松岡充

松岡 充 × BMW i8ロードスター

現在発売中の雑誌版「カーセンサー5月号」では、ロックバンドのボーカルや俳優としてマルチに活躍する松岡充さんへのインタビュー記事を掲載している。

今回は紙幅の関係で収めることができなかったエピソードや写真を追加し、WEB用に再構成しお届け!

松岡さんの車に対する熱い思いや、アメ車・旧車好きの彼が今あえて電動車のBMW i8をチェックする理由など、彼なりのポリシーと合わせて語っていただきました。

松岡 充

ミュージシャン・俳優

松岡 充

まつおか・みつる/1971年8月12日、大阪府生まれ。1995年ロックバンド『SOPHIA』のボーカルとしてメジャーデビュー。「街」など多くの代表曲を生み出す。2013年に活動休止後は新バンド『MICHAEL(ミカエル)』を結成し活動中。ドラマ・映画・ミュージカルの主演作を数多くつとめ、俳優活動も幅広く行う。多彩な分野で活動するクリエーターアーティストである。

車の中は音楽の“源”が生まれる空間

――今ではすっかり車好きの印象がある松岡さんですが、昔からお好きだったと聞いています。
はい。父の影響で、子どもの頃からずっと好きですね。裕福な家庭ではなかったのに、「車にはお金をかける」というほど車好きの父親だったので(笑)。真っ赤なトヨタ スプリンターとかマツダのコスモとか、いちおう家族が乗ることも考えてるんだけど、自分の趣味も同時に貫く――みたいな車選びをしていましたね。

――ミュージシャンの方は、車の中で詞やメロディを作ったりするものなんですか?
そうですね。僕にとって車は「自分のスタジオ」みたいな存在で。アーティストとして活動する限り、車がない生活というのは考えられないですね。

――車がスタジオ! ということは車内でデモ用の音源を作っちゃうとか?
さすがにそれはないです(笑)。音楽が生まれる場所って、防音されたスタジオの中にギターやドラムやマイクがあって、卓(たく)と呼ばれている数十チャンネルの音響ミキサーがあって――みたいなことを想像されると思うのですが、でもそれって楽曲制作においての最終局面なんですよね。

――生まれる場所ではない、と?
うん。いや、もちろんスタジオワークも非常に大切ですが、それ以上に僕が大切にしているのは「発想の瞬間」なんです。なにもなかったところからメロディや歌詞を「生む」環境がもっとも重要で、その環境が整っていると、結果として楽曲にエネルギーが備わってくるというか。そういった楽曲の源を生み出すうえで僕にとって最適な場所が「車の中」なんです。

――そういった意味で「車が自分のスタジオである」と?
そういうことです。……こういうことを言うとカッコよすぎて嘘っぽく聞こえるかもしれないですが(微笑)、車ってアクセルを自分で自由にコントロールできるじゃないですか? アクセルをコントロールして「速さ」を調整することで、「思考の速度」や「リズム感」「ビート」もコントロールできるんです。そして車というのは当然「移動」もできるので自分の好きな場所や風景の中に自分を持っていくことがでる。そうすることで、そのとき創ろうとしているモノの「観点」に集中することができて、いい具合の“源”が生まれて、創作意欲が研ぎ澄まされるんですよね。

松岡充
松岡充

好きなもののすべてを、新と旧の両端から知りたい

――松岡さんが「EVに興味がある」というのは正直意外でしたが?
いえいえ、僕はEVにもがぜん興味があるというか、実はテスラも所有してるんです。

――そうなんですか!
はい。それまではぜんぜん興味がなくてそれどころか、「最強のガソリン車」だと思ってる日産 GT-Rを買おうとディーラーまで見に行ったくらい。その場で「買います!」と言ったんですが、先約の方がいて買えなかったんです。残念に思いながら帰っていると、ふとテスラのショールームが……。

――でも当時の松岡さんは、EVにもテスラにも興味がなかったわけですよね?
そう。だから「ふ~ん、テスラかぁ」ぐらいの軽い気持ちでショールームに入って、いざ試乗させてもらったら……とてつもない加速力にぶっ飛んでしまったんですよね。で、またその場で「買います!」と(笑)。

