▲王道とはひと味違う、レアなグルーヴを放つ中古車を愛するBoseが外角低めなカーライフをオススメする「Bosensor」がNETにも登場。今回は、カーセンサー9月号(2015年7月発売号)に掲載された「Bosensor」のこぼれ話です ▲王道とはひと味違う、レアなグルーヴを放つ中古車を愛するBoseが外角低めなカーライフをオススメする「Bosensor」がNETにも登場。今回は、カーセンサー9月号(2015年7月発売号)に掲載された「Bosensor」のこぼれ話です

ひとつのことをやり続けていたら、気づけばカルトな店に

日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMC、Bose。中古車情報誌『カーセンサー』にて彼がお届けする人気連載「Bosensor」。カーセンサー本誌で収録しきれなかったDEEPでUNDERGROUNDな話をお届けっ!!

Bose:ごきげんよう! 前回、念願のゴルフII GTiに試乗させてもらい、マジで買う気満々になっているBoseです(←ただいま写真を送った奥さんからの返事待ち)。やっぱ80年代~90年代前半くらいまでの車はマジ面白いわ。今回はスピニングガレージの田中社長とのゴルフトークをお届けしちゃうよ。

編集部ペリー(以下、ペリー):撮影中も「契約しちゃうよ~」って顔していましたもんね。目が電卓になっていた(笑)。

Bose:さっきからからかうんじゃないよ! こっちは真剣に考えているんだから。

田中社長:当社のブログに掲載する納車カットも撮ってもらいましたし(笑)。期待していますよ。

Bose:(やべ、返信が途絶えた……)。ところで田中さんがゴルフの店をやろうと思ったのはいつ頃なの?

田中社長:今から17年前です。学生時代から音楽と車が好きで、大学卒業後は音響機器メーカーに就職したんです。でもすぐ辞めちゃった(笑)。この先どうしようかなと考えたときに、もうひとつの好きなものである車に関わる仕事にしようと。どうせ売るなら好きな車にしたいじゃないですか。で、ゴルフIIに。

Bose:でも社会人経験がほとんどなくていきなり事業スタートでしょう。やっていることがインディーズだよ(笑)。普通だと怖いって考えそうだけどね。

田中社長:でも好きなものを扱うから楽しみの方が大きかったですよ。あとは若いから失敗したらまた就職すればいいやって。けっこう軽いノリでした(笑)。

Bose:17年前ということは、同じようにゴルフIIを扱うお店もたくさんあったでしょう。

田中社長:ワーゲンの専門店、ゴルフの専門店、そしてゴルフⅡの専門店……。いろいろなお店がありました。

ペリー:自動車媒体はもちろんですが、スピニングガレージはベンチャー起業家向け媒体でも取材されていますよね。「国内で1社、ニッチマーケットの勝者!」という感じで。それ見て「すごい!」って思いましたよ。

田中社長:いろいろな媒体で当社を取り上げていただくのは本当にありがたいです。ただ……僕としてはニッチビジネスや特別な業態をやっているつもりはまったくないんですよ。右も左も分からないけれど純粋に好きだからゴルフIIの専門店をはじめ、たくさんあった同じようなお店がなくなっていき、気づいたらうちだけになっただけなんです。もちろん在庫規模は大きくなりましたが、やっていることはスタート時と何も変わりません(笑)。

Bose:すげぇわかるわ、その感じ。僕らもデビュー時からずっと同じマインドで曲を作ったりしているのに、時代が一周しちゃって「新しい!」って。もちろんその時その時で「カッコいい」と思う音を入れているけれど、基本は昔から一緒。

田中社長:そうなんです。自分たちは変わらなくても世の中が変わった部分もあるので。ゴルフだと僕が始めた頃は普通の車だったけれど、今はネオクラシックの部類になりますから。整備の仕方やお客さんへの説明は自然に変わります。

Bose:今回スモールバンパー(前期型)のGTiに乗せてもらって、あらためて「車は80年代までが最高に楽しい!」と思ったの。車ってさ、平成に入ると途端に流線形になっていくでしょう。この時代のラインはたまらなくカッコいいし。80年代終わりまでの進化がちょうどいいんだよね。そこから先はただ太っていった感じがするし、いろいろ理由をつけて新しいもの、新しい技術を作らなきゃいけなくなった気がするんだよね。

