Q.希少車と聞いて購入したけれど、近所に同じ車があった

人と同じが嫌いな僕。「希少車です」との言葉が決め手となって契約をしました。しかし、数日後、近所の販売店に同じ車種があるのを発見。納得がいかないので契約を解除したいのですが、可能でしょうか?

A.偶然の可能性もあります。それだけで契約の解除は難しいでしょう

まず、車種が同じでも珍しいグレードだったり、マイナーチェンジによるモデル違いということもあります。そういった意味では、同じ車だからといって、即希少車ではないと判断するのは早計でしょう。では、全く同じグレード、年式の車が近所にあったからといって契約が解除できるのかというと、それも難しいと思われます。なぜなら、偶然の可能性があるからです。

車がどの程度流通していれば希少車といってよいのかは、受け取り方にもよるでしょう。200台流通している車を希少車と思う人もいれば、そう感じない人もいるはずです。200台流通していれば、偶然が起きても不思議ではありません。

ただし、もしその車が巷にあふれているような車なのに、購入者が車に詳しくないことをいいことに、店員が希少車だと騙したのならば話は別です。カーセンサーnetで販売台数を調べて、何千台もあるような車は希少車とは呼べません。このようなケースでは、希少車を求めていた人間に、多数流通しているという事実を伝えなかったということで、「不利益事実の故意の不告知」を理由として契約申し込みを取り消せる可能性があります

とはいえ、車自体に欠陥などがなく、売値も相場くらいであれば、財産的な損害は損害は発生していないことになります。従って、不法行為などに基づく損害賠償は精神的な苦痛に対する慰謝料しか請求できません。人とは違う一台が欲しいのならば、事前に流通台数を調べておくなどの準備も必要でしょう。
第88回:希少車と聞いて購入したのに…|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

不利益事実の故意の不告知(ふりえきじじつのこいのふこくち)
消費者契約法では、勧誘に際して目的物の質などの重要事項、またはこれに関連するに事項について、事業者が消費者の利益になる旨を告げ、不利益な事実を故意に告げなかった場合、誤認した消費者は申し込みを取り消すことができる