▲先代プジョー 508のモデル末期に追加されたクリーンディーゼルエンジン搭載グレード。取材車両は「PEUGEOT 小平アプルーブドサイト」が販売する走行わずか200kmの2017年式で、支払総額は285.1万円 ▲先代プジョー 508のモデル末期に追加されたクリーンディーゼルエンジン搭載グレード。取材車両は「PEUGEOT 小平アプルーブドサイト」が販売する走行わずか200kmの2017年式で、支払総額は285.1万円

ナマズっぽフォルム(?)だが、後期型はけっこうシュッとしてる

こちらは、雑誌「カーセンサーEDGE」で8年以上続いている自動車評論家MJブロンディさんの長寿連載「EDGEセカンドライン」の「B面」である。すなわち、なぜかその取材現場に同席している自動車ライター伊達から見た「同じ車の別側面」だ。

第2回目となる今回は、2019年6月27日発売のカーセンサーEDGE 8月号 EDGEセカンドラインで取材した2017年式プジョー 508 GT ブルーHDi(支払総額285.1万円/走行200km)のB面をお届けする。

昨今は、「プジョー508」と聞いて真っ先に脳裏に浮かぶのは2018年11月に登場した最新型、かなりシュッとしたデザインとモダンな諸性能に変わったアレという人も多いはず。

だが残念ながら(?)今回の取材車両はシュッとしたアレではなく、ちょっと微妙なデザインだった先代(初代)のプジョー508だ。

とはいえただの先代ではなく、2015年1月のマイナーチェンジで生まれた「後期顔」の持ち主であり、さらには2016年7月にひっそりと追加されたブルーHDi、すなわちディーゼルターボ搭載グレードでもある。

▲フルLEDのヘッドライトと、同じくLEDを使ったコーナリングライト(カーブで進行方向を照らす補助灯)を新たに採用した後期型プジョー508の「目玉」。グリルとバンパーのデザインも刷新された▲フルLEDのヘッドライトと、同じくLEDを使ったコーナリングライト(カーブで進行方向を照らす補助灯)を新たに採用した後期型プジョー508の「目玉」。グリルとバンパーのデザインも刷新された
 

A面の主筆であるMJブロンディさんは先代508のフォルムを「ナマズっぽい」と評し、B面担当の筆者もそれにはおおむね同意する。しかし後期フェイスに関しては「そこそこシュッとしてる(カッコいい)のではないか?」とも感じている。

全体のフォルムが変わったわけではないため、相変わらずナマズっぽいといえばナマズっぽい。だがヌメッとしていたヘッドライトが後期型ではエッジの利いた造形のフルLEDに変わり、同時にフロントグリルやバンパーのデザインもシャープになったことで、「程よく精悍になったなぁ」とは思うのだ。

というか、フランス車というのは「ものすごく精悍でカッコいい」というデザインではなく、「程よく精悍」ぐらいでも十分なのではないか?

「ものすごく精悍でカッコいい車」が欲しいなら、BMWやらアウディやらの最新ドイツ車を買えばいいだけの話。せっかく、いわゆるハズし技的にフランス車に乗るのであれば、「ナマズっぽくてちょっと変なカタチ」ぐらいの方がありがたみがある気が……と言ったところで何人にこの感覚が伝わるかは不明だが、筆者はそう思っている。
 

内外装はほぼ新車みたいなもの。だが「ACC」が付いていない

そして走行わずか200km(2万kmでも2000kmでもなく、たったの200km!)の中古車だけあって、内外装のコンディションについては(良い意味で)特筆すべき点がない。ほとんど新車みたいなものだ。詳しくは下の写真群でご確認いただきたい。
 

▲キラキラ系になった現行型と比べると「昔ながらのデザイン」と言わざるを得ない先代508の運転席まわり。これを「地味」と取るか「味」とするか? ちなみに走行200kmだけあってコンディションはまったく問題なし▲キラキラ系になった現行型と比べると「昔ながらのデザイン」と言わざるを得ない先代508の運転席まわり。これを「地味」と取るか「味」とするか? ちなみに走行200kmだけあってコンディションはまったく問題なし
▲トランスミッションは6速AT。シフトレバーのカバーには赤いステッチも入っていてなかなかスポーティであり、キラリとしたブラックとシルバーのコントラストは「けっこうカッコいい」と評せるかも▲トランスミッションは6速AT。シフトレバーのカバーには赤いステッチも入っていてなかなかスポーティであり、キラリとしたブラックとシルバーのコントラストは「けっこうカッコいい」と評せるかも
▲シートも地味といえば地味だが、それなりにスポーティなイメージは十分。また「フランス車のシートはデザインより座り心地が大事!」という意味においては、かなり優秀なシートでもある▲シートも地味といえば地味だが、それなりにスポーティなイメージは十分。また「フランス車のシートはデザインより座り心地が大事!」という意味においては、かなり優秀なシートでもある
 

