するレジェンド・ヘミエンジン
ジープ グランドチェロキーSRT8

▲6.4LのV8に当初は5速AT、2013年末のマイナーチェンジで8速ATとの組み合わせに。いずれも4WDモデルだが太いタイヤを履くなど、オフロードよりはオンロードをズッバーンといくタイプ ▲6.4LのV8に当初は5速AT、2013年末のマイナーチェンジで8速ATとの組み合わせに。いずれも4WDモデルだが太いタイヤを履くなど、オフロードよりはオンロードをズッバーンといくタイプ
▲SRT8は最上級グレードに位置づけられているので、本革シートをはじめインテリアもゴージャス。リアシートにも標準でシートヒーターが備わる。全車右ハンドルなのはうれしいところ ▲SRT8は最上級グレードに位置づけられているので、本革シートをはじめインテリアもゴージャス。リアシートにも標準でシートヒーターが備わる。全車右ハンドルなのはうれしいところ

上記エスカレードよりひと回り小さいが、トヨタ ランドクルーザープラドやBMW X5、メルセデス・ベンツ GLEなどとほぼ同サイズのジープ グランドチェロキー。

ドイツのライバルたちがクリーンディーゼルに移行していく中、グランドチェロキーはいまだにガソリンエンジンを搭載。まあディーゼルを搭載したアメ車の乗用車って、あまり聞いたことがないけれど。

というわけで2011年に日本にやってきたグランドチェロキーも、V6とV8エンジンを搭載している。

中でもこのSRT8と2013年から2017年までのサミット、2017年から加わった怪物トラックホークは伝説のヘミV8エンジンを搭載している。

ヘミエンジンとは、高回転が苦手なOHVの欠点を解消すべく1950年代に開発されたエンジンだ。クライスラーは1960年代に採用し、ダッジ チャージャーなどのマッスルカーを生み出した。

その後も改良が綿々と重ねられ、今も現役で活躍しているレジェンド級のエンジンだ。

しかも現行型グランドチェロキーは、かつてクライスラーが資本関係のあったメルセデス・ベンツのMクラス(現行GLE)と同じプラットフォームが採用されている。

だとしたら、やっぱりアメリカ臭の強い、しかも伝説のヘミV8エンジン搭載モデルを選びたくなる。

SRT8の2011年デビュー当時の車両本体価格は688万円。原稿執筆時点で2014年式が約380万円から見つかる。

▼検索条件

ジープ グランドチェロキー(4代目)×V8・OHVエンジン搭載モデル×全国

ボクら日本人はトランプ大統領の言葉でまず夢を見ないけれど、輝いていた頃のアメリカを知るオッサンや、そのオッサンから聞かされてアメ車に憧れる若い世代もいるだろう。

そういう人々が、当時の車を買ってあえて苦労するのも楽しいと思うけれど、せっかくあまり手間のかからない現行型があるのだから、ぜひ一度乗ってみることをオススメしたい。

文/ぴえいる、写真/キャデラック、ジープ

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はルノーのアヴァンタイムと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。