総額110万円から狙える先代アウディ A4後期型。かなりカッコいいけど、それって本当に「買い」なのか?
2020/06/27
▲中古車相場に詳しくない人からすると「かなり高額そうなカッコいい車」と思われる先代アウディ A4の後期型だが、その相場は思いのほかお手頃。しかし、それって本当に買っちゃっても大丈夫なのだろうか?現在の相場は「一般的な国産SUVの中古車」と同程度
「シュッとしてる感じの輸入車ブランド」のなかでも、特にシュッとしてる感があるアウディ。その中核モデルであるA4の中古車相場が今、大変お安くなっている。
もちろん、2016年2月に登場した現行型A4の相場はまだまだ少々お高いが、「B8」と呼ばれる場合が多い先代(4代目)A4の後期型、それも走行3万km台までの物件が、総額110万円程度から狙えてしまうのだ。
総額110万円程度といえば、先代の日産 エクストレイルやトヨタ ヴァンガードなど、2010年代初頭の国産SUVの中古車を買うのと同程度の予算感。まぁアウディと国産SUVのどちらが優れているとかいないとかの話ではなく、そのプレステージ性から考えれば「注目に値するのでは?」という話だ。
だが物事というのは光があれば必ず影もあるわけで、「安いモノ」にもたいていの場合、何らかの「安いだけの理由」が必ず存在している。
そう考えた場合、総額110万円付近からイケる先代アウディ A4後期型というのは本当に「買い」なのか、それとも「やめといた方がいい」なのか、冷静にチェックしてみることにしよう。
まずは先代アウディ A4という車自体に関する簡単なご紹介から。
アウディのA4シリーズは、往年の「アウディ 80」に端を発するDセグメント(メルセデス・ベンツ CクラスやBMW 3シリーズぐらいの車格)の乗用車。愛好家からは「B8」と呼ばれることの多い先代(4代目)は、日本では2008年3月に発売された。
当初は1.8L直4ターボのFFモデル「1.8 TFSI」と、3.2L V6を搭載する4WD「3.2 FSIクワトロ」でスタートし、1年後に2Lターボ+4WDの「2.0 TFSIクワトロ」を追加。
そして2012年4月のマイナーチェンジで、今回の研究対象となる「後期型」へと進化。具体的には、LEDを駆使したフロントマスクやテールレンズがよりシュッとしたデザインとなり、内装の質感やMMI(マルチメディアインターフェース)の使い勝手などを向上させ、ステアリングホイールの形状も変更。新車価格は2L FFの「2.0 TFSI」が440万円で、2L 4WDの「2.0 TFSIクワトロ」が523万円だった。
で、その走行3万km台までの中古車が今、総額110万円ぐらいから狙えるのだが、それって果たしてどうなのか? というのが今回の議題である。
▲こちらが先代アウディ A4の後期型。マイナーチェンジによりLEDポジショニングランプがバイキセノンヘッドライトを囲むようなラインになり、シングルフレームグリルもより立体的な形状に変更された
▲こちらはそのリアビュー。テールランプもフロントセクションに準じたデザインに変更され、標準装備となるLEDテールランプが、いかにもアウディらしい「シュッとしてる感」を増強させているところで先代A4は今なお魅力的な車なのか?
