▲BMW M5▲「Mシリーズ」としては初めて4WDシステムが搭載されたBMW M5に、自動車テクノロジーライターの松本英雄氏が試乗した

最高峰のスポーツセダンに加わった四輪駆動システム

BMWは最速のセダンとして、5シリーズのハイパフォーマンスモデル「M5」を1985年より世に送り出してきた。

今回、試乗することができた6代目のM5は、30年に及ぶ“最速セダンの歴史”が詰まっていると考えてよい。

初代M5はスーパースポーツカーM1に搭載されていた、自然吸気の3.5L直列6気筒DOHCユニットの改良型を搭載していた。

最速のセダンには、それに見合うだけの特別の心臓部が用意されていたのだ。

それから30年以上が経過したM5は、4.4LのV型8気筒ツインターボで武装されていて、最高出力は600馬力である。

トルクだって76.5kgmを1800回転から発揮するのだ。

先代6代目も「S63B44B」というエンジン形式であるが、最高出力は40馬力も向上している。

そして特質すべきは、M5史上初めて「xDrive」システムを採用した点にある。

ご存じのようにxDriveは、BMWが考える4WDシステムであり、BMWの持ち味であるFRのフィーリングをもってスタビリティを高めたシステムだ。

高トルクを発生するモデルとxDriveの組み合わせは、BMWの他モデルにも存在する。

コーナリングでの加速、そしてステアリングに舵角を与えた状態での減速時に安定感を発揮している記憶がある。

今回はそのM5の中でもトップレンジにある“M5 Competition”モデルを試乗したので、通常のM5とオーバーラップさせた試乗記をお伝えする。

最新のM5は、600馬力とxDriveであるが、M5 Competitionモデルはエンジンのチューニングによって625馬力まで高めて、アナウンスはしていないが様々な部分が変更されている。

では実際にどのようにチューニングしているのだろうか。
 

BMW M5 ▲エアロなどの意匠によりスポーティなルックとなっているM5
BMW M5 エンジン ▲最高出力600馬力を誇るエンジン。先代と同様ながらセッティングは改良されている

スポーツモデル然としたダイレクトなセッティング

ドアを開けると、簡素であるが高級サルーンのエッセンスを感じる。良質なマテリアルを使っていることがよくわかる。

ルーフがドライカーボン仕様なので軽量であるが、雨などは独特な響く音がする。性能を重んじているので仕方ないといえる。

ステアリングの赤いボタンも特別なスイッチらしく、気になるところだ。

腰を落ち着かせドライビングポジションを細かくチューニングする。

都内近郊で街中を走り、その後静岡県の裾野まで向かう。

冷えているときのエンジン音はノーマルでも大きい。Dレンジに入れてゆっくりとスタートする。

先代のM5はトランスミッションがツインクラッチ方式によるDCTであったが、今回からトルクコンバーター式になった。

だからといって鈍いわけでもない。ロックアップを効かせて、素早いシフトアップをスムーズに繰り返す。このあたりはノーマルのM5と変わりはない。

環状八号線はところだころ轍もあり、M5 Competitionはブレーキングで左右に振られる。

それだけ曖昧を封じたダイレクトなセッティングなのである。

サスペンションのセレクトはコンフォートのままであったが、M5 Competitionあたりになると逆にスポーツをセレクトした方が良いのではと感じて変えてみた。

決してしなやかではないが、轍には思ったよりも左右に振られない。

通常のM5に比べて細かく動いている様子がうかがえる。むしろダイレクトで細かな状況を読み取れるのだ。

ステアリングの設定もスポーツにした。

これも細かく路面の凹凸を感じながらインフォメーションを受け取れる。渋滞以外はいい按配だ。

東名東京インターの本線に出て加速した。

625馬力はスムーズで小気味よいフィールだ。しかも扱いやすい。とても乗りやすく路面のアンジュレーションも細かくかわす。

ATも積極的にロックアップを効かせてスポーツドライビングを後押しする。

そして左側にある赤いMボタンを押す。

エンジン回転が跳ね上がって、いつでも襲い掛かる用意があると言わんばかりの勢いだ。

高速コーナーは路面と最高のコンタクトをとって運転をさらに真剣にさせる。

xDriveのセッティングは、FRの印象を強く残した。

今までのM5をさらに、2段階ほど向上させるドライビングとスタビリティという印象だ。
 

 

BMW M5 ▲路面からの細かいインフォメーションをダイレクトに感じることができる

大きさを感じさせない機敏さ

裾野まで快適でとにかく驚いた。

スポーツセレクトであっても疲れない。

帰りは裾野から芦ノ湖スカイラインにつながるタイトな山道を駆け上がるが、トランスミッションもビジーにならずいつでもパワーを発揮するギアポジションだ。

全長が5mに迫ろうかというM5 Competitionが、小さく感じるほど動きが俊敏だ。エンジン音も素晴らしい。軽量化による回頭性の良さも考えられる。

サルーンでこんな軽快で疲れにくいスポーツドライビングが可能なのか!

