輸入車SUV選びの死角からやってきた刺客

  • リンカーン MKX 走り|ニューモデル試乗
  • リンカーン MKX リアスタイル|ニューモデル試乗
↑基本的にはアメ車らしいゆったりとした身のこなしだが、その気になれば意外と俊敏な動きを見せる(左)ボディカラーは黒のみだが、当初限定20台だけライトブルーメタも入る(右)
リンカーンといえば、キャデラックと並ぶアメリカを代表する高級車ブランド。2008年からフォード・ジャパンによるナビゲーターの正規輸入が始まり、続いてこの9月中旬から都市型SUV、MKXも導入開始となった。

全長4750mm、全幅1925mmというサイズはカイエンとほぼ同じだが、実際のMKXは意外と大きさを感じさせない。欧州車に似た端正なシルエットとアメ車っぽいフロントとリアのランプ類の意匠の組み合わせは、なかなか日本人好みのするスタイリングだ。特に左右いっぱいに回されたリアコンビネーションランプとバックランプのLEDはとてもカッコイイ(日本の法規の関係で付けられたバンパーのウインカーは残念)。

しかしこのクルマの最大の魅力は内装のデザインだ。フォードの伝統である左右対称のインパネ回りには、黒基調の中に明るいウッドとシルバーをうまく配している。ウッドに似た色のパイピングが施された本革シートと相まって、夜のニューヨークで気の利いたバーにいるようないい気分にさせてくれる。

リンカーンの新たなイメージを構築するモデル

  • リンカーン MKX インパネ|ニューモデル試乗
  • リンカーン MKX リアコンビネーションランプ|ニューモデル試乗
↑メーターの意匠や左右対称なデザインなどに懐古調も感じるが、インテリア全体は配色の妙でモダンな印象が勝る(左)白色LEDが埋め込まれたリアのコンビネーションランプは印象的だ(右)
走りも好感が持てた。プラットフォームはマツダ CX-7と共通だが、硬くてドタバタするCX-7と足回りの味つけはずいぶん違う。基本的にはアメ車らしいゆったりとした身のこなしだ。しかしその気になれば意外と俊敏な動きで応えてくれる。

エンジンはフォード製の新開発3.5L V6ツインカム。低速トルクはやや物足りないものの軽やかでスムーズに回る。こう書くとアメ車をバカにしているのか、と怒られそうだが日本製や欧州製の最新V6と遜色なくて驚いた。今までアメ車の動力性能はドイツ車や日本車の2割引と認識していたが、MKXは1割引くらいである。むしろ高性能に振りすぎた昨今のドイツ製高級SUVよりも、このクルマが持つリズムの方が心地よい。

正直、日本においてリンカーンのブランドイメージは希薄だ。古いクルマ好きはコンチネンタルと結びつけて連想するくらいが関の山だろう。だが、このMKXはそんな既成概念を覆し新たなイメージを構築するかもしれない。「何に乗っているの?」と聞かれて「リンカーンだよ」と答えるのも、今の日本では金持ちなのか何なのかわからなくていい。

HDDナビや大型サンルーフ、本革シートなどフル装備で650万円という価格もまあ妥当だ。シトロエン C5より「浮動票系おしゃれガイシャ乗り」獲得の有力候補、かもしれない。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード MKX
駆動方式 4WD
トランスミッション 6AT
全長×全幅×全高(mm) 4750×1925×1705
ホイールベース(mm) 2820
車両重量(kg) 2060
乗車定員(人) 5
エンジン種類 V6DOHC
総排気量(cc) 3495
最高出力[ps/rpm] 269ps/6250rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 34.6kg-m/4500rpm
10・15モード燃費(km/L)
ガソリン種類/容量(L) 無鉛レギュラー/76
車両本体価格 650.0万円
(Tester/馬弓良輔(インポートカーセンサー副編集長) Photo/尾形和美)