たぶん世界に1台の珍獣。フィアット パンダ(初代)を電気自動車“でんきパンダ”にしてみた
2018/06/09
▲見た目はパンダ、中身が三菱の電気自動 i-MiEVってことで、最初の充電は東京都港区にある三菱自動車本社にある充電ステーションにて。ちなみにi-MiEVは総電力量16.0kWhのGと、10.5kWhのMの2グレードがあったが、Mを選択。理由は下記で述べるが、バッテリーの違いだ2年の歳月をかけようやく完成! 中身がi-MiEVのフィアット パンダ
上野動物園のシャンシャンをまだ見たこともないのに、私は「でんきパンダ」を飼うことになった。でんきパンダとは、ひと言でいえばフィアット パンダの姿をした三菱 i-MiEVだ。これまでにスーパーセブンやデロリアンなど、急速充電対応の改造電気自動車はあるものの、フィアット パンダをベースにしたそんな珍獣は、おそらく世界で1台しかないだろう。
フィアット パンダをデザインしたジウジアーロ先生が知ったら、さぞかし怒り狂いそうな暴挙を、極東の51歳のオッサンがしでかした理由は下記をご参照いただきたい。
ともあれ、あれから2年。ベースとなるパンダ探しに半年以上かかり、EV化に1年以上かかった。その間、担当編集者はNくんから大平(てんちょ~)に代わり、私のおなかはひと回り大きくなったが、これでやっと記事が書ける。
▲購入したのは95年式のCLX。キャンバストップの中古車が多い中、ノーマルルーフで、しかもMT(MTにこだわった理由は過去記事参照)車を探したら、約半年間かかってしまったてんちょ~:え? 2年もまたいでそんな記事、今さら必要ですか?
ぴえいる:おいおい、これに約300万円も投資したんだぞ。
てんちょ~:300万? フツーにi-MiEVの中古車を買っておつりもらった方がよかったんじゃw
ぴえいる:貴様はロマンという言葉を勉強しろ。i-MiEVを買うより、「でんきパンダ」を飼う方がドラマチックだと学べ。ええっと、あとそれから(罵詈雑言)……
ベース車両は総額で約54万円。これに改造費を足して約294万円で「でんきパンダ」が完成した。
そもそも私の手元に300万円もあったのは、老後のささやかな楽しみにと、実家のある新潟に帰省しやすいマツダ CX-3の4WDの購入を検討していたからだ。それを特殊詐欺ばりに「でんきパンダ」へと誘導したのは(前担当のNくんへの誹謗中傷)……
とはいえ、今の私はすがすがしい。何しろパンダをベースにした世界でたった1台しかない「でんきパンダ」のオーナーだ(ちゃんと調べてないから「恐らく」だ)。
つまり私は、自分が「世界で一つだけの花」であることを、まさに体感している最中だ。なにより「でんきパンダ」製作にはロマンがあり、実際この2年間はなかなかドラマチックな展開だった。
i-MiEV移植ストーリーは突然に……
当初はDCブラシモーター(プラモデルなどと同じ仕組みのモーター)にリチウムイオン電池を積む計画だった。すでにこの方法で車検(中古車のEV化には改造申請が必要)をパスして楽しんでいる人も多い。
今回改造をお願いしたEV化のスペシャリスト古川氏(プロフィールは下記写真参照)も、この方法で何台も電気自動車に改造してきたので、ベース車を持ち込んだら約3カ月後にはでんきパンダが仕上がるはずだった。
▲でんきパンダの車検取得時の古川氏。これまでダットサン フェアレディやBMW イセッタなど数々の名車を電気自動車にしただけでなく、トヨタ プリウス(3代目)に至ってはFFをFRの電気自動車に改造してD1グランプリでドリフトを披露したこともある。そんな彼でさえ、この「でんきパンダ」は苦労の連続……。これだけ自然な笑顔になるのも当たり前なのだ。ありがとうございました!ところが、急速充電器の電圧に対応できるモーターやコントローラーを生産していたアメリカの部品メーカーが、私がパンダ探しで半年間もまごまごしている間に生産を縮小。入手困難になってしまったのだ。こうなると急速充電を諦めるしかない!?
古川氏:あとは……日産 リーフか三菱 i-MiEVのシステムをまるっと移植す……
ぴえいる:そ、それでいきましょう!
こうして(何度もいうけど「恐らく」)世界で初めての「パンダEV化計画」が始まった。パンダのサイズから、リーフよりパーツが小型なi-MiEVを選んだ。
▲パンダからエンジンとミッションを降ろしたところ。ぽっかりと空いたところにi-MiEVのモーターを設置するのだが、そのためのマウントをオリジナルで作る必要があった。ちなみにi-MiEVは事故歴(リアパネルを破損)はあるが動力源に損傷のない中古車を入手しかし、まるっと移植するだけだから簡単だろうと思っていたら、実際はすっげー面倒な作業だった。
例えばパンダにはABSはないが、i-MiEVには当然ある。だからコントローラーのどこでABSの信号をやりとりしているのか探り出して、無効にしなければならない。さもないとエラーが出て、コントローラーが働かなくなるからだ。
他にもエアバッグやエアコン、パワーステアリング、各種メーター類……古いパンダには無用の、でも今どきの車には当たり前の装備や、i-MiEV固有の機能を無効にするため、一つひとつ探るという地道な作業が必要になった。
▲バッテリーはトランクに積むことに。古川氏によればテスターで測るとMとGグレードで中古車のバッテリーの劣化率が異なり、Mの方が劣化していなかったので、バッテリーとシステムを含めてMを選択したそう
▲バッテリーをトランクに積んだことで、背もたれが直角に。長距離乗るのはちょっときついが、代わりに前後配分が約50:50とBMWなみに(笑)。ちなみに車両重量はベース車が750kg、でんきパンダは900kgさらに困難だったのが、国としても今回のケースが極めてまれだったこと。従来の改造電気自動車なら先例がいくつもあるので車検もスムーズだが、今回は電気自動車の量産車を移植するという極めて希な試み。
そこで古川氏は車台番号限定という方法を選択したが、そのためには保安基準におけるあらゆる適合証明や強度検討などを提出しなければならなかった。
つまり1年以上も、ちょっとした自動車メーカーみたいな仕事に古川氏には没頭してもらったことになる。
▲でんきパンダのインテリア。助手席のパンダ独特の物入れにある青い箱はデフロスター用のヒーター。助手席の足元にはエンジンルームに収まりきらないハーネス類をまとめたので足元が狭い
▲基本的にオリジナルのパンダのインテリアを残したが、メーター部分だけi-MiEVに変更。電気の残量と航続可能距離をここで見る。スピードは古川氏が用意してくれた左の専用速度計で見るぴえいる:ほぅら、こんな経験、CX-3を新車で買っても、i-MiEVを中古で買っておつりをもらってもできまい。
てんちょ~:で、これって車として使えるんですか?
ぴえいる:あ、当たり前だろー、何を作ったと思っ……
てんちょ~:ですよねー、何しろ300万円も使っちゃったんだから(笑)。じゃ、新潟まで走ってきてくださいよ
ぴえいる:え、いきなり新潟?
てんちょ~:だって帰省のために買うはずだったCX-3の代わりでしょ?
ぴえいる:も、もちろんだ。よし行ってやる。行ってやろうじゃないか
実は私が新潟行きをビビった理由はいくつかある。それは後日の新潟編で。
【関連リンク】
※2018年7月2日、i-MiEVをベースにした改造車は過去にも存在していたため記事内容を一部修正しました。
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