▲特別すごい車じゃなくてもいいんだけど、でもちょっと華のある感じの車が欲しい……とお考えの人にオススメしたいのがアルファロメオのジュリエッタ。最近は車両100万円台でも十分狙えますよ! ▲特別すごい車じゃなくてもいいんだけど、でもちょっと華のある感じの車が欲しい……とお考えの人にオススメしたいのがアルファロメオのジュリエッタ。最近は車両100万円台でも十分狙えますよ!

特別すぎる車はいらない。でも「高平均点」なだけじゃ物足りない

何らかの分野で極端なまでに他者より秀でているという「突出した人生」は、おそらくステキなものなのだろう。子供の頃は筆者もそれに憧れたものだが、現在では、自分には世界レベルの突出した才能など何もないことをよく理解しているため、「突出系の人生」はスッパリあきらめている。そして「とはいえ人生の全方面でなるべく高めの平均点を取る」ということだけは意識しつつ、静かに中流ど真ん中ぐらいの暮らしを送っている。地味だが、それはそれで幸せな毎日だ。

この「地味かもしれないが、高めの平均点取得に基づく静かで幸せな毎日を送る」というライフハック戦略を車選びに当てはめた場合、選ばれるべきは高年式のフォルクスワーゲン ゴルフやトヨタ プリウスあたりになるはずだ。その真逆に位置する「突出系」が、例えばフェラーリ 458スペチアーレとかホンダ NSXとかであろうか。

まぁ筆者は輸入車畑の人間なのでとりあえずフォルクスワーゲン ゴルフで話を進めさせていただくが、高年式ゴルフ、素晴らしい車である。華(はな)みたいなものについては正直やや欠ける気もしないではないが、ひたすら良く走って使い勝手も良く、近年のそれにはなかなかの高級感すらある。それでいて新車価格も中古車相場もなかなかのお手頃系。つまり「全方面でかなり高めの平均点をマークする素晴らしい実用車である」ということだ。

で、それを買って静かな毎日を送ればかなりの確率で幸せになれるわけだが、「……わかるんだけど、あと少しだけ華みたいなものが欲しいんだよね。や、少しでいいんだけど……」という人も、おそらくは一定数いらっしゃるだろう。ゴルフやプリウスを買えば万事OKなのはわかっているが、「あとほんの少しだけ洒落っ気が欲しい……」と。

そんな人に今、猛烈にオススメしたいのがアルファロメオ ジュリエッタだ。

▲50年代から60年代にかけて販売された名車・初代ジュリエッタの名を再び冠して11年11月に登場した現行アルファロメオ ジュリエッタ ▲50年代から60年代にかけて販売された名車・初代ジュリエッタの名を再び冠して11年11月に登場した現行アルファロメオ ジュリエッタ
▲ボディサイズは現行フォルクスワーゲン ゴルフとほぼ同じだが、全長はこちらが8.5cm長い ▲ボディサイズは現行フォルクスワーゲン ゴルフとほぼ同じだが、全長はこちらが8.5cm長い

決め手は「微妙に華のあるデザイン」

ご承知のとおり現行アルファロメオ ジュリエッタは、11年11月に登場したCセグメント、要はフォルクスワーゲン ゴルフぐらいのサイズ感となるFFハッチバックだ。往年のアルファロメオ各車は「エンジンフィール命!」みたいな場合が多かったのに対し、新世代アルファたる現行ジュリエッタは、現代的な直噴ターボエンジンを採用したことで「アルファならではの官能的エンジンフィール!」みたいなものは正直やや薄口になってはいる。

しかしその分、信頼性や省燃費性能などは大幅に向上しているため、フォルクスワーゲン ゴルフと同じようなニュアンスの「普段づかいにちょうどいい、比較的コンパクトでよく走るハッチバック」として使うことができるわけだ。往年のアルファロメオが何か1つの分野で突出しまくっている(だが欠落している部分もある)天才型だとすれば、現行ジュリエッタはゴルフ同様の、全方位で標準以上のスコアをまんべんなくマークできる「なかなかの優等生」だと言えるだろう。

ゴルフとの大きな違いは「たたずまい」、すなわちデザインの力である。

いや、ゴルフのたたずまいやデザインが悪いというわけでは決してなく、このあたりは個人の主観や好みによって意見が割れる話ではあろう。しかし、ひたすら数の多いフォルクスワーゲン ゴルフと比べると(なにせ昨年、国内だけで2万5635台も売れてますから)、ジュリエッタの希少性とイタリアン・デザインの力は、路上や自宅駐車場などで否応無しに光ってしまうではないかと思う不肖筆者である。もちろん異論反論はございましょうが。