高速では目的地まで快適に、本気の走りができるサーキットを5周くらいしてもいい。

景色がいいところを、いいスピードでドライブしても上手に乗れる。

それが最速のセダンであり、M5をさらに洗練させたサルーンがM5 competitionなのだ。
 

BMW M5 ▲ステアリングにはドライビングモードをコントロールする赤色のスイッチが付く
BMW M5 ▲ホールド感の高いシートも長距離運転では苦にならない
文/松本英雄、写真/篠原晃一

【試乗車 諸元・スペック表】
●BMW M5 Competition

型式 ABA-JF44M 最小回転半径 5.9m
駆動方式 4WD 全長×全幅×全高 4.97m×1.91m×1.48m
ドア数 4 ホイールベース 2.98m
ミッション 8AT 前トレッド/後トレッド 1.62m/1.6m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS - 車両重量 1950kg
シート列数 2 最大積載量 -kg
乗車定員 5名 車両総重量 2225kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.13m
マニュアルモード
標準色

アルピン・ホワイトIII、シンガポール・グレーメタリック、マリナ・ベイ・ブルーメタリック、スナッパー・ロック・ブルーメタリック、ブラック・サファイアメタリック、ドニントン・グレーメタリック、ブルーストーンメタリック

オプション色

フローズン・マリナベイ・ブルーメタリック、フローズン・アークティック・グレーM、フローズン・ダーク・ブラウンメタリック、フローズン・カシミヤ・シルバーメタリック、フローズン・ダーク・シルバーメタリック、フローズン・ブリリアント・ホワイトM、シャンパン・クオーツメタリック、アルマンディン・ブラウンメタリック、ロードナイト・シルバーメタリック、アズライト・ブラックメタリック、ブリリアント・ホワイトメタリック、ピュア・メタル・シルバーメタリック

掲載コメント

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型式 ABA-JF44M
駆動方式 4WD
ドア数 4
ミッション 8AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 アルピン・ホワイトIII、シンガポール・グレーメタリック、マリナ・ベイ・ブルーメタリック、スナッパー・ロック・ブルーメタリック、ブラック・サファイアメタリック、ドニントン・グレーメタリック、ブルーストーンメタリック
オプション色 フローズン・マリナベイ・ブルーメタリック、フローズン・アークティック・グレーM、フローズン・ダーク・ブラウンメタリック、フローズン・カシミヤ・シルバーメタリック、フローズン・ダーク・シルバーメタリック、フローズン・ブリリアント・ホワイトM、シャンパン・クオーツメタリック、アルマンディン・ブラウンメタリック、ロードナイト・シルバーメタリック、アズライト・ブラックメタリック、ブリリアント・ホワイトメタリック、ピュア・メタル・シルバーメタリック
シート列数 2
乗車定員 5名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
最小回転半径 5.9m
全長×全幅×
全高
4.97m×1.91m×1.48m
ホイール
ベース
2.98m
前トレッド/
後トレッド
1.62m/1.6m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 1950kg
最大積載量 -kg
車両総重量 2225kg
最低地上高 0.13m
掲載用コメント -
エンジン型式 S63B44B 環境対策エンジン -
種類 V型8気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 ターボ 燃料タンク容量 68リットル
可変気筒装置 - 燃費(JC08モード) 9.4km/L
総排気量 4394cc 燃費(WLTCモード) -
燃費基準達成 -
最高出力 600ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
750(76.5)/5600
エンジン型式 S63B44B
種類 V型8気筒DOHC
過給器 ターボ
可変気筒装置 -
総排気量 4394cc
最高出力 600ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
750(76.5)/5600
環境対策エンジン -
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 68リットル
燃費(JC08モード) 9.4km/L
燃費(WLTCモード) -km/L
燃費基準達成 -
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。