▲Ferrari 812 Superfast ▲Ferrari 812 Superfast


3月7日、スイス・ジュネーブ発ニューモデルの開発が決定した際、フェラーリが最初に直面する難題は、自ら築き上げてきた限界をさらに押し上げることです。とりわけ今回の挑戦は、1947年にフェラーリが世に送り出し、70年にわたる輝かしい歴史の始祖となったV型 12気筒エンジンの開発が含まれるため、さらに困難を極めました。

特に今回は、フェラーリがサーキットで培ってきた豊富な知識や経験を活用することに焦点を絞り、入念な研究開発が進められました。その結果、全方位的にベンチマークとなる、パフォーマンスと卓越したドライビングエクスペリエンスをドライバーにもたらす、極めて特別な車輌が誕生しました。当然のことながら、長距離旅行にも対応する、真のグランドツアラー・ベルリネッタとしての十分な快適性も備えています。フェラーリの歴史において、このようなモデルは数多く誕生しており、自動車史に残る数々の名車が輝かしい膨大なリストに記録されています。

常に革新性を追求するフェラーリスタイリングセンターでは、エッジの効いたデザインと最先端技術を融合させることに力を注ぎ、ほぼ完璧に近いエアロダイナミクス・パッケージを造り上げました。

緻密に磨き上げられ、極めて未来的なラインを備えたFerrari 812 Superfastのパワーユニットには、完全新設計の高効率12気筒エンジンが搭載されています。

エンジン出力はF12berlinettaのV12から60cv増となる800cvを達成し、812 Superfastはフェラーリ史上もっともパワフルかつ最速のロードゴーイングカーとなりました(ミッドエンジン、限定仕様 V12気筒を除く)。F12berlinettaおよびF12tdfをベースに開発された812 Superfastは、フェラーリ 12気筒の新たな歴史の扉を開くモデルです。

この強烈なパワーを存分に引き出し、かつ完璧な重量配分の達成に向けて、車輌にはフロントに搭載されるエンジンとリアのトランスミッションを繋ぐ高度に進化したトランスアクスルが採用されました。

812 Superfastには最先端の車体制御システムと装置が搭載されています。極めて革新的なデザインによるエアロダイナミクス・パッケージが、比類ないハンドリング性能に貢献します。またフェラーリとして初めてEPS(電動パワーステアリング)を搭載しました。

フロントミッド・エンジン・スポーツカーの新たなベンチマークを打ち立てた812 Superfastの特性は、搭載する新型12気筒エンジンによってさらに磨き上げられました。

Cavallino Rampante(跳ね馬)のDNAが息づく他のモデルと同様に、この新型ベルリネッタは、一般道でもサーキットでも切れ味鋭い応答性を発揮します。一方で快適な長距離旅行をお楽しみいただくために、滑らかなハンドリングと乗り心地も備えています。

812 Superfastは、同一レンジ内でもっともパワフルかつエクスクルーシブなフェラーリを求めるお客様に向けたモデルです。極めて高性能な車輌を求める一方で、あらゆる状況に対応する柔軟性をも求める、妥協のない方々です。

<エンジン&トランスミッション>

フェラーリが812 Superfastの開発で挑んだのは、フェラーリ史上もっともパワフルなプロダクション・エンジン(800cv、比出力123cv/l)を開発する一方で、燃料消費と排出ガス量を同時に低減し、フェラーリ 12気筒エンジンならではのサウンドトラックを維持することでした。

すでにF12berlinettaに搭載するV12エンジンでクラストップの比出力をマークしていましたが、812 Superfastの開発段階でエンジニアは自ら、その数値を超えるという目標を設定しました。そのために注力したのは、6.2リットルから6.5リットルへの排気量拡大に合わせたインテークシステムと燃料効率の最適化でした。エンジン内に取り込む空気の量を増やすことで、出力増強と同時に効率も向上させたのです。

一連の開発によって獲得した最高出力は800cv/8,500rpm。これはフェラーリ・ラインナップの中でも新たなベンチマークとなる数値で、比出力123cv/lという数値もフロントエンジンのプロダクション車輌としては前例のないものとなりました。

