今や総額100万円ちょいで狙えるフォルクスワーゲン ザ・ビートルの初期モデルって「買い」なのか会議!
カテゴリー: 特選車
タグ: フォルクスワーゲン / ザ・ビートル / EDGEが効いている / 伊達軍曹
2020/05/28
今のところ「最後のビートル」
こちらは、雑誌「カーセンサーEDGE」で8年以上続いている自動車評論家MJブロンディさんの長寿連載「EDGEセカンドライン」のB面。すなわち、その企画の担当編集者から見た「同じ車の別側面」だ。
第13回目となる今回は、2020年5月27日発売のカーセンサーEDGE 7月号で取り扱った「フォルクスワーゲン ザ・ビートル」のB面をお届けする。
カーセンサーEDGE 7月号のなかでMJブロンディさんが書いた内容は、おおむね以下のとおりだった。
「根本がファンシー商品であるはずなのに、ザ・ビートルはまるで『FFのポルシェ 911』であるかのごとき、肩に力入れすぎな車であった。だがそんな無駄な肩の力も、安価な中古車となるにつれて抜けていき、今となってはピースフルで好ましい1台になった気がする」
MJブロンディさんのこの見解には、筆者も何ら異論がない。そのため本稿では、フォルクスワーゲン ザ・ビートルの中古車相場に焦点を当ててみたい。すなわち今、ザ・ビートルは「かなりお安く狙えるガイシャ」と化しているのだ。
だが本編に進む前に、フォルクスワーゲン ザ・ビートルという車についてのごく簡単なご紹介だけはしておこう。
ザ・ビートルは、フォルクスワーゲン タイプ1(通称ビートル)の復刻版として登場した「ニュービートル」の後を受け、2012年 6月に発売されたFFのハッチバック。初代ビートルのシルエットをニュービートル以上に取り入れたうえで、ニュービートルより152mm長く、84mm幅広で、なおかつ12mm低いワイド&ローなフォルムを採用している。
またその走りも、どこかユルい部分もあったニュービートルと対照的。本格的にタイトでスポーティなものへと大きく変わった点も、ザ・ビートルの大きな特徴であった。
デビュー当初に用意されたエンジンは最高出力105psの1.2L直4ターボで、2013年10月には同211psの2Lターボを追加。2016年9月のマイナーチェンジで内外装や安全装備を一部変更したが、エンジンとトランスミッションの変更はなかった。だがその2ヵ月後には1.4Lターボエンジンを搭載する「R-Line」を追加している。
そして2019年 11月に発売された「2.0Rラインマイスター」をもって、ザ・ビートルは惜しまれつつも販売終了となった。
走行3万km台までの物件でも今や総額100万円ちょい
で、その中古車相場である。
結論から申し上げるとフォルクスワーゲン ザ・ビートルの初期モデルは今、支払総額100万円ちょいから150万円ぐらいの間で、つまりちょっとした高年式軽自動車の中古車を買うのと同じぐらいの予算感で、ごく普通に探すことが可能なのだ。
それも過走行のオンボロ系中古車ではなく、走行1万km台から3万km台までの物件が、である。
そうなるともう格安ガイシャ愛好家としては黙っていられないわけだが、物事というのは光があれば影があるわけで、安い中古車にもそれなりの「ワケ」がある場合がほとんどである。
つまり、総額100万円ちょいで買えるフォルクスワーゲン ザ・ビートルは「実はイマイチである(それゆえ安い)」という可能性も大なわけだ。
実際のところはどうなのか……ということで、格安価格帯のザ・ビートルに対して様々な角度から「反証」を行ってみたい。この反証に負けるようならば、格安ザ・ビートルは結局のところ「イマイチ」ということであり、様々な反証に屈しないのであれば、「要注目!」ということになるはずなのだ。
それでは、やってみよう。
●反証その1:総額100万円ちょいで買えるザ・ビートルはもはや古くさいんじゃないか?
