VWコンセプトI(1994年米・デトロイトショー)→ニュービートル(1998年)

往年のコンセプトカーを振り返りつつ、市販化された車をフィーチャーするこの企画。今回はその愛くるしいスタイリングで人気を博しているVWニュービートルに注目。“カブト虫”の愛称で親しまれたタイプIの復刻版として、「コンセプトI」の名で1994年のデトロイトショーで発表された。では、ニュービートルの生い立ちを見ていこう。

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ファッション性が優先されたと思われるニュービートル。乗ってみるとドイツ車としての緻密な雰囲気ではなく、アメ車的なカジュアルなイメージの強さを感じる

デトロイトショーにコロンと現れたコンセプトI

中学・高校時代の友人が18歳で初めて免許を取って買ったのが、空冷フラットエンジンをリアに塔載する「クラシック・ビートル」だった。家に来るのを待っていると、かなり遠くから「バタバタ」と空冷フラットエンジン特有の音が聞こえるので、それを合図に家を出たものだった。

その友人はクラシック・ビートルベースの「デリバリーバン(通称デリバン)」も所有していた。こっちはビートル以上に面白かった。ステアリングを抱え込むような、完全なトラックタイプのドライビングポジションに、床からはえるロングストロークのシフトノブ。免許取りたてで自宅のカローラセダンしか運転したことのなかった筆者にとっては完全な「別世界」だった。ちなみに別の友人はシトロエン2CV(こちらは空冷2気筒エンジン)に乗っていた。

筆者のみならず、40代以上の人なら、クラシック・ビートルになんらかの思い入れがある人は多いだろうし、知名度は抜群に高い。


そんなクラシック・ビートルは1978年にドイツ本国での生産を終了。最後まで生産していたメキシコでも2003年に生産が終わった。クラシック・ビートルの復刻版「ニュービートル」は1994年のデトロイトショーで「コンセプトI」という名前で初出展され、1998年に正式デビューした。コロンとした印象は、当時の観客を大いに沸かせた。

ファッション性が優先されたニュービートル

市販車としてデビューした当初のスペックは、全長4090×全幅1730×全高1500mm。2Lの直4エンジンが日本仕様には塔載されていた。クラシックと同じRR(リアエンジン・リアドライブ)ではなく、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)レイアウトを採用。インパネに設けられた「一輪ざし」がかなり話題となった。


VW コンセプトI  リア | 日刊カーセンサーボディサイズがただ大きいだけでなく、フェンダーの張り出しが大きいデザイン。初めて乗ったのは黄色の左ハンドル仕様だったため、左ハンドルに慣れていない筆者は車両感覚をつかむのが大変だったことを覚えている。

メキシコ工場で生産されていたことからもわかるとおり、メイン市場が北米なのは間違いない。案の定デビュー当初は破竹の勢いで北米では売れまくった。

似たような復刻モデルとしてはBMWのミニがある。もちろんオールド・ミニとはメカニカルな部分は共有していないが、ビートルと違う点は、いまどきのメカニズムで、オールド・ミニの雰囲気を見事に演出している点だ。現行クーパーのゴーカート的な乗り味はもちろんだが、デビュー当初はクライスラーのエンジンを搭載しながら、オールド・ミニの雰囲気(おもに乗り味)が見事に盛り込まれていた。

対するニュービートルはイメージ先行型で、クラシック・ビートルの印象はエクステリア以外から感じることはできない。ブランドそのものを復刻させるか、イメージだけを盛り込むか、復刻モデルとはいえ、考え方は違うのである。