トルクカーブも、加速と切れ目なく発生するパワーの両面においてF12berlinettaから飛躍的に向上しました。これは特に高回転域において際立っています。またこのエンジンパワーを彩るのは豊かなエグゾースト・サウンドで、排気量増加による音響効果を余すことなく引き出しています。

このようなエンジン性能の引き上げは、エンジン設計の最適化と先進的な技術によって実現しました。スパークプラグ点火式のエンジンとして初めて採用された350barのダイレクト・インジェクションシステムをはじめ、自然吸気F1エンジンで開発された可変インテークシステムなどです。この可変インテークシステムは、特別限定バージョンのF12tdfに搭載されたシステムの進化版です。

これらの技術によって排気量を6.2リットルから6.5リットルに拡大し、最高出力を引き上げ、低回転域でも素晴らしいピックアップを実現させました。
高圧インジェクション・システムの採用によって噴射される燃料の噴霧化が向上し、触媒コンバーターの暖気中に排出される微粒子の量を劇的に低減させました。これは排出ガス規制への適合に大きく貢献しています。

最高出力に対する燃料消費率も向上し、市街地ドライブでの比類ない高効率がそれを裏付けます。また、車輌が動いている際にもエンジンを停止/始動させるストップ&スタート・オンザムーブ・ストラテジーも、この高い効率の実現に貢献しています。

またエンジンのポテンシャルを際立たせ、巨大なパワーの発生によるセンセーショナルな感覚を引き立てるために、マネッティーノも入念なセッティングが施されました。これによってドライバーは、いつでも簡単に、安心して強烈なトルクを堪能できるばかりではなく、あらゆる回転域においてもアクセル操作に合わせてスムーズかつ淀みなく溢れるパワーを体感することが可能となりました。

これらの開発によって発揮する最高出力は800cv/8,500rpm(F12berlinettaから60cvの向上)、最大トルクは718Nm/7,000rpmとなり、フェラーリのプロダクション自然吸気エンジンとして前例のない性能を引き出すことに成功しています。

さらに最大トルクの80%を、わずか3,500rpmから発生するため、低回転域においても素晴らしい柔軟性とピックアップを実現させています。パワーカーブは最高回転数の8,500rpmまでコンスタントに上昇し、慣性を低く抑えることで、回転上昇に合わせてより俊敏に増大するため、搭乗者は無限のパワーと加速を味わっていただけます。

このセンセーショナルな加速感は、最高出力の増加はもちろんのこと6,500-8,900rpm域でのパワーカーブの最適化によってもたらされました。このパワー特性によって、サーキットでのアグレッシブな走行時の高回転をキープするような状況において、平均出力を最大化することが可能となりました。

排気システムのジオメトリーも進化しました。エンジンルームと6-1 マニホールドを採用する排気管からのサウンドをバランス良く高めています。もちろん狙いはこのモデルの究極のスポーティーな性格を際立たせることです。結果として得られるエンジンサウンドはパワフルで、どのようなドライビング時でもキャビン内に心地よいサウンドをお届けします。

<トランスミッション>

新型812 Superfastには、フェラーリ製F1デュアルクラッチ・トランスミッションが搭載されています。これはサーキットドライブで要求されるパフォーマンスと8,900rpmという許容最高回転数に合わせて進化しています。パフォーマンスの増加と高回転化に合わせて、ギアレシオはすべてのギアにおいてショートレシオとなり(平均6%)、高いギアでのピックアップを損なうことなく加速性能を引き上げました。

車輌のスポーツ性能を際立たせることを目的に、ギアシフトのプログラムも入念に最適化され、応答時間も大幅に短縮されました。加速感、そして上昇する回転に合わせたエグゾースト・サウンドの両面で、力強いパワーとスピード感をもたらします。シフトアップ/ダウンいずれにおいても、変速に要する時間は30%短縮されました。ショート化されたギアレシオを含む、一連のモディファイによって、ドライバーはスロットル操作に瞬時に反応するパワーを体感するでしょう。