以上を踏まえたうえで「総額110万円ぐらいからイケる先代アウディA4の後期型は“買い”なのか?」ということを考えたいわけだが、まずは「そもそも先代A4の後期型って、買うに値するほどいい車なのか?」という疑問がある。
これについての答えは明確で、「そりゃもういい車ですよ!」と言うほかない。
もちろん2016年デビューの現行型と比べてしまえば、「シュッとしてる感」も「実際の各種パフォーマンスや快適性」も劣るのは確かだ。
しかし大切に保管されてきた個体をしっかり整備した中古車であれば、まだまだ十分以上に「いかにもアウディらしい都会的デザイン」を堪能することができ、それと同時に、同じくいかにもアウディらしい「緻密でスポーティな乗り味」を愉しむこともできる車だ。
▲総額100万円台の予算で狙える2L直噴ターボエンジン搭載グレードは、決して「鬼のように速い」というニュアンスの車ではないが、普通に乗る分には十分パワフルで、乗り味にも心地よい硬質さがあるだが次に出てくる疑問として、「でも、後期型とはいえ新車時から何年もたった中古車だから、新車時と同様のパフォーマンスやコンディションなんて期待できないんじゃないの?」というのがあるだろう。
現在、総額100万円台で買える先代アウディ A4後期型は2012~2015年式が中心であるため、要するに5~8年落ちということになる。「車検を2回か3回ほど通した」ぐらいの年式感と言えようか。
もちろん実際のコンディションというのは個体によって千差万別だが、このぐらいの年式だと、一般論として確かに「多少のヤレ感」や「多少の機械的劣化」は進行しているケースも多い。
しかしながら、それは――これまた使われ方次第ではあるのだが――決して「劇的な劣化」ではない場合も多く、特に今回の研究対象としている「走行3万km台までの個体」であれば、劇的劣化の可能性はさらに低い。
つまり、「まぁもちろん多少は年式なりにいろいろと中古車っぽいのでしょうが、そこまで極端にボロっちくはないんじゃないですか?」というのが、とりあえずの仮説となるはずなのだ。
▲実際はパッケージオプションなどによる違いもあるのだが、先代アウディ A4後期型の運転席まわりはおおむねこのような感じのデザイン
▲フロントシートはだいたいこんな感じ。「SEパッケージ」というパッケージオプション装着車には、レザーシートとシートヒーター、ウッドパネルが装着されている。こちらの写真は本国仕様整備履歴をしっかり確認しながら探したい
ならばお次の疑問点は「でも、ぶっ壊れるんじゃないの?」というものであろう。
これに関しては断言するのがちょっと難しいのだが、基本的には「まぁたぶん大丈夫なのでは?」というのが当面の答えになる。
この時代のアウディ各モデルには「電装系などのマイナートラブルが多い」という噂と、「トランスミッションがすぐぶっ壊れる」との噂が付きまとっている。
これらは「単なる噂」と斬って捨てられるものではなく、実際に、FFの2.0 TFSIに搭載されたCVT(マルチトロニック)と、4WDの2.0 TFSIクワトロに採用されたDCT(7速Sトロニック)の故障例は報告されている。また「電装系がしょっちゅう壊れる」という個体が一部にあるのも、事実ではあるようだ。
だが、これらは「必ずそうなる」という話では決してない。
多くの先代A4ユーザーは、「いろいろ言われてるみたいだけど、自分の個体は普通にほぼノートラブルで乗れてるんだけどなぁ……」ぐらいの感覚でいる場合も多いものだ。
しかし「ネガティブな話」というのはポジティブな話以上に伝播力が強いため、人はそのネガティブな噂話をどこかで聞き及び、先代アウディ A4後期型の中古車に対する興味を失っていく。
そしてそうなると、販売店としては売価を下げ気味にしたうえでのセールスプロモーションを行わざるを得なくなる――というのが、「でも、ぶっ壊れるんじゃないの?」という問に対する答えであり、同時に、先代アウディ A4後期型中古車の比較的低走行な物件が「総額110万円ぐらいから」というロープライスで狙えてしまう理由だ。
▲FFである「2.0 TFSI」の透視図。100万円台の予算で4WDの「2.0 TFSIクワトロ」を探せる場合もなくはないが、基本的には、この価格帯でのメインはFFバージョンとなる以上を鑑み、「でも自分はゼロリスクで行きたいな」と考える人は、プライスにつられて先代A4後期型の中古車を買うべきではないだろう。110万円を頭金にして、トヨタ ライズの新車とかを買うのがおそらくはベストだ。
しかし、「整備履歴をきちんと精査し、コンディションも吟味して買えばたぶん大丈夫だろうし、万一何かがあっても、機械なんてモノは直せば直るんだから」と思える人は、総額100万円台の先代アウディ A4後期型に注目してみる価値はある。
▼検索条件
アウディ A4(4代目・後期型)×総額200万円未満×全国
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
この記事で紹介している物件
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