『ナニコレ!?』たった64台しか生産されなかった、BMWアルピナ B10のアルラット仕様
2019/05/14
カーセンサーnet上には40万台以上の物件が掲載されている。物件チェックを日課とする筆者が、その中から偶然見つけた「なんだこの中古車は!!」という物件を紹介しよう!
かつて名をはせていたBMWチューナー
最近、海外のクラシックカー・オークションの結果を見ていて気づかされるのは、80年台~90年台の“ネオ”クラシックカーの相場上昇だ。
インターネットのおかげで世界の中古車価格がわかる今の時代、日本の中古車相場に影響が及ばないはずもない。
そんなこともあって最近、ネオ・クラシックカーの相場動向に目がいってしまう。
“昔、乗っていた車は今買うとどのくらいかなぁ”なーんてノリで中古車検索をするのも楽しいものだ。
筆者はかつてBMW 5シリーズ(E34型)を2台乗り継いだことがある。
というわけで、5シリーズ(E34型)を眺めていたらやはり最近じわり、じわりと値上がりしている印象を受けた。
そして、「ACシュニッツァー・エアロ」というフレーズが目に留まった。
思い起こせば、当時はACシュニッツァー、レーシング・ダイナミクス、アルピナなどBMWチューナーが名をはせていたなぁ……と連想ゲームを繰り広げ、やがて同時期のアルピナ車の中古車相場を知りたくなり検索。
アルピナはもともとタイプライター・メーカーであったが、創業者の息子がキャブレターのチューニングでアルピナの存在を世に知らしめた。
やがてBMWチューナーから、れっきとした「自動車メーカー」へと躍進を遂げたブランドである。
BMWからホワイトボディが送られ、専用の足回りや内外装、BMWベースのエンジンを組み込むというのがアルピナの手法だ。
ドイツでは、BMWディーラーで保証が受けられるほどの信頼関係が構築されている。
そんなアルピナが手がけた5シリーズ(E34型)、「B10シリーズ」を検索してみたら1台がヒット。
今回紹介する、B10アルラットが検索に引っかかった。
ただでさえレアなB10のアルラット(4WD)
アルピナはE34型5シリーズをベースに、B10 3.5/1(535iをファインチューン)、B10ビ・ターボ(535iをツインターボ化)、B10 3.0アルラット(525iXをファインチューン)、B10 4.0(540iをファインチューン)、B10 4.6(540iをボアアップ)を投入した。
アルピナは過激なチューニングには走らず、あの個性光るエアロを装着していても彼らからすれば“控えめ”に仕上げているつもりなのだ。
それこそBMWのM車よりも上質なグランドツアラーを目指している、というのがアルピナのコンセプトだと常々いわれている。
B10 3.0アルラットは525iX、つまり525iの4WDモデルをベースに仕上げられている。
エンジンの排気量は2.5Lから3Lまで拡大され最高出力は192psから231psへとパワーアップ。
0→100km加速はベース車の8.6秒から7.9秒へとなり、最高速度は230km/hから235km/hとなっている。
劇的なチューニング、というよりも当時のアルピナが思い描いた、5シリーズ(4WD)のグランドツアラー像だったのだろう。
アルピナは自動車メーカーとなった今も職人による手作業を重んじており、年間生産台数は1400台程度。E34型を生産していた頃は、今よりも少ない。
B10 3.0アルラットは、1993年から1995年にかけてたったの64台しか生産されなかった。
前オーナーが大切に扱っていたことがわかる物件
見つけたB10 3.0アルラットは298万円と平均的な525iと比較すると3倍近い値段が付けられている。
どうしても高く感じられてしまうが同時期のM5と比較すれば、もっと値上がりする可能性はあるだろう。
当該中古車、写真を見るかぎり大切に乗られてきたことが感じられる。
ドアの内張りが膨らむのはE34型5シリーズの“持病”といえるが、当該車両はキレイな状態が保たれている。
天井のタレもないようだし、屋根付きガレージに保管されてきたのではないだろうか?
かつてB10シリーズはちらほらカーセンサーnetで見かけたものだが、原稿執筆時点(5月7日)にはこの1台のみ。
現オーナーたちが大事に乗っていることがベストだが、海外へ輸出されてしまった可能性も否めない……。
というのも、日本の車は海外に比べると走行距離が少ないし、車検制度のおかげか状態が良いものが多いとされていて実は世界的に需要がある。
この激レアモデルのB10 3.0アルラットが気になった方は、要チェックだ!
自動車ライター
古賀貴司(自動車王国)
自動車ニュースサイト「自動車王国」を主宰するも、ほとんど更新せずツイッターにいそしんでいる。大学卒業後、都銀に就職するが、車好きが講じて編集プロダクションへ転職。カーセンサー編集部員として約10年を過ごし、現在はフリーランスのライター/翻訳家として活動している。
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