この俊敏な応答性を活用して、サーキット走行でドライバーは、マルチダウン機能を使って同一時間内により多くのシフトダウンを行えます(マネッティーノがSPORTポジションに設定されている時、ステアリングホイールに装備したダウンシフトパドルを押し続けることで作動します)。

<ビークルダイナミクス>

812 Superfastにはフェラーリ初の電動パワーステアリング(EPS)が採用されました。このEPSは、車輌に搭載されるすべての電子ビークル・ダイナミクスコントロールと統合され、車輌性能をフルに引き出すことを可能としました。

また、車輌にはF12tdfから得られた経験をもとに開発されたバーチャルショートホイールベース 2.0システム(PCV)も採用されています。これは電動前輪操舵アシスタンスとタイヤジオメトリーのメカニカルコンセプト、そして後輪操舵を組み合わせたもので、5.0仕様のSSCを基本とする車体制御システムに統合されており、812 Superfastの俊敏さ、ステアリングへの入力に対する応答速度の向上に貢献しています。

EPSの統合によってフェラーリのエンジニアは、ステアリングを通じて路面とのプライマリー・インターフェイス情報を伝達し、ドライバーのパフォーマンス体験をアシストする新機能を導入することができました。

EPSの統合によってフェラーリのエンジニアチームは、以下の新たなドライバーアシスト機能を導入することができました。

フェラーリ・ピーク・パフォーマンス(FPP):コーナリング時にグリップが限界域に達した場合、ステアリングホイールの重さを変化させてドライバーに制御を促します。

フェラーリ・パワー・オーバーステア(FPO):コーナー脱出時にパワーオン・オーバーステアになるとステアリングホイールの重さを変化させます。これによってドライバーは正確な操舵角の再調整が可能となります。

この2つの新機能は、ドライバーのステアリング操作を妨げずに、812 Superfastのパフォーマンスによるドライビングエクスペリエンスを最大化することを目的としています。主役はあくまでもドライバーであることには変わりません。

メカニカル・セットアップとして、ミシュランとピレリがフェラーリ専用に特別開発したタイヤを採用しました。Passo Corto Virtuale(ショートホイールベース・アラート)コンセプトを最適に機能させるために、フロントもリアもF12tdfと同サイズ(F: 275/R: 315)です。

これまでLaFerrariに装着されていたブレンボ製エクストリームデザインのブレーキはFerrariが開発したもので、極めて効率よく作動します。ハイパフォーマンス9.1プレミアムESPのABSとの組み合わせで、速度100km/hからの制動性能はF12berlinettaに比べて5.8 %改善されています。

<エアロダイナミクス>

ニューモデルを発表する度にパフォーマンスを引き上げるのは、フェラーリの常ですが、812 Superfastのエアロダイナミクス・デザインも例外ではありません。スピードも運動性能も、これまで以上に高い次元の胸のすくようなドライビングエクスペリエンスをもたらします。

開発のガイドラインは、燃料消費と最高スピードの妨げとなるドラッグを増やすことなく、車体の安定に貢献するダウンフォースを高め、これまでにない高いエアロダイナミクス効率を実現することでした。

812 Superfastが達成したエアロダイナミクス系数は、F12berlinettaから大幅に向上しました。メカニカルに作動するアクティブモバイルエアロダイナミクス、気流圧によって作動するパッシブモバイルエアロダイナミクスなどの可変エアロ・デバイスによって、ドラッグ値は極めて低く抑えられています。この一連の技術は、F12berlinettaから特別仕様のF12tdfへと引き継がれたもので、812 Superfastも同様のダウンフォース値となっています。しかし、前述したように、すべてのエアロダイナミクス系数は改善されています。

エンジンとブレーキの冷却用エアインテークの脇、フロントバンパー上にターニングベーンが設けられました。車輌前部に当る気流を側面に偏向させ、車体に発生する乱流を抑えます。これもまた全体のドラッグ低減に寄与しています。

