▲Dセグ=Dセグメントとは「2~3Lエンジンを搭載した、大衆車と高級車の中間に位置する車」のこと。その中でもフォルクスワーゲン パサートヴァリアントはかなりお手頃なんです ▲Dセグ=Dセグメントとは「2~3Lエンジンを搭載した、大衆車と高級車の中間に位置する車」のこと。その中でもフォルクスワーゲン パサートヴァリアントはかなりお手頃なんです

イメージも実用性も最高な輸入Dセグワゴン。が、高額なのがネック

輸入中古車評論家を自称するわたしだが、自慢じゃないがカネはない。いや日々の食事に困窮するほど貧乏しているわけではないが、「車を買うなら100万円とか150万円、まぁせいぜい200万円」と心に決め、ニッポンの中流ド真ん中を生きている。

そんなわたしは現在、5MTの旧型ルノー カングーを営業車兼釣り車兼草野球部の用具車として使っているのだが、そろそろ乗り替えたいと考えている。故障したわけでも気に入らなくなったわけでもなく、単にいつもの「車替えたい病」が発症しただけだ。2015年4月14日のカーセンサーnet記事によれば「心理学的には『車の乗り替えが多い人は浮気性』は本当だった!?」とのことだが、ほっといてくれとしか言いようがない。

▲筆者が2015年3月に購入した旧型ルノー カングー。特に故障もなく気に入って使っているが、なんとなく最近「買い替えたいモード」に入ってしまった ▲筆者が2015年3月に購入した旧型ルノー カングー。特に故障もなく気に入って使っているが、なんとなく最近「買い替えたいモード」に入ってしまった

それはさておき、次期荷物車は「輸入ステーションワゴン」にしようと考えている。ここ1年ほどカングーに乗ってみてわかったのは、「営業車兼釣り車兼草野球部の用具車」にはステーションワゴンがたぶん最適だということだ。釣り竿やバットなどの長尺物を積むうえで、旧型カングーは最高であり、そして見かけによらず走りも最高なのだが、2つだけ問題がある。それは、

1. (車高の高い)ボディ形状的に仕方ない話だが、やはり横風にやや弱い
2. ファニーなルックスゆえ、マジメでフォーマルな場にはいまいち似合わない

ということだ。その点、セダン同等の全高で車重もそこそこあるステーションワゴンであれば、強風の東京湾アクアラインで死ぬ思いをすることもない。そして上質なブランドイメージと造形を備えた何らかの輸入ステーションワゴンであれば、何らかのマジメでフォーマルな場に乗り付けても違和感がない。さらに言えば、ステキでフォーマルな輸入ステーションワゴンに乗っていれば、わたしという自営業者のバリューもほんの少々は上がる可能性がある。

そう考えたとき、正解はおそらくドイツ御三家すなわちメルセデス・ベンツかBMWまたはアウディのDセグメント、つまり「Cクラスステーションワゴン」「3シリーズツーリング」「A4アバント」の現行モデルなのだろう。ワゴンとしての実用性を含む各種性能は十分以上であり、かさばらず、ブランドイメージも上々。それらステーションワゴンでカーセンサー編集部に乗り付ければ、原稿料もアップしてもらえそうな気がする。気のせいかもしれないが。

▲現行BMW 3シリーズツーリング。様々な意味で死角のない最高の「プレミアム道具車」だ ▲現行BMW 3シリーズツーリング。様々な意味で死角のない最高の「プレミアム道具車」だ

だが、問題は「そういったワゴンはやっぱり高い」ということだ。

先に挙げた3つの現行モデルを買うとなると、中古車でも結構な金額となる。具体的には、現行Cクラスステーションワゴンを狙うなら400万円台の予算は絶対に必要であり、3シリーズツーリングでも280万円以上、年次的にいちばん古いA4アバントでも高年式車は200万円以上で見ておきたいところだ。こちとら自慢じゃないがカネはないため、若干前のモデルでもいからもうちょっと安く、100万円ぐらいでなんとかしたい。

