※この記事はカーセンサー関東版15号2003年4月17日発売号に掲載されていたものをWEB用に再構成したものです

1978年以来のFR復活。剛性感のある走りとハンドリング

(Tester/島崎 七生人 Photo/桜井 健雄)

コンセプト
初めて500万円を切ったエントリーモデル登場

キャデラック CTSの走り|プレイバック試乗記 キャデラック CTSのリアスタイル|プレイバック試乗記
↑高速道で若干の振動はみられるが、レーンチェンジがスッと決まる感触やトルクのある走りは欧州スポーツセダンを連想させる(左)フロントと同様にシャープなデザインを踏襲。遠目でも存在感をアピール(右)
いつかはクラウン…が日本人の合言葉だったように、キャデラックは、アメリカンドリームを象徴するブランドだ。その伝統も昨年、100周年を迎えた。

そのキャデラックから新登場のエントリーモデルが、このCTS。近年のキャデラックのメッセージである“アート& サイエンス”の表現手段の一つであるスタイルは、エッジを利かせ、大胆にしてシャープ。旧車のデザインを今に継承する縦型ランプや、フロントグリルの“紋章&飾り” が、しっかりキャデラックであることを主張。しかし全幅は1800mを切るコンパクトさだ。

日本仕様はV6搭載車を2タイプ(2.6Lと3.2L)用意し、2.6Lなら500万円を切る価格設定がなされている。

室内&荷室空間
革新的な個性を出しつつ伝統的な高級感は健在

キャデラック CTSのインパネ|プレイバック試乗記
↑写真は2.6L。革シートやCD(3.2LはMD&ナビ)が標準されるなど充実感のある空間
 かつて“キャデラックフリートウッドブロアムセダンエレガンス”と、車名も全長も長かった以前のキャデラックとCTSとでは、まったくイメージが違う。しかし、日本でも目に慣れたほかの高級ブランドの車とも一味違うムードは個性があり、革新的だ。
インテリアは本革シートが標準。インパネ表皮、ドアトリムは幾何学シボが用いられ、新しさを狙ったらしい。が、インパネのデザインは、もう少し色気があるカタチのほうがいい。

シートは前後とも、体をしっかりとホールドしてくれる形状とサイズ。室内スペースは空間を稼ぐ方向ではないが、実用上は不満のない大きさだ。トランクは深さはそこそこだが、奥行きはあるので、大型のスーツケースでも滑り込ませることができる。

ドライブフィール
欧州車のような剛性感と無駄な挙動のない走り

キャデラック CTSのエンジン|プレイバック試乗記 キャデラック CTSの足回り|プレイバック試乗記
↑3.2Lは低速からでも加速感は十分。2.6Lは反応がシャープで運転が楽しめる(左)乗員数の変化に関わらず、スムーズだが引き締った乗り味を保つ足回り(右)
第一印象は、非常にソリッド(=剛性感がある)だった。開発過程でドイツのニュルブルクリンクも走らせたというCTS は、どうやら本気でスポーツセダンの性能を求めたらしい。

いいところは乗車人数が1人から2~4人と変化しても、スムーズだが引き締まった乗り味が保たれる点。無論、低速での乗り心地の硬さもない。高速走行時もわずかなフロア振動に目をつむれば、直進安定性も良く、快適だといえる。

ステアリングを切ればスッと曲がる、無駄な動きのない挙動も気持ちいい。それはBMW3シリーズを一瞬、連想させる。

エンジンは3.2Lのほうが当然ながら余裕が大きく、低速でも無理のない加速が得られる。が、2.6Lもなかなか反応はシャープで、シフト操作を楽しむユーザーには喜ばれそう。

こんな人にオススメ

V6エンジンは3000rpm台後半から、なかなか聴かせるメカニカルな音を発するので、走らせる楽しみもある車だということ。最小回転半径が5.3mと小さく取り回し性が良いのも助かる。ドイツ車勢があふれるこの日本で、人とは違う車を愛車にしたいという人には悪くない選択肢の一つだろう。
主要諸元のグレード CTS 3.2L
駆動方式 FR
トランスミッション 5AT
全長×全幅×全高(mm) 4850×1795×1460
ホイールベース(mm) 2880
車両重量(kg) 1660
乗車定員(人) 5
エンジン種類 V型6気筒
総排気量(cc) 3174
最高出力[kW(ps)rpm] 164kW(223ps)/6000rpm
最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 298N・m(30.4kg-m)/3400rpm
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/66
車両本体価格 2.6L 495.0万円
3.2L 595.0万円