搭載エンジンは、前述のとおり2016年7月にひっそりと(?)先代508に追加された2Lディーゼルターボ。最高出力は同世代の1.6Lガソリンターボを上回る180psで、40.8kg-mという最大トルクは、自然吸気エンジンでいうと4L級に相当する。

最大トルクが発生するのは2000rpmなのだが、その下の1500rpm付近から極太トルクが立ち上がり始めるので、高速道路などでは右足を軽~くアクセルペダルに載せておくだけでスイスイ加速してくれる。

そして初代508の前記型では足回りに少々のゴツゴツ感があったものだが、後期型ではしなやかな猫足系に戻っている。なめらかな変速が特徴の6速ATが組み合わされている点と併せ、先代後期の508 GT ブルーHDiは、その車名どおり「GTカー(ロングツーリングをするための車)」としては最上に近い働きをしてくれると断言したい。

とはいえ……弱点もある。

それは、この期に及んでACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)が付いていないという、GTカーとしては割と致命的な弱点だ。
 

価格との「見合い」で考えたとき、あなたはどう判断するか?

2018年11月に登場した現行型のプジョー 508は、かなりカッコいいシュッとしたデザインをその身にまとっただけでなく、ATも8速に進化した。が、個人的には「4速ATだとさすがに困るけど、ATは6速もあれば十分っちゃ十分」と思っているため、そこは割とどうでもいい。

だが現行型の「アクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付)& レーンポジショニングアシスト」は、かなりうらやましい装備だと言わざるを得ない。

今さら詳細に説明するまでもないだろうが、前方車両の速度と距離を検知し、一定の車間距離を保ってくれるアクティブ・クルーズ・コントロールがあるとないとでは、ロングツーリング時の「疲れ方」はまったく違ってくる。そして現行型508のように「ストップ&ゴー機能付き」であればなおさら楽ちんだ。

しかし取材車両である先代508には、古式ゆかしい「定速タイプのクルーズ・コントロール」しか付いていないのだ。

ここは正直申し上げてかなり残念なポイントである。これがスポーツカーなら「ACCなどいらん!」という考え方も成り立つわけだが、ツアラータイプの車には、どう考えてもACCはあった方がいい。
 

▲4L自然吸気エンジン並みの極太トルクを発生させる2Lディーゼルターボエンジン。このエンジンのキャラを最大限活かすためには、もちろんACCはあった方がいいわけだが……▲4L自然吸気エンジン並みの極太トルクを発生させる2Lディーゼルターボエンジン。このエンジンのキャラを最大限活かすためには、もちろんACCはあった方がいいわけだが……
 

となれば、あとは「価格との見合い」で考えるほかない。

こちらの2017年式プジョー508 GT ブルーHDi(走行200km)を買うとなると、支払総額は285.1万円(2019年7月1日現在)。

しかし現行型の508 GT ブルーHDiを新車で買うとなると車両本体価格だけで492万円で、「フルパッケージ」を選択したうえでの乗り出し価格は570万円ぐらいになる。

その差はおおむね285万円。つまり、走行200kmとなるこの先代GT ブルーHDiは「新車のだいたい半額でイケる」ということだ。

ここまで強烈な価格差があれば「ま、ACCがなくても納得できるかな?」と思うか?

それとも「いやいや、やっぱり今どきACCは絶対に付いてないと!」と考えるか?

このあたりをどう判断するべきかは、人それぞれとしか言いようがない。

だが価格だけではなく「微妙なナマズフォルムの味わい」も併せたうえで、個人的には、この旧型508 GT ブルーHDiにけっこうな魅力を感じている。

文/伊達軍曹、写真/大子香山

伊達軍曹(だてぐんそう)

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。