まぁ何だかんだ言って「デザインと立ち位置に関する好みの問題」という話に帰結してしまうのかもしれないが、いずれにせよ「ゴルフってイイんだけど、なぜか買う気になれないんだよね」と内心思っている人に、もう1つの選択肢としてぜひご注目いただきたいのがジュリエッタである。

▲どこぞの現代美術館を思わせるデザインテイストのインテリア。写真は本国モデルの6MT仕様 ▲どこぞの現代美術館を思わせるデザインテイストのインテリア。写真は本国モデルの6MT仕様
▲シートは写真のレザーシートの他、ファブリックシートも存在。またレザーシートの細かな意匠もグレードなどによって少々異なる。が、いずれにせよシブい! ▲シートは写真のレザーシートの他、ファブリックシートも存在。またレザーシートの細かな意匠もグレードなどによって少々異なる。が、いずれにせよシブい!

100万円台で狙えるのは「スプリント」と「コンペティツォーネ」

で、そのジュリエッタの中古車が今、なかなかお安い。具体的には100万円台半ばから後半ぐらいの車両価格で、「スプリント」または「コンペティツォーネ」というグレードのまあまあ好条件な物件が狙えてしまうのだ。スプリントの新車時価格がおおむね318万円、コンペティツォーネが368万円であったこと、そしてジュリエッタの素晴らしいたたずまいとデザイン性を考えると、この「100万円台半ばから後半ぐらい」という予算感はかなり魅力的かと思うのだが、いかがだろうか。

またジュリエッタは「値落ちのペース」もちょうどいい。11年11月の登場以来、非常に緩やかなペースで平均価格が下がっているのである。

中古車の平均価格というのは、買う前は「ドカンと大きく下がればいいのに!」などと勝手なことを思うものだが、いざそのようにドカンと下がってしまうと、実は買った後が少々ツラくなる。世間からは「激安ガイシャwww」と影で嗤われ、そして乗り替える際のリセール価格も売価下落に連動して激安になるという、ちょっと困った事態になるのだ。しかし平均価格が緩やかに下降している車種であれば、イメージ的にもリセール的にも好都合な状況が比較的長く続くのである。
 

▲単なるハッチバックといえばハッチバックなのだが、やけにセクシーにも感じられるのはイタリアン・デザインの妙といったところか ▲単なるハッチバックといえばハッチバックなのだが、やけにセクシーにも感じられるのはイタリアン・デザインの妙といったところか

問題は「スプリントとコンペティツォーネのどちらを選ぶべきか?」だが、これはもう一長一短なので断言は難しい。

パワートレインはどちらも最高出力170psの1.4Lターボ+6速DCTで同じ。違いは装備関係にある。コンペティツォーネはアダプティブ機能付きバイキセノンヘッドライトや17インチタイヤ&ホイール、ブレンボ製フロントブレーキキャリパー、スポーツサスペンション、パドルスイッチ、電動レザーコンビシートなどが標準装備。この車の場合、特にスポーツサスペンションとパドルスイッチは欲しいところかもしれない。が、ノーマルサスを採用しているスプリントのしなやかさと、ぶっちゃけ中古車相場のお安さも捨てがたいものはある。

また内装のテイストも両者は少々異なる。スプリントの内装は比較的カジュアルで、ダッシュパネルはフィアット 500のようなボディ同系色。つまりボディが赤なら赤、白なら白、黒ならグレーのパネルだ。しかしコンペティツォーネのダッシュパネルはシックなダークブラッシュドアルミニウム仕様。このあたり、実はジュリエッタの雰囲気を大きく左右する部分なので、こだわる人はぜひこだわっていただきたいポイントだ。

しかし装備的な好みの問題以前に、中古車というのは「ご縁の有無とコンディションの良し悪し」が最終的な決め手となるべきなのは間違いない。まずはいくつかの個体を実際にご自身の目で見て、可能であれば試乗もして、「これぞ!」という1台をぜひとも見つけていただければと思う。それが結果としてスプリントだったとしてもコンペティツォーネだったとしても、どちらも「素敵で洒落た優等生ハッチバック」であることに変わりはない。

text/伊達軍曹
photo/フィアット・クライスラー・オートモービルズ