ポルトガルで乗ったシトロエンC5 【試乗by西川淳】
カテゴリー: シトロエンの試乗レポート
2008/05/16
日本への導入は今秋の予定
新型C5を、衝撃のルックスで車好きを沸かせたアッパーミドルサルーンC6の流れで見ると、違和感を覚えてしまうかもしれない。C6こそシトロエン、という思いの強い人ほど、新しいC5に“らしさ"を見いだすことが難しくなるかも。私も実はそうだ。C6のカタチに衝撃を受けて乗る前から買うぞと盛り上がりとうとう買ってしまった人間には、2代目C5のスタイルはあまりにドイツ車風で、C6の文脈などこれっぽっちも感じられない。
ついC6の文脈で見てしまうからそうなるのだ。新型C5は、C3/C4の流れにある最新デザインと見なければならない。C6は、実は古いコンセプトなのだった。もっとも、ポルトガルの真っ青な空気の下で見るC5は、明らかに世間とは異質の、だからこそ“らしい"と言っても良さそうな、そんな存在感を放っていたのだから大したものだ。
そして、とにかくでかい。M2セグメント(欧州Dセグメント)とは思えないほど。それでいて、あのアクの強い顔立ちだから、余計に特別なものに見えてくる。実際、そのディメンジョンはM・ベンツEクラスとほぼ同等であり、アッパーミドルクラスサルーン&ワゴンのセグメント論がいよいよ難しくなってきた。
日本への導入はこの秋以降となる予定だが、日本仕様に積まれるエンジンタイプは旧型同様のガソリンエンジン2種類である。つまり、2Lの直4と3LのV6。前者には4ATが、後者には6ATが組み合わされる。シトロエン好きならお気づきだろう。そう、エンジン&パワートレインは、やっぱりキャリーオーバーなのだった。これがC5最大の弱点。中身はC6とほぼ同じ。プジョー407と共通のプラットフォームであり、だからエンジンパワートレインも同様というわけ。工場も同じ仏レンヌの最新プラントだ。
C6と同じということは、もちろんシトロエンと言えばアレ、ハイドラクティブ3+を搭載する。メカサスの用意もあるが、新生プジョーシトロエンジャポンが日本市場に持ってくるかどうか。相変わらず最近のシトロエンの内装は格好いいな、と思いつつ、まずはV6仕様に乗ってみる。発進時のぐにょぐにょした動きから、ノーズのけだるいまでの重さ、微速域で優柔不断なアイシンATの制御、街中速度域における非線形なパワステフィール、そして相変わらず座りの悪いレザーシートまで、ネガティブな要素はC6と全く同じ。けれども、圧倒的に剛性(C6はピラーレス4ドア)と静粛性が優るゆえ、乗り味にちゃんと新しさがある。
クルージング域に達すると、C6のあの夢見心地なフラットライドはそのままに、しっかり感だけは増しているから、より安心して飛ばせる。スポーツモードにしても乗り心地の気持ち良さが変わらない。ひと言で言って、“しっかりとしたC6"なのだった。もっとも、適度な緩さもC6の魅力だったから、しっかりしたC6=C5が味わい深いとも一概には言えない。いずれにしてもフランス車のM2セグメントには、いかにサイズが大きくなったとはいえ、3LのV6ではエンジンが勝ちすぎているか。
2Lに乗って、その思いを強くした。パワステのフィールはリニアだし、ノーズの重たさもない。プジョー407ほど軽々しくなく、握っていてとても手応えがよろしい。ここ一番の加速こそしんどいが、凝ったデザインの速度計の針がゆったり動くのがかえって気持ちいいくらいスムーズに走れる。全体のバランスがV6モデルよりも圧倒的に優れている。4速のオートマチックが古くさいが、一定速度で走り出してしまえば、それすら忘れてしまうほど。ベロアシートの座り心地も良く(座った瞬間にわかる!)、軽快なフラットライド感が名車エグザンティアを思い出させる。シトロエンらしさを味わいたいのなら、絶対に2L!
それにしても、ガソリンエンジン&パワートレイン、もう少し何とかならないものだろうか…。
今回登場したクルマ、メーカーたち
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