▲「世界新三大夜景」に選ばれた長崎の夜を彩る光。全国でも珍しいすり鉢状の地形が、立体的な彩りを醸し出している ▲「世界新三大夜景」に選ばれた長崎の夜を彩る光。全国でも珍しいすり鉢状の地形が、立体的な彩りを醸し出している

坂がきつすぎてエレベーターが設置される街

全国でも有数の観光都市、長崎。もしかすると、修学旅行や観光で訪れたという人がいるかも知れません。私も、今年の年末年始は出身地である長崎で過ごしました。江戸時代には外国との窓口として栄え、幕末には維新志士が集い、戦時中には原爆の惨禍に見舞われた街。1日ではとても回りきれないほどの旧所名跡が存在します。

そんな中、カーセンサーのライターとして気になったのが長崎の道路事情。住んでいるときには気にしたことがなかったのですが、久しぶりに帰省した故郷は、私の記憶以上に「坂の街、長崎」でした。長崎に坂が多い理由は、三方を山に囲まれたすり鉢状の地形によります。このような地形では、平地部に住宅が集中するのですが、長崎では山の斜面を利用して住宅地を造成。結果的に、全国でも珍しい山に市街地が広がる都市となりました。

▲長崎市の斜面市街地は市街地全体の43%と県庁所在地では群を抜いた数字。同じく、坂の街と言われる小樽や函館、尾道などは20%台なのを考えると驚異的だ ▲長崎市の斜面市街地は市街地全体の43%と県庁所在地では群を抜いた数字。同じく、坂の街と言われる小樽や函館、尾道などは20%台なのを考えると驚異的だ

しかも、この坂がどれもこれも半端ではないんです。どれくらいスゴいか一例を挙げると、観光名所であるグラバー園の近くには、地域住民と観光客のための斜行エレベーター「グラバースカイロード」が設置されているほど。

▲傾斜角31度、延長約160mの「グラバースカイロード」は、全国で初めてエレベーターとして作られた公道。ちなみに、このエレベーターを使わない場合、並行する階段、「相生地獄坂」の223段を登らなくてはならない ▲傾斜角31度、延長約160mの「グラバースカイロード」は、全国で初めてエレベーターとして作られた公道。ちなみに、このエレベーターを使わない場合、並行する階段、「相生地獄坂」の223段を登らなくてはならない

スキーのジャンプ台並の斜度を車が上る!?

観光名所つながりでいえば、全国的に有名なオランダ坂の先には、「元祖オランダ坂」があるのですが、その傾斜角は20度。もちろん、車も通れます。こんな坂が街中のあちらこちらにあるのですから、レンタカーやドライブで訪れた観光客には驚愕の連続。下の写真は友人宅の前の坂。長崎では一般的な生活道路です。

そんな急坂だらけの長崎ですが、なかでも“急”だと言われている坂がいくつかあります。その中のひとつが「地獄坂」平均勾配24%といわれています。20数年前の話しですが、当時550ccの軽自動車に成人男性4人が乗り込むとほとんど前に進まなかった記憶が甦ります。

▲狭い道が多い長崎は軽自動車が多く、保有シェアは全国2位の54%。550cc時代は4人乗りの軽自動車だと坂道がつらかったが、現在の軽自動車は急坂をものともせずに登っていく ▲狭い道が多い長崎は軽自動車が多く、保有シェアは全国2位の54%。550cc時代は4人乗りの軽自動車だと坂道がつらかったが、現在の軽自動車は急坂をものともせずに登っていく
▲急な坂のヘアピンを越え、狭い道をひた走る長崎のバス。しかも、小型ではなく通常の大型バス。友人のバス運転手曰く、「日本一運転が上手いのでは」なんて声も ▲急な坂のヘアピンを越え、狭い道をひた走る長崎のバス。しかも、小型ではなく通常の大型バス。友人のバス運転手曰く、「日本一運転が上手いのでは」なんて声も
▲坂の途中にあるクリーニング店の店名が「エベレストクリーニング」。この坂を登るのがいかに大変かを如実に語っている ▲坂の途中にあるクリーニング店の店名が「エベレストクリーニング」。この坂を登るのがいかに大変かを如実に語っている

久しぶりに走ったその坂は、やっぱり急でした。車内からの景色は、まるでスタート地点へと登っていくジェットコースターのそれ。しかも、道は車1台がやっと通れる狭さにも関わらず、普通に車が通行しています。もちろん、生粋の長崎人なら、登り優先のルールをわきまえているので、スムーズに離合完了。しかし、坂道での離合に慣れていない人が下りにも関わらず譲らなかったら、ちょっとしたトラブルになるかも。

▲頂上が見通せないほど急な坂の角度。ちなみにこの坂は、最寄りの高校の通学路となっている ▲頂上が見通せないほど急な坂の角度。ちなみにこの坂は、最寄りの高校の通学路となっている

私有地なので写真撮影はしませんでしたが、長崎でもっとも有名な急坂は、飽の浦町にある「変電所の坂」。平均勾配は24%で最大勾配は30%とも35%とも言われています。その凄さは、札幌の大倉山ジャンプ台の助走路の最大斜度が35度といえばわかりやすいでしょうか。ちなみに、宅地造成規制法によれば、地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地は崖と見なされます。

長崎に観光に行った際には、名所だけでなくて、こんな坂ドライブも話のネタになって楽しいかもしれません。ただし、多くの坂は道幅も狭く、車で通行しようとすると結構大変なので、気をつけてください。

text&photo/コージー林田