Q.友人に貸した車を勝手に取り返したら窃盗になる?

友人に貸した車。なかなか返してくれなかったので夜中に勝手に持って帰ってきました。すると友人から「いくら所有者とはいえ、勝手に持って行ったのは窃盗だ」との言葉が。そんな馬鹿な話ってあるのでしょうか?

A.本人の承諾なく取り返したら窃盗になります

結論から言うと、あなたが行った行為は窃盗にあたります。自分の財物であっても、他人が占有する物は窃盗の対象とされているからです。車検証の所有者の欄にあなたの名前があったとしても占有者本人(この場合は車を手元に持っている友人)の承諾なく車を引き上げることはできません。さらに、車が保管されている場所が私有地の場合、不法侵入を問われる可能性もあるでしょう。

ちなみに車では珍しいかもしれませんが、家などではよく見られる例があります。それは、家主から退去を命じられたにもかかわらず家に住み続けているというケースです。なぜ認められているのかというと、住んでいるという事実状態が権利として認められ法的に保護されるからです。

それでは、ローンの支払いが滞っても占有権を盾にずっと使用できるのか!? 車でも家でも、もちろんそんなことはありません。車の場合、ローンで購入すると所有権はローン(クレジット)会社にあります。ローンで購入したにもかかわらず支払いをせずに使用し続けた場合は、ローン(クレジット)会社は所有権に基づき、裁判所に申し立ててしかるべき手続きを取るでしょう。結果的に強制執行という形で車は回収されてしまいます。さらに、オートローン(クレジット)契約の契約条項に基き、ローン残金等について年20%以上の遅延損害金を請求されることもあります

本題に戻ると、今回のケースは友人に悪意があるかどうかはわかりません。しかし、あなたには所有権があるので、友人の了承のもとに引上げるか、裁判所に申し立ててしかるべき法的処置を取れば、車を取り返すことはできます
第87回:貸した車を勝手に取り返したら窃盗になるの?|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

占有(せんゆう)
刑法上の占有とは財物を事実上支配することをいう。物がその人の事実上の支配圏内に置かれているとき、支配状態が保護されるので、その物を常に持ったり、監視したりしていなくても、占有は認められる
所有権(しょゆうけん)
法令の制限内で、目的物を自由に使用・収益・処分できる権利。車をローンで購入した場合は、販売店やローン(クレジット)会社に所有権が設定されることが多い。よって購入者=使用者、販売店またはローン(クレジット)会社=所有者といった形になる