▲やや非力なワンは以前から格安相場でしたが、いよいよクーパーとクーパーSもお手頃になってきました! ▲やや非力なワンは以前から格安相場でしたが、いよいよクーパーとクーパーSもお手頃になってきました!

このサイズを走らせるならやはりクーパー以上がいい

今年3月2日(ミニの日)に新型が登場した影響でしょうか、旧型となったばかりの先代ミニ クロスオーバーの相場がグッとお手頃になっています。具体的には車両価格130万~150万円付近で、走行3万km台までというなかなかの好条件車が狙える状況なのです。

といっても、旧型ミニ クロスオーバーの中古車相場に詳しい人からは「何言ってんの? とっくの昔からそのぐらいの価格でも狙えたじゃん!」というご指摘があるかもしれません。

……それはそのとおりなんですが、「とっくの昔」に100万円台前半に突入していたのは、実は旧型ミニ クロスオーバーのなかでもワンというベースグレードが中心でした。

このワン、決して悪い車ではないのですが、ミニ一族のなかではかなり大柄なミニ クロスオーバーをストレスなく走らせるうえでは、少々非力だと言わざるを得ない部分もありました。なにせ1350kgの車重に対して最高出力わずか98psの1.6L自然吸気(ターボとかではない)エンジンですからね。

さほど飛ばさないタイプの人であっても、ミニ クロスオーバーを快適に走らせるためには最低でも中間グレードのクーパー(ワンと同じ自然吸気の1.6Lですがこちらは最高出力122ps)か、できればクーパーS(1.6L直噴ターボで最高出力184ps)を選びたいところなんですが、これまで、それらはまだちょっと高かったんですね。

しかしここへ来てついにクーパーならびにクーパーSの低走行物件も、100万円台前半でイケるようになったのですよ! というのが今回の主たるトピックです。ちなみにディーゼルターボのクーパーDやクーパーSDはさらに魅力的だったりもしますが、こちらはさすがにまだ200万円台半ばとか300万円台前半あたりが中心です。

▲ターボチャージャー付きのクーパーSであればかなり活発です。写真は「ALL4 」のクーパーS ▲ターボチャージャー付きのクーパーSであればかなり活発です。写真は「ALL4 」のクーパーS
▲ちなみに新型は旧型より全長が約200mm長く、全幅も30mm拡大されています。居住性などは当然新型の方が上なわけですが、旧型の手頃なサイズ感も、これはこれで魅力的です ▲ちなみに新型は旧型より全長が約200mm長く、全幅も30mm拡大されています。居住性などは当然新型の方が上なわけですが、旧型の手頃なサイズ感も、これはこれで魅力的です

市場の大半は6速ATの5人乗り仕様

さて、そんな魅力的なプライスゾーンに入ってきた旧型(になったばかりの)ミニ クロスオーバーのクーパーまたはクーパーSとは果たしてどんな車なのか、ざっくりですがご説明いたしましょう。

旧型ミニ クロスオーバーは、ハッチバックとコンバーチブル、クラブマンに続く「第4のミニ」として11年1月に登場したSUV。ミニ一族らしい洒落たデザインと雰囲気を持ちながら、それなりにサイズがある4枚ドアの車であるということで、「子育てに使える車が欲しいんだけど、国産コンパクトとか軽自動車とかは買いたくない……」という層からも結構な支持を集めました。

いちばんベーシックなグレードは前出のとおり「ワン」で、こちらは1.6Lの自然吸気エンジン。それの高出力版が「クーパー」で、さらにターボチャージャーで余裕を持たせたのが「クーパーS」です。一部のグレードには「ALL4」という4WD仕様がありますが、基本となる駆動方式はいわゆるFF(前輪の二輪駆動)。で、「ジョン・クーパー・ワークス」というハイチューンを受けたグレードや、クリーンディーゼルエンジンを搭載したグレードも途中追加されましたが、それらは中古車でもまだ比較的高額です。