フロントホイール前部にあるひと組のディフューザーがアンダーボディ下に取り込まれる気流を増やすことで、フロントで発生するダウンフォースを増加させています。また、このディフューザーによって発生するドラッグを打ち消すために、デュフューザーには可動式エアロシステムが搭載されています。可動式エアロシステム作動時には、ディフューザー機能は完全に停止します。バンパー外側にあるロアインテークから流れる空気の力によって可動式サーフィスがディフューザーと繋がり、そこを気流が通過します。ダクト内の圧力が弾性スプリングに設定されたプリロードを超える車速になると、可変式サーフィスが開いて車体のドラッグを低減すると同時にフロントのダウンフォースを強化します。

車体側面のフロントホイールアーチから大量の空気を排出することで、ダウンフォースを発生させるフロントディフューザーの容量も引き上げられています。このボディ側面のベントはまた、フロントアンダーボディのディフューザーからの高エネルギー気流を排出して、ホイールアーチ内の圧力が高まることを防ぎ、ダウンフォースの増加とドラッグ低減に貢献します。この効果がヘッドライト脇、フロントボンネットに設けられた2つのエアインテークによって、最大化されます。気流は、エアダクトによってホイールアーチ内側のフロントセクションに導かれ、この部分の圧力を低減し、そこからボディ側面へと流れます。

車体後部のスポイラーもダウンフォースを発生させます。このリアスポイラー後端部の高さはF12berlinettaやF12tdfよりも30mm高くなっています。しかしF12tdfとは異なり、リアスポイラーは後方へ伸ばされてはいません。これは車体ディメンジョンの変更を避けるためで、ドラッグは増えますが、スポイラー前方のリアスクリーン下部に設けた段差によってそれを補完しています。この段差がリアウインドウ後方の気流を分割することで縦方向の渦を生成し、ウインドスクリーン下部への圧力を高め、スポイラーでダウンフォースとともに生じるドラッグを低減させています。リアホイールアーチの形状もまた、効果的にダウンフォースを発生するように設計されました。ボディワークとリアホイールアーチ内側間にエアロダイナミクス的バイパスを設けた結果、ホイールアーチ部分のボディ形状によって発生するリフト量を最小限に抑えています。ボディ側面のこのエリアでは、ボディの曲面に沿って流れる空気がリフトを発生させるため、ボディ側面のベルトラインからの気流は、リアのクオーターライト後部にあるインテークに流しています。取り込まれた気流は、そこからダクト内を通り、リアスポイラー前部で排出されます。このようにしてホイールアーチによるリフト効果を最小限に抑え、余分なドラッグを発生させることなくダウンフォースを獲得しています。

フロントのアンダーボディにはボーテックスジェネレーターとして作用する3組のカーブド・ダムを装備しています。これによってダウンフォースは、F12berlinetta比で30%増強しました。このカーブド・ダムは、強力な渦を発生させてグランドエフェクト効果を得るとともに、回転するホイールによる乱流の発生を極限まで抑え、フラット・アンダーボディのダウンフォース生成量の増加に貢献しています。

F12tdfと異なる点は、新たにこのカーブド・ダムにブローイングスロットを組み込んだことです。これによってカーブド・ダム前方の圧力を抑え、全体の効率向上を図っています。ダウンフォース量は同等ですが、このエリアで発生するドラッグを15%低減しています。

812 Superfastのリアスポイラーは強力なサクション(吸引)効果を発揮するため、これに合わせてリア・ディフューザーを新設計し、アンダーボディからの気流をより強力に後方に向けて拡散させるよう設計されました。このディフューザーの後端部には、バンパー内の深い窪みにウイングを設置し、上面からの気流と下面からの気流をディフューザー全幅に設置したスプリッターに当てることで、ダウンフォース量を12%も増加させています。このリア・ディフューザーは、ダウンフォースの生成とドラッグに大きく影響するパーツであるため、3つの可動式フラップを設けてドラッグを低減しています。このフラップはドラッグを最小限に抑える状況下では14度の角度まで回転して、ディフューザー機能を無効化します。


フェラーリに関する最新情報は、Ferrari.com(日本語版)よりご覧いただけます。
http://www.ferrari.com/ja_jp/