Q.親が勝手に車の売買契約を解除してしまいました
    こんな時はどうすればいいの?

僕が契約した車を親に勝手にキャンセルされました。いくら親とはいえ、そこまでの権限はないと思います。そもそも、そんな申し出に応じた販売店にも納得がいきません。法律上、こんなことが許されるのでしょうか?ちなみに僕は成人しています。

A.法律上では売買契約の解除ができるのは
    本人のみとなっています

結論から言うと、これは明らかに違法です。成人した人間の行った契約の解除は、本人または権限を委託された代理人でしかできません。いくら親でも、ローンの保証人でも理由にはなりません。権限のない人間からなされた契約解除の申し入れを受け付けた販売店は契約違反になります。もし、契約解除後、車自体を売ってしまい、同じ車を準備できなければ債務不履行責任になるでしょう。

この場合は、販売店に購入代金全額に加えて、車が購入できなかったことによる実害、得べかりし利益などを損害賠償として請求することが可能でしょう。また、親権者に対しても不法行為として損害賠償を請求できます。ただし、書類の偽造などがなければ刑事事件として告訴することはできません。

ちなみに、契約前であれば、親からの話を聞いた販売店が契約者の支払い能力などに疑問をもって、信義則違反を理由に契約を拒否することはできます。例えば、ローンの支払いは親からの収入を当て込んでいたのに、一切面倒をみないと判明した場合などです。

なお、契約後であっても契約の内容に重要な食い違いがあったことが判明した場合は、錯誤を理由に契約を無効にすることができます

第44回:親権者に車の売買契約を解除された場合どうなるの?|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

債務不履行(さいむふりこう)
債務の本旨に従った履行をしないこと。売買契約の締結などによって生じた義務を果たせなかったことなどから生じる責任
不法行為(ふほうこうい)
故意または過失によって他人の権利を侵害し損害を発生させる行為。加害者はその損害の賠償責任を負う
信義則違反(しんぎそくいはん)
契約当事者は、相手方の正当な期待に沿うように行動することが求められるが、これに違反すると信義則違反となる