――GT-Rからテスラへ、1日のうちに大転換したわけですね!
そういうことですね(笑)。なので、i 8にも並々ならぬ関心を持っています。で、本日あらためてじっくり見てみると……これは本当にカッコいいですね! 僕は昔ながらの大排気量のアメ車も大好きなんですが、i8みたいな“新しいモノ”も、積極的に受け入れたほうがいいと思っている派なんです。

――ん? それってどういうことですか?
僕は何かを好きになるととことんのめり込みますし、そのジャンルに関するすべてを知りたくなるんです。車に関してもそうで。古今東西、国産のみならず世界中のすべての車を自分で買うのって無理じゃないですか?

――明らかに不可能ですね。
ですよね。それでも、「全部を知りたい!」と思ったときに手っ取り早いのが「両端を知る」ということなんです。ものすごくオールドな車と同時に、例えばi8みたいな最新の車のことも調べていく。すると、両者の“間”がなんとなく見えてくるんです。

――なるほど!
でも多くの人はどちらかに偏りがちですよね。例えば旧車には詳しいけど、最新の車のことはあまり知らない、とか。知らないまま否定する……のはとてももったいないと思うんです。新旧の「両端」を知っておけば、双方の良いところがわかって、カーライフがもっと楽しくなると思います。車だけじゃなくて、そうやって生きたほうが、人はハッピーになると思うんですよね。オールドとニュー、アナログとデジタル、古典とコンテンポラリー……“両端”を押さえれば人生は豊かになりますし、不思議なことにいつのまにか「その間のこと」にも興味が出てくるんですよね。そしてそのことがまたさらに人生をハッピーにするんじゃないかと、僕は思っています。

松岡充
松岡充
松岡充

――そういった意味では、人生のある時期においては「安くてボロい車」に乗るということにも意味があるのかもしれませんね?
デビュー前のバンドで買ったんですが、初めての機材車のことはよく覚えてます。メンバーでお金を出しあったんですけど、結局35万円のボロボロのハイエースしか買えなくて。でも、それでライブハウスに行って、集まっているファンの前にバーンッて車から降りるわけですから、格好つけたいじゃないですか? だからホームセンターで黒い缶スプレーを買って(笑)、みんなでプシューッて塗りましたよ。で、黒くなったボディの上にカッティングシートで作ったバンド名のロゴを貼ってね。

――当時のファンの方たちの、そのハイエースに対する反応は?
缶スプレーで塗っただけのハイエースでしたけど(笑)、そこから初めて降りたったときは「キャーッ!」って言ってもらえました。すごく嬉しかったし、今でもよく覚えてるな……。その後、東京でのライブのため高速道路を走っていたら、三ヶ日インターのあたりで突然「バーンッ!」って音がしてエンジンが止まっちゃって。なんとか惰性で下道まで降りたんですが、結局そのまま廃車になってしまったことを含め、いい思い出ですね。

――青春ですね。
はい。だから、最近、車が邪魔者扱いされたりもしますけど、僕は「もったいないな」っていつも思ってます。僕の経験ですが、車って、人に本当にいろいろなモノや記憶を与えてくれる存在なので。車やカーライフの良さを知ったうえで「でも自分はいらない」と判断するなら仕方ないですが、知らないまま「必要ない」と選択肢から外してしまうのは、人生において本当にもったいないことだと思いますね。

松岡充
アクセサリー:Lord Camelot
文/伊達軍曹、写真/田中宏幸、ヘアメイク/笹川知香

- Information -
BS日テレ「極上! 三ツ星キャンプ Season2」

毎週火曜 21:00~21:54放送

地方移住に興味を抱く人が増えてきている中、ロックボーカリスト 松岡 充が“週末移住生活”をはじめました。

各ジャンルの匠に教わり、試行錯誤を重ねながら囲炉裏やガレージ、野菜作りなどの「住」「食」や、トレッキングに釣りなどの「遊」に至るまで、大人が憧れる空間創り、時間の過ごし方を提案!


伊達軍曹

インタビュアー

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。