田中社長:そうなんですよ。僕もこの時代が資本主義最後の“いい循環”だったんじゃないかなって。いいモノを本気で作ればきちんと世の中が評価してくれる。

Bose:今は何か言われたときの言い訳を考えないといけないからね。これは特定メーカーの話ではなく、あらゆる産業に言えること。音楽だって同じだもの。受け取る側もそれを感じちゃうよね。

田中社長:アパレル関係の知人も同じようなことを言っていました。「俺らが若かった頃のアメカジが最高だった」って。この感覚が単なるノスタルジーじゃないと思うのは、何かのきっかけでその時代のものに若い子が触れると、強烈に感動して虜になったりするんです。表情を見ると、本物に触れて“覚醒”したって感じなんですよ(笑)。

▲お店にはゴルフIIをはじめ、素敵な車がずらりと並んでいました ▲お店にはゴルフIIをはじめ、素敵な車がずらりと並んでいました
▲屋根付きの保管庫には“お宝”がたくさん! Boseさんもワクワクしていました ▲屋根付きの保管庫には“お宝”がたくさん! Boseさんもワクワクしていました

自分の感性にピッタリくる人が見つかれば、カーライフが楽しくなる

ペリー:中古車を買う人の中には、当時憧れていたけれど新車は高くて買えないし……という人も多いじゃないですか。でもゴルフはそこまでの高級車じゃない。どんな人が見に来るんですか?

田中社長: 20代~60代まで幅広い年齢の方が見に来られます。車はもちろん、音楽やファッション……単にお洒落ではなく、ライフスタイルにこだわりをもっていて「今の車が自分の感性にハマらない」という方が多い気がします。職業で言うとデザイナー、設計士、音楽関係の方などが多いですね。

Bose:スチャダラパーと●●●(編集部注:取材でお邪魔したとき、某ミュージシャンの愛車がガレージにあったのです)がこのお店にやってくる。それが答えだよ(笑)。ゴルフIIの専門店はどんどんなくなっていったけれど、田中さんは他の車をやろうと思ったことはないの?

田中社長:一時期、ゴルフIVの新車に乗ったことがあるんですよ。良い車だけれど僕の感性には刺さらなくて……。そのとき、僕はずっとゴルフIIでいこうと思いました。

Bose:なんかさ、ひとつひとつの発言が頑固親父がやってる中古レコード屋と同じなんだよな(笑)。

田中社長:中古レコード屋かぁ。似てるかも(笑)。うちで働いてくれているスタッフはもともとお客さんだった人が多いですしね。

Bose:それだよ、それ。分かるやつだけ集まればいいって。

田中社長:普通の感覚のメカニックだと、うちの仕事はすぐ飽きて辛いだけになると思うんです。毎日同じ車ばかり整備するから(笑)。いろいろな同じ車でも深く潜っていくといろいろな発見があって日々楽しいんですけどね。

Bose:そして気づけば車がこんなに集まっちゃったって。レコード屋だと「いくら金積まれても売らないよ」っていう“商品”があったりするけど、ここにも絶対あるはずだもん。

田中社長:…………あります(笑)。一応値段を付けてはありますが。Boseさんが試乗したGTiは売りに出しますが、正直“売るのが惜しい”部類に入っています。エンジン含め、機関系の状態も抜群。こんな言い方すると怒られるかもしれませんが……。“神降臨”レベルです(笑)。

Bose:(笑)。ちなみに田中さんは今は何乗っているの?

田中社長:クラシックラインを通勤に使っています。最近手に入れたのは昭和の縦目のハイエース。これがなかなかおもしろくて。あとはずっとゴルフIIというFFに乗ってきたので、少しFRの乗り味を知ろうと最近初代ロードスターを手に入れたんです。

Bose:NAロードスター! また僕と同じ感性の持ち主だってことがわかっちゃったよ。実はこの取材、次回はロードスターで行こうと思っているの(笑)。

田中社長:本当ですか! Bosensorのロケに遊びに行っちゃおうかな。

Bose:せひぜひ。みんなも中古車屋さんに行ったらぜひお店の人とたくさん話して、自分の感性にピッタリくる人を探してみるといいよ。その後のカーライフが絶対に楽しくなるから!

▲Boseさんが乗っていたクラシックラインもワインレッドのボディ&幌だったそうです ▲Boseさんが乗っていたクラシックラインもワインレッドのボディ&幌だったそうです
text/高橋満(BRIDGE MAN) photo/篠原晃一