これは、ある意味そのとおりである。「低走行なザ・ビートルが総額100万円ちょいから買える」と言っても、実際にその価格帯となるのはマイナーチェンジ前の2012~2014年式がほとんど。つまり6~8年落ちであり、車としては「老人」まではいかないものの、「中年」ぐらいの年式である。
だが、ここはあまり問題ないような気もする。
というのは、ザ・ビートルはもともと年齢不詳系のルックスであり、なおかつ2016年に行われたマイナーチェンジもさほど大掛かりなものではなかったため、初期モデルであっても「古くなったな……」みたいな印象はさほど受けないのだ。
よって、反証その1は却下したい。格安ザ・ビートルの勝ちである。
価格なりの不足はあるが「決定的な不足」はない
●反証その2:総額100万円ちょいではしょぼいグレードしか買えないのでは?
これも、確かにそのとおりである。2013年9月に追加された2Lターボの「ターボ」は100万円ちょいでは難しく、2016年11月に登場した1.4Lターボの「R-Line」はもってのほか。総額100万円ちょいで狙えるのは1.2Lのターボエンジンを搭載したベースグレード「デザイン」と、そこにレザー内装をプラスした「デザイン レザーパッケージ」がほとんどである。
だがこれも、あまり問題ないような気がしてならない。
2Lターボは確かに強力だが、ザ・ビートルという車の個性にそんな強力エンジンは似合わないというか、「別に無くてもいいや」と感じられるものだ。
また、後期の1.4Lターボはつい先日も試乗して「うむ、なかなか好バランスでよろしい!」と改めて感じたが、初期の1.2Lターボが著しく劣っているとも感じられなかった。
これと同じ1.2Lターボを積むフォルクスワーゲン ゴルフのTSIトレンドラインがそうであるように、ザ・ビートルの初期モデルもまた十分なパワーの持ち主である。よほどの飛ばし屋さんでない限り、この1.2Lターボ+7速DSGに大きな不満を抱くことはなかろう。
また「インテリアがショボい」と感じられる場合には、似たような予算で「デザイン レザーパッケージ」が狙えるため、革内装がお好きな人はそちらを探せば良いだけの話。
よって、反証その2も却下したい。格安ザ・ビートルの勝ちである。
●反証その3:でも、その他モロモロも古くてショボいんじゃないか?
これまた、確かにそのとおりではある。2013年10月からデザイン レザーパッケージの純正カーナビは新タイプとなり、2015年10月からはApp-Connect対応の純正インフォテインメントシステム「Composition Media」が全車に標準装備となった。
さらに2016年9月のマイナーチェンジでは純正ナビが「716SDCW」というやつに変わり、2017年7月にはインフォテイメントシステムがそこそこ大幅にバージョンアップされている。
当然、それらは新しい世代の方が何かと優れているわけだが、それと同時に「別にどうでもいいや」というか、正確には「ま、安いなら我慢できるし、気にならないよ」と、決して強がりではなく心から言えそうな部分ではある。
よって、この反証その3も却下である。格安ザ・ビートルの勝ち……とは言わないが、決してボロ負けではないように思えるからだ。
以上の検証をもって、総額100万円ちょいから150万円ぐらいの予算感で狙える初期型フォルクスワーゲン ザ・ビートルのデザインおよびデザイン レザーパッケージは「買いである!」ということが徹底的に立証された……ような気がする。
まぁ上記の言い回しは半分冗談で、実際は「値段なりの不足はいろいろあるが、何かが決定的に不足しているわけではない、注目に値する存在である」というのが、格安な初期型ザ・ビートルに対するマジメな評価となるだろうか。
お手頃価格で狙える「ちょっといい感じのガイシャ」をお探しの方は、ぜひ100万円ちょいのフォルクスワーゲン ザ・ビートルご注目いただければと思う。
▼検索条件
フォルクスワーゲン ザ・ビートル デザイン/デザイン レザーパッケージ(初代・前期型)×総額150万円以下×走行距離3万km以下×全国自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
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