Q.登録も整備もしないで販売してほしいとお願いしたら断られた

レースに使う一台が欲しかったので、車両本体価格の安い車を見つけて「登録も整備もいらないから現状販売してほしい」と販売店にお願いしたところ、断られてしまいました。客がいらないといっているのに、売らないというのは納得がいきません。

A.店側の事情で断ることは可能でしょう

まず最初に、現状販売とは一般的に、定期点検整備なしでの車両販売を指します運輸支局への登録の有無は問題ではありません。もちろん、登録をすべて自分でやることは可能ですが、手間がかかるので販売店に代行してもらうことがほとんどです。ただし、今回のケースでは、レース車に使うとのことなので、そもそも登録の必要はありません。それでは整備なしでの販売を断ることの是非に絞って考えてみましょう。

まず、店側にも断った理由があると考えるのが妥当でしょう。例えば、販売店の特徴として、保証の充実を謳っていたり、広告に全車整備点検などと書いている場合には、店の方針に背くことになります。そのため、販売を断るという行為にもある程度妥当性があると考えられます。

また、そもそも点検整備をしなければ車として機能しないようなトラブルがあることも考えられます。公正競争規約では、現状渡しの場合でも要整備箇所を表示することとされています。よって、この表示が適切でなかったり、車に隠れた瑕疵があった場合には、たとえ現状販売であったとしても売り主には無償修理の責任が発生します。そうなると、後々店側と客側でもめる可能性もあるので、現状販売はしないという店もあるでしょう。

どうしても購入したい場合には、「点検整備なしでの販売でいかなる事態が起きようとも、自己責任で対応します」などの念書を提出するなどの方法もあると思われます。しかし、安全な運転に支障をきたす状態の車を販売店が売り、事故などが起きた場合は責任を問われる可能性もあるので、必ず購入できるとは限りません
第91回:登録&整備なしの現状販売で売ってもらえなかった!!|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

現状販売(げんじょうはんばい)
現状渡しとは正確に言うと、「保証なし(現状渡し)販売」のこと。これは「保証付き及び保証なし(整備渡し)で販売する以外の中古自動車について、販売業者が保証なしで販売するもの」と公正競争規約で定められている。ただしこの場合、「車両状態説明書」が交付されるので、これを見て車両の現在の状態を判断することができる
隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買の対象とされた特定のものに見つかった、取引の時点ではわからなかったキズや欠陥のこと。責任は売り主に発生する。代替性があるものなら交換すればよいが、中古車は一物一価なので代替性がなく、損害賠償か契約解除による事態の解決が行われることが多い