Q.店の悪評を理由に契約の解除はできる?

車の契約をしたのですが、契約後にその販売店の悪評を耳にしました。気になって調べてみると、インターネットの掲示板にもよくないウワサがちらほら。不安になって契約の解除を求めたのですが、取り合ってもらえませんでした。悪評は契約解除の条件にはなりませんか?

A.契約が成立した後の解除には契約違反など法律上の要件が必要です

結論から言うと、悪評だけで契約を解除するのは難しいでしょう。どうしてもと言うなら、悪評を一つひとつ調べて、事実であることを証明しなくてはなりません。その場合でも、悪評の内容が法律や中販連の規約に抵触していない場合は解約は難しいと考えられます。

そもそも「悪評から推察するに自分に不都合なことが起こる可能性がある」というだけで、実質的な被害はなにも被っていない状態です。悪評も尾ひれがついて大きくなってる部分もあるでしょう。確かに悪評は気になりますし、悪評どおりの結果になるおそれがあることも否定できません。しかしながら、人のうわさ話だけでは解除理由にはなりません。

以上は、契約が成立した後の解約の話ですが、中古車の売買契約は、通常、『注文書』と『自動車注文書標準約款』によって行われています。この場合には、「契約の成立日は『1.納車 2.使用者の登録完了 3.注文者の依頼により点検・整備などに着手』の3つのうち最も早い日」と明記してあります。この契約例からすると、注文した次の日にキャンセルを申し出た場合など、販売店が上記のいずれかに着手していなければ、契約が成立していないので、キャンセルできることになるでしょう。

ちなみに、『自動車注文書標準約款』は自販連に加盟している販売店が使用しているものです。もしも、加盟していない販売店が、独自の約款を使用しており、そこに「契約の成立は署名押印の時」などと明記してあれば、サインをした瞬間に契約が成立したことになります。約款には必ず目を通すことを忘れずに。また、署名押印は熟考してから行いましょう
第86回:評判の悪い販売店で購入した車を契約解除できる!?|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

約款(やっかん)
事業者が多数の相手と契約をスムーズに締結することを目的に、あらかじめ契約条項を定型化したもの。契約書の裏に細かい文字で「甲は乙に」などと書かれていることが多い。契約書へのサインは、約款の内容を了承したことになるので、約款もよく読んでからサインする必要がある