Q.チューニングされてるはずなのに
    馬力もスピードもアップされてなかった…

前オーナーがチューンナップしていた車を購入。販売店も、馬力やスピードはスゴイですよと言っていました。しかし、購入後に専門店で調べたところ、ほとんどの数値がノーマル車と変わりませんでした。欠陥車というわけではありませんが、販売店に騙された気分です。これは法律的に見て問題はないのですか?

A.使用目的によっては
    販売店に対して損害賠償できます

広告や商談の際に、「○○馬力出ます」「最高速度は○km/hです」などと具体的な数値を出している場合は、不実告知にあたるでしょう。ただ、漠然と「チューニングしてますよ」と言っただだけの場合は、損害賠償などの請求は難しいでしょう。

例外的なケースは、使用目的がレースに出るためなどで、チューニングが購入を決定する大きな要因になっている場合です。これを販売店側に伝えていた場合は、容易に「チューニングされている」ことが購入の目的に直結していると考えられるので、販売店に対してチューニングされていない場合の金額との差額を、損害賠償として請求することができるでしょう。

さらにもう一つ、「動機の錯誤」が発生した場合があります。例えば、チューニングがされている=速くなっていると考えて購入したのに、チューニングしているけれど、馬力もスピードもアップしていないときは「動機の錯誤」にあたります。よって、契約を無効にできる可能性があります

しかし、このケースは、契約の要をどこに見いだすかで結論が変わる難しいケースです。車を「ただ走ればいい」という観点で見れば欠陥車でなければ問題はありません。反対にチューニングされたことが契約の大きな要因であれば、契約は成立しません。

チューニングされて馬力や最高速度がアップしている車が欲しい場合には、契約書の特約事項に数値の保証などを一筆書いておいてもらうべきでしょう。そうすれば、万が一実際にチューニングされていない場合は、債務不履行として契約を破棄することができるからです。

第46回:チューニングされた車を買ったのにノーマルと変わらない!|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

動機の錯誤(どうきのさくご)
人の主観的な認識と客観的な事実との間に誤解を生じている状態。特定の性能を求めて購入しようという客の意志と表示から推測される商品の性能などの不一致をいう
債務不履行(さいむふりこう)
債務の本旨に従った履行をしないこと。売買契約の締結などによって生じた義務を果たせなかったことなどから生じる責任