……と思い悩んでいたとき、「そういえば!」と思い出された1台の輸入Dセグメントステーションワゴンがあった。

旧々型フォルクスワーゲン パサートヴァリアントである。

▲こちらが旧々型フォルクスワーゲン パサートヴァリアント。2世代前のモデルではあるが、まだまだ十分現代的に見えるビジュアルかと思うが、どうだろうか? ▲こちらが旧々型フォルクスワーゲン パサートヴァリアント。2世代前のモデルではあるが、まだまだ十分現代的に見えるビジュアルかと思うが、どうだろうか?

「同世代の類似モデルよりざっくり100万円安」という誘惑

06年4月から11年4月まで販売された旧々型パサートヴァリアントは、同時期のゴルフをベースに作られた比較的大柄なDセグメントワゴン。搭載エンジンは前期型が2L直4の自然吸気とターボ、そして3.2L V6の3種類。途中から、1.8Lにややダウンサイジングされたターボエンジンと、「R36」という最強グレードに搭載された最高出力299psの3.2L V6も追加された。

デザインおよびイメージ的にぶっちゃけ華はないが、内外装(特に内装)の質感は上々であり、2.0T以上のグレードであれば動力性能も十分以上。そしてモデル全般として「しっとりとした上質な乗り心地」を誇る車だ。また、華がないといっても「悪いイメージ」や「安っぽいイメージ」があるわけでは決してないため、メルセデスやBMW、アウディほどではないにせよ、これに乗っていればわたしという自営業者のバリューもほんの少々は上がるだろう。

で、それでいて安いのだ。

▲年式やグレードにより細部は微妙に異なるが、内装のイメージはおおむねこんな感じ。ウッドとレザーはオプション設定だったので、ファブリック内装の個体はもう少し簡素なイメージとなる ▲年式やグレードにより細部は微妙に異なるが、内装のイメージはおおむねこんな感じ。ウッドとレザーはオプション設定だったので、ファブリック内装の個体はもう少し簡素なイメージとなる

06~08年式付近の「2.0T」または「2.0」であれば、走行距離5万km以下の個体でも車両価格おおむね60万~100万円ほどで探すことができ、3.2L+4WDの「V6 4モーション」であっても100万~130万円ほど。似たような条件の個体を08年式のメルセデス・ベンツ Cクラスステーションワゴンで探すとなると、おおむね120万~180万円が中心となってしまい、同年式のアウディ A4アバントでも120万~170万円といったところ。どこを基準にするかで数字は変わるが、ざっくり言ってしまえば「パサートヴァリアントの方が100万円近く安い!」ということだ。ニッポンの中流ド真ん中を自負する筆者にとって、この価格差は果てしなくデカい。

もちろん、プレミアム感のようなものは同世代のメルセデスやアウディの方が率直に言って断然上だが、少なくとも100万円近くもの大差があるとは筆者には思えない。旧々型パサートヴァリアントだって(筆者にとっては)十分プレミアムな輸入ステーションワゴンである。しかしそれでいて安価であるため、言葉は悪いが牛馬のようにせっせと働かせても罪悪感がない。

▲「2.0」はやや非力に感じる人もいるかもしれないが、「2.0T」以上のグレードであれば高速道路でもワインディングでもそれなり以上に速い。乗り心地もかなりしなやかだ ▲「2.0」はやや非力に感じる人もいるかもしれないが、「2.0T」以上のグレードであれば高速道路でもワインディングでもそれなり以上に速い。乗り心地もかなりしなやかだ

ということで旧々型フォルクスワーゲン パサートヴァリアントは、わたしにとって、そしてあなたにとって「ステキで高コスパな道具車」としてかなりのモノかと思うのだが、どうだろうか。

text/伊達軍曹
photo/フォルクスワーゲンジャパン、BMW、伊達軍曹