クーパーとクーパーSには(というか他のグレードもそうなんですが)4人乗り仕様と5人乗り仕様があって、違いは後席の作りです。5人乗り仕様の後席はごく普通のベンチシート(40:20:40の3分割で、前後スライドあり)ですが、4人乗り仕様の後席は独立式で、独特な「センターレール」が前席から後席まで貫通しています。ただ、旧型ミニ クロスオーバーの流通量は4月中旬現在705台ですが、4人乗り仕様は45台だけ。ほとんどの物件が5人乗り仕様だということですね。

トランスミッション(変速器)は6MTまたはアイシンAW製の6速ATですが、本稿執筆時現在で701台が流通しているうち6MTはわず34台、つまり5%弱ですので、「ほとんどの旧型ミニ クロスオーバーは6速AT」だと思っていいでしょう。

▲旧型ミニ クロスオーバーの運転席まわり。この時代のミニ一族に共通するデザインテイストですが、クロスオーバーはアイポイントが高いため運転がしやすく、そして見晴らしというか気分も上々です ▲旧型ミニ クロスオーバーの運転席まわり。この時代のミニ一族に共通するデザインテイストですが、クロスオーバーはアイポイントが高いため運転がしやすく、そして見晴らしというか気分も上々です
▲5人乗り仕様の後席はこんな感じ。40:20:40の3分割可倒式です ▲5人乗り仕様の後席はこんな感じ。40:20:40の3分割可倒式です
▲4人乗り仕様の後席はこのようなセパレート方式。「センターレール」も特徴的ですね ▲4人乗り仕様の後席はこのようなセパレート方式。「センターレール」も特徴的ですね

重心が高めな割に走りは上々で、荷室容量も不満なし

そして旧型ミニ クロスオーバーのいわゆる「走り」ですが、これがまたなかなか良好です。パワーやトルクに関しては、前述のとおりワンだとやや非力と感じるかもしれませんが、クーパーであれば「まずまず十分」、クーパーSなら「十分以上!」と感じることでしょう。

そしてハンドリングは、ミニといえばビュンビュン走ってガンガン曲がる「ゴーカートフィーリング」でお馴染みですが、クロスオーバーの場合はトレッド(左右のホイール間の幅)もホイールベース(前後ホイール間の長さ)も広め・長めであり、サスペンションのストローク量も多めですので、ゴーカートっぽい感じではありません。コーナリング時も普通のミニと比べるとロール(車体の傾き)量は多めです。

しかしそれでもやはり走りが命のミニ一族ですので、そこからはしっかり安定しています。「峠の山坂道が大の得意」というタイプの車ではありませんが、普通のペースで走っている限りは、運転初心者の方でもかなり安心して運転できることでしょう。

ちなみにこれは筆者が旧型ミニ クロスオーバー クーパーSのオーナーさんに聞いた話ですが、その人(男性です)は運転にはあまり自信がないタイプで、首都高などを走るたびに助手席の奥さまからため息をつかれていたそうなんですが、旧型ミニ クロスオーバーのクーパーSに買い替えた途端、首都高のカーブを走行中に「……あなた、もしかしてちょっと運転上手くなった?」と言われたそうです。実話です。

▲荷室はこんなニュアンスで、写真は後席背もたれを倒した状態。床下にスペアタイヤは入っていませんので、フタを開けて使えば天地方向にもかなりの余裕があります ▲荷室はこんなニュアンスで、写真は後席背もたれを倒した状態。床下にスペアタイヤは入っていませんので、フタを開けて使えば天地方向にもかなりの余裕があります

で、走りもなかなか素晴らしい旧型ミニ クロスオーバー(のクーパーとクーパーS)ですが、実用性も当然ですがなかなかのものです。荷室容量は350Lと決して広くはありませんが、後席の背もたれを倒せば1170Lまで拡大されます。そして荷室の底にスペアタイヤは装備されていないため(代わりにパンク補修キットが用意されています)、荷室は深く使うこともできます。何かと重宝することでしょう。

そんなこんなで走りも実用性も良好で、そしてビジュアルもブランドイメージもかなりいい感じの旧型ミニ クロスオーバー クーパーおよびクーパーS。その走行3万km台までの物件が、車両100万円台前半というお値打ち価格でイケてしまうわけです。……これはもう、ある種の人はイクしかないと思うのですが、どうでしょうか?

text/編